〜エメリアの決断〜
ユーリ達と別れたエメリアは、街の外の様子を調べるため、門番の元へ向かった。
この街は現在進行形で規模を拡げている最中なので城壁などはない。仮の冊などで壁を設置して、その間に簡易的な門を設けている。そこを守る門番だ。
この街は主都であり、大きめの家ぐらいの城で国王も住んでいる。
国を主とする人間が門番を務めていて、国のトップがどういう判断をしたのか、すでに伝わっていなければならないはずだった。
「それはどういうことなのですか!?
この危機になんの対応もしないなんて!」
この国の判断を聞いた彼女は激怒していた。この国の判断とは、「特に何もしない、各自自分の仕事を。」だったのだ。
この今の状態がしっかり伝言されていないのか、自分がよく確認もせずに慌てているのか。
とにかく状況を確認する必要がある。エメリアは守衛長に確認する。
「魔物の数や、方向は?」
「北、西、北東から一斉に来ています。数はざっと数えて1万5000ほど。各所約5000体あたりの計算になります」
「それであなた達はどうするつもりなのですか?」
「・・・王の命令が普段と変わったことをするな、というなら我々はそれに従わなければなりません」
「間違った命令に従って、国の民を殺すつもりですか?」
「・・・」
守衛長は何も言えなくなった。彼女は続ける。
「民の命、自分の命、そして自分の家族の命が大事なら、よく聞きなさい。
現在私の仲間がベルーガに赴きました。迎撃準備を整えるためです。そこではある程度まとまった戦力を揃えてくれると信じています。
民を守りながら後退すれば、魔物から逃げつつ、迎え撃つ場所に誘い込めるでしょう。
・・・さらに言えばここから引いて時間を稼げば、強力な助っ人が期待できます。
どうか民を、家族を守るため、御英断を。」
守衛長は考えている。
「・・・強力な助っ人とは?」
「我が夫です。彼がいればまとまった15000の魔物など恐るるに足りません」
少し考えたそぶりを見せたが守衛長は笑い出した。
「・・・はははっ、助っ人がたった一人とは笑える。だが・・・助っ人のことは置いておいても、彼女の言う通りだろう。この街は放棄する。各門に行って門を閉鎖させろ。簡易的な門でも一時的に魔物の足を止めることはできるだろう。
それが終わったら各人逃げる民の護衛に入る。
ここで各門への伝令係と、民への避難勧告に人数を分ける。各員死なないようにせよ。」
「御英断感謝します。
それから一番民が逃げ遅れると想定される門を教えてください。」
「・・・おそらくここの北門だろう。一般的な民の住む家も多いし、逃げるべき南側には一番遠い。
だが・・・そんなことを聞いてどうするのだ?」
「足止めに入ります。私が外に出たら門をできるだけ頑丈に封鎖してください。私のことは気にする必要はありませんので。」
「・・・分かった。感謝する。」
守衛長はそういうと緑髪の彼女から視線を外し、部下へと散開の命令をした。
もう一度緑髪の彼女を見る。
彼女が命を賭して足止めをしてくれるのだろうと思った。彼はすまないと心で謝り、その場を去ったのだった。
エメリアが一人で5000の魔物を倒してやると意気込んでいたとも知らずに。
こんにちは、今日の1話目です。




