第三話 狐とゴリラ
ナギに手を引かれ、喫茶店から歩き出して少し経った。
だからこそ気になることを聞いてみた。
「ナギ、榊さんはいいのか?」
「アイツは可哀想なことに素質がないんだ」
「はぁ?」
「わかりやすく言うならですね、見えないのだよ」
「え?」
こんな仕事をやっといて?しかも俺の足を見て、鬼海先生と似たような説明してたし、、、
「第六感って言えばいいか?あそこまでがアキの限界。それ以上やると壊れちまう。だからあんな目に、、、」
「なんの話だよ!?」
「器には定められた量しか入らないって話ですよ。まぁ“この分野”に限った話だけどな」
才能ってか?それなら嫌になる程は聞いたよ。
「才能なんて神よりも宗教的な話だよ。まったく愚かだねぇ。器の形に囚われて結果が出せないと決めつけるのは人間の悪い癖なのだよ。覚えておいて損はないぞ?チバくん」
「おまえ本当に人間か?」
「人間!!人間にしか見えないでしょ?ね!?」
「人間はそういうふうにムキになんねぇよ、、、」
「じゃあ狐にでもなりますか?」
ナギはカバンから狐のお面を取り出して、顔にはめた。でも、お面には紐はない。
「なにそれ、、、?」
「はい!チバのぶん」
「いたっ!!」
驚いてる隙に、アイアンクローのごとくお面を嵌められた。
「は!?取れねぇ!どうしてくれんだよ!?おい?」
「これから入る道を抜けたら取ってあげるから」
「はぁ!?、、、うぉ!!!」
ナギは俺の腕を掴んで竹藪にぶん投げてきやがった。
受け身も取れず、
竹に当たる感覚を人生で初めて味わうのか、、、
なんておかしな感想を持って、次の瞬間を待つ、が、来ない。
「あれ?」
立っていた。周りは暗闇に呑まれていた。でもところどころに歪んだ空間があって、そこは裏路地であったり、くたびれた商店街であったり、閑静な住宅街であったりした。
どこだ。ここ。
「狐道ですよ〜コンコン」
狐のお面をつけたナギが、猫の手を作ってなんか言ってら。
竹に思いっきり頭打って夢でも見てるんだな。きっと。
そういえばあいつよく俺のこと放り投げられたよな?狐っていうよりゴリラじゃん。
「ぶん殴って、しっかり夢でも見させられたいのね?」
お面ごしでも笑ってるのわかるのすげぇなぁ〜。怒気まで伝わってくる。やべぇ。
「狐の見間違いだったなぁ〜うん」
「わかれば宜しい」
竹薮に放り込まれた時より危機感あったんだけど、、、
おかげで目は覚めた。ってよりか意識がハッキリした?
「いいねいいね。その調子で意識を保ってないと”呑まれる“よ〜危ないですから、ちゃんと俺の手を握りな?ね?」
ナギが俺の手をしっかり握ってスタスタ歩いてく。
「いや、説明もして欲しいんだけど?」
「え〜なんとなく想像つかない?」
「次元の裂け目とかか?」
「お!あったりー!やるねーチバっち」
いい加減にムカついてきた。殴りたいけど、ここでこいつの手を離したらやばいことになる気がする。
だからこそ、握った手に力を入れた。けど同じくらいの圧がきた。やっぱゴリ「いっだぁ!!!」
「なんか言った?」
「言ってもねぇよ!」
手が砕けるかと思った。気づいたら手首を掴まれてる。そうだよ。今は手を握る力はねぇよ。そんな気遣いよりかは、しっかり説明してくんねぇかな。
「油断してると変なとことに落ちるか、厄介なのに連れてかれるよ?あっ千葉はすでにマーキングされてたっけ?」
「うるせぇ!」
「まぁ細かいことを気にしすぎるのも良くないよ?」
「こちとら一般人ですけど?戸惑って普通!!」
「そっか!普通なのか!いやでも小さい小童を連れてきたら目を輝かせてたぞ?」
どんな大物だよ、、、
「あいつは立派になったねぇ、、、」
小言でナギが何か言ってたけど聞こえなかった。
「いや!そもそも子供を危険な場所に連れて来んなよ!!」
「このお面を付けて私が手を引いてれば大丈夫なんだ。例外を言うならあれだな。馬鹿な人間が自力で入ろうとして、地獄に行ったり、過去に行ったりはあったな」
「なんか昔話で聞いたことあるようなないような、、、」
「千葉も行きたいですか?」
「辞めてくれ、、、」
「地獄はいつか行くかもね?でも、まぁ未来は戻れなくなるから無理だねぇ。それこそ異世界みたいなもんだし、、、」
ナギはどこかを見ながら、微笑むように言った。ただ、その意味までは読み取れなかった。
「おまえの発言のがよっぽど異世界じみてるんだけど、、、」
「着いたよ?」
「はぁ?」
「周り見てみな?」
「どこだよここ」
気づけばアパートかマンションの3、4階。暗闇じゃなくて、ちゃんとした現実的な景色が見える。エントランスも階段も登ってないのに、、、
「狐に化かされたみたいでしょ?」
ナギはいつのまにかお面を取っていて、ニンマリと怪しく笑う。
「詐欺の方がまだマシだったな、、、」
「まだ序の口だよん」
そう言ってナギは俺の額を軽く突く。ようやくお面が外れた。瞬間、緊張の糸が途切れたように膝から崩れ落ちた。腰が重力に従って地面に当たったけれど、痛みよりかは安心がきた。
「よし!チバー!今から初仕事ですよ?いいですね?」
「もう充分すぎるくらい疲れたんだけど、、、」
精神的な疲労がエゲツない。え?俺、このあとに絵を描くの?榊さん助けてください!
「ざんねーんアキはいません。そして今から少し痛い目に遭います。いいですね?」
今度は悪魔のような笑みを浮かべるナギだった。
ナギ「私は優しいから、地獄に行ったやつは回収してあげたよ。過去に行ったやつは、自業自得の最後だったねぇ。運命は変えられないんだよ。




