〜ラ=ジャジャ〜
ここは黄金都市ベルタ。
周りは砂漠だらけで一見何もないように見えるが、現在は黄金が採れる金鉱に囲まれている。
そして重要な衣食住の部分で言えば、
衣の部分はほぼ完全に貿易に頼っている。
食の部分は元々オアシスを中心に作られている街で、砂漠における生命線ともいえる水の確保は十分。
そして「砂漠蜥蜴」「砂漠亀」といった火を入れると格段に美味くなるといわれる肉も十分にとれ、問題はないといえる。
住の部分は、このベルタの街が急速に大きくなりすぎていて、現状一杯一杯である。
が、その分職人たちにしてみれば仕事があると言うことであり、しばらくは安泰だということでどんどん集まってきている。
新王ラ=ジャジャが唯一といってもいいほど力を入れているのがこの部分である。
この街に人を集めようとしているのだ。
今やこの国において新王ラ=ジャジャは『神の子』、英雄王として尊敬される存在であり、国民からの人気も高い。
国民にとっては一夜にしてこの国を繁栄させた英傑なのである。
そんな新王、ラ=ジャジャは自分が神の声など聞こえないことを十分に理解していた。
この繁栄は自分ではなく、他の1人の人物によって成されたものなのである。
王と言う立場は別に自分が望んでいたことではない。
が、表舞台に立てるのは自分であり、その人物では無い。
この王と言う立場を使って、自分の『唯一の望み』を叶えてくれたその相手に報いているのである。
ーー彼は子供の時からなぜこの国に生まれたのか、なぜ貧乏な家に生まれたのか、ずっと疑問に思っていた。
話を聞く限り、この国以外であれば、何かしらの仕事があり、飢える事なく暮らせただろう。
両親からはろくに食事も与えられず、幼少期を過ごした。ろくな将来設計もしなかった両親のせいで兄弟たちは生まれて間も無く死んでいった。
厳しい幼児期を過ごし、生き残ったのはジャジャと、妹のセーナのみ。
セーナより後の子も生まれてすぐ死んでいった。
両親はその日暮らしの仕事をし、少しの食事を食べ、満足することのない毎日を過ごす。
彼らはそれらの満たされることのない欲を、性欲の発散で解消をする毎日だった。
そんなことをしているから何人も子供ができ、死んでいく。
俺が妹だけは守らなければ。
そう思い、10歳ながらも街に繰り出し、残飯を漁り、最低でも妹の分も確保し、なんとか生きていた。
そんな生活が変わったのは彼が18歳の時。
両親の生活は変わっておらず、かといってまともな仕事もなく、一緒の家に住む日々だった。
その時母は妊娠していた。もう何度目かもわからない。
また子供が産まれ死んでいくんだろう。そう思っていた。
だが先に死んだのは母親の方だった。
産むときに子供もろとも危ない状態に陥り、そのまま死んでしまったのだ。
うまく産むことができず死体となった母親の中で、子も死亡。
医師にも見せる事なくそんなことを続けていたのだ、そんなことがあっても不思議ではない。
母親の死にも特に何も感じなかった。
今日も妹のため、食事を用意しなければ・・・。
そうして街へ繰り出し、妹の食事を運んできたジャジャが見たものは、
鮮血が舞い、派手に犯され息たえる裸の妹だった。
その首元には、首を絞められたと思われる、強い手の跡が残っている。
なぜ・・・誰がこんなことを・・・
その疑問は隣にいた父親によって解消された。
『派手に遊んじまった、悪いな』
そんな軽い言葉。そんな軽い気持ちで実の娘を・・・?
・・・俺の最も大切な妹をこいつが?
こんな父親が?
なぜ妹が死んでお前が生きているんだ?
お前はなんのために生きているんだ?
「死ねよ、ゴミクズが」
怒りによって発現した彼の『心魂』によって家が弾け飛ぶ。
『爆喰蜘蛛』
「苦しんで苦しんで苦しんで・・・・遥かその先に死ね。
簡単に死ねると思うな」
その後1年かけて苦しませ続けた。
体は傷だらけ。指の何本かはもうない。
だがどれだけ毎日いたぶっても恨みが晴れることはない。
しかしこいつをいたぶる以外にやることは何もないのだ。
毎日強い憎しみを持って接した。
そんなときだ、彼に変化が起きたのは。
どす黒い何かが自分の中から生まれようとしているのを感じた。
まあ何が起こってもいいか。こいつさえ殺せれば。
段々どす黒い何かが体の中から滲み出て、一つの形を作った。
黒髪、2本の紅い角を宿し、神か何かかと思われされる強烈なプレッシャーを放つもの。
『悪魔公』ヴェルダ
彼はそう名乗ったのだった。
本日3話目です。




