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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第3章
84/92

084 その名は『ノワール』

「うわぁ なにこのコっ すっごくカワイイっ」

「えへへ、だよねー」


 おうちに猫さんをつれて帰ると、早速レイナちゃんが飛びついてきた。

 ちなみに? おうちにつれてくと決めたその直後。

 アイナママが清浄魔法の【サンクティファイ】をかけてくれました。


「今日からこのコ、おうちのコになったんだよ?」

「えっ ホント? やったぁ」

「にゃあ」

「やーん、カワイイ~っ」


 レイナちゃんはさっそくネコさんを抱っこして、お顔でスリスリしてる。

 どっちもかわいい。


「ねぇ? このコの名前は?」

「あー、まだ付けてないんだ」

「ならっ わたしが付けてあげる! えーっとえーっと」

「ふむ、エルフ風に名付けるなら、【シュヴァルツ】だな」

「なんて意味なの? ルシアママぁ」

「ああ、【黒】だ」

「おぉう そのまんまだね」

「えー なんだかかわいくなーいっ それにほらっ このコ、女の子だし?」


 レイナちゃんが、抱っこしたネコさんのおなかをこっちに向ける。


「ふむ、確かにタマがないな」

「こほんっ ルシア?」

「おっとw」

「んー でも黒いコなのは確かだから? このコは【ノワール】よ!」


 【ノワール】もやっぱり【黒】って意味だけど、エルフ風よりは女のコっぽい感じ?


「うん、かわいいと思うよ? レイナちゃん」

「でしょぉ? えへへ~ ノワールぅ」

「にゃーん」

「やーん、かわいいっ」


 レイナちゃんが喜んでくれて、ぼくもうれしい。

 アイナママにお願いしてよかった。


「レイナ? いくら可愛いとはいえ、甘やかしてばかりではいけませんよ?」

「えー、だってぇ、こんなかわいいのにぃ」

「ですが、働かざるもの食うべからずです。この子には、家の中のネズミや虫などを獲らせますから」

「えっ そんなのヤダぁ!」

「ん? どうしてイヤなの? レイナちゃん」

「だってぇ、そんなのくわえてきたらわたし、悲鳴をあげちゃうわ」

「うっ それはそうかも」


 とはいえ、前世のぼくの友達のおうちにも猫さんがいて、ちゃんとごはんをもらってるのに?

 家の中に出る、あの【黒い虫】とかを、咥えてきちゃうんだよねぇ


「ははっ レイナ? 残念だが、ネコは本能で獲物を狩るからな。お前が止めても、虫がいればすぐに襲いかかるだろう」

「えー、そんなぁ」

「あら? そうしたらレイナはもう、この子の面倒を見ないのかしら?」

「うぅ そんなコトないもん、ちゃんと見るもんっ」

「ならこの子のことは、クリスとあなたに任せます」

「ママは?」

「わたしはあなた達のお世話で精一杯ですよ」

「むー、もうわたし、そんなお世話されてないもんっ」

「はいはい。ともかく、猫は食べ物だってわたし達とは違うのですよ?」

「そうなの?」

「ええ、特に猫には食べさせてはいけないものがありますから」


 あ、アイナママの【先生】モードのスイッチがはいったみたい。


「野良の猫が主に食べているのは、ネズミなどの小動物に、小鳥や小魚。それに虫なども捕まえて食べるそうですから、基本的に肉食です」

「そうなんだ? じゃあパンとかあげちゃダメなの?」

「与えれば食べますがよ? ですが小麦粉でできているものを猫に多く食べさせると、すぐに太ってしまい、それが原因で病気になりやすいのです」

「ええっ 病気になっちゃうの?」

「ええ、それに塩気の強いものも、与えてはいけません。やはり病気になりやすくなります」

「塩気のつよいもの……うん、わかった」

「それからミルクやお酒のたぐいもいけません」

「ミルクもダメなの?」

「ええ、中には平気な猫もいますが、多くの猫はお腹を壊してしまいます」

「そ、そうなんだ」

「そして特に、タマネギやニンニクは厳禁です。食べさせた場合は高確率で体調を崩し、最悪死んでしまうこともあります」

「えぇぇ!?」

「わ、わかったよ! アイナママぁ」


 これはあとで【万物真理(ステータス)】さんにも相談して、リストを作らないと!


「ほう? アイナ、詳しいな」

「ええ、わたしがお世話になった孤児院では、たくさん猫がいましたからね」

「なるほどな、すでに経験者だった訳だ」

「ですからレイナ、クリス? 猫がどんなに欲しがっても、わたし達の食べているものを与えてはいけませんよ? そのあたりの線引をきっちりすることが、猫を守ることにもなるのですから」

「わ、わかったわ!」

「よろしい、では判らないことがあったら相談するように」


 そういうとアイナママは、今夜のごはんのしたくをはじめる。


「んー、ママったらネコ、嫌いなのかしら?」

「さてな、ただあの口調では、孤児院でさんざん苦労させられたのやもしれんな」

「な、なるほど」


 レイナちゃんがこのネコさん──ノワールのこと、こんな気にいってるし?

 それにアイナママもかわいいもの好きだから、きっと猫さん好きかと思ったんだけどな~


「ルシアママはネコさん、おせわしたことあるの?」

「ああ、妹が昔飼っていたな。だが私が世話をすると、どうにも構いすぎてしまってなぁ おかげでネコが懐いてくれないのだ、」

「な、なるほど」


 ルシアママの愛情は、とっても濃ゆいからなぁ~

 と、そのとき?


「ただいま戻りました」

「あ、アプリルさん」


 アプリルさん、最近はぼくらの村で、魔法薬の勉強をしているんだ

 もちろん先生はアイナママ。

 こっちにはエルフの森にない薬草とか魔法薬があって、興味深いみたい。

 だからアプリルさん、菜園のお手入れとかも手伝ってくれてるんだ~


「えへへ~ アプリルさん? みてみて~」

「あっ ネコちゃんじゃないですか! かわいいっ」

「レイナちゃん? このコ、どうしたんですか?」

「んー、クリスがね? 街から連れてきたんだけど、今日からおうちのコになるんだって」

「わぁっ 良かったですね~ ネコちゃん」

「えへへ~ このコね、ノワールって名前にしたの、わたしが付けたんだから」

「へぇ~ かわいいお名前ですねっ よしよし、ノワールちゃん♪」

「にゃーん」

「「かわいい~っ」」

(おぉう)


 ノワール、大人気だぁ

 ともあれこうして黒猫の【ノワール】が、ぼくたちの家族になったんだ~


 ◇◆◆◇


「えぇぇっ こんなに多いのぉ?」

「うん、ステラママのご本で調べたんだけどね?」


 アイナママに教えてもらった【ネコさんが食べたらダメなもの】、【万物真理(ステータス)】さんに相談してみたら?


「まずアイナママのいってたタマネギだけど、これってちょっとでも入ってたらダメだし、火を通してもダメなんだって」

「うぅ じゃあハンバーグもダメなんだ?」

「だね~」


 ぼくらのごはんだと、タマネギやニンニクはニオイ消しになるし?

 だからお肉料理にはよく使うんだ。


「それにお肉やお魚も、できれば生じゃないほうがいいんだって」

「なんでよぉ? だってノラのネコは食べてるんでしょ?」

「うん、でも生のお肉には、虫がいることがあるでしょ?」

「う、うん」

「だからノラのネコさんもソレを食べると、やっぱり病気になっちゃうみたい」

「そ、そうだったのね」


 この世界でも【寄生虫】のことはそれなりに知られてる

 だからぼくたちも、生のお肉はぜったいに食べないんだ。


「それにお肉やお魚は、塩漬けになってることも多いでしょ?」

「あー お塩、ダメなのよね?」

「うん、だからぼくらが食べてるものは、ほとんどダメだね~」

「パンもダメだし、ホントよねぇ」


 あとは、チョコレートとかアボカド、アワビやイカなんかもダメ。

 だけどこの世界じゃまず手に入らなかったり?

 そもそも食べ物として流通してなかったりするから、コレは大丈夫っぽい。


「だからお肉やお魚を、味付けなしで煮たり焼いたり? そういうのをあげればいいみたい」

「そ、それっておいしいのかしら?」

「もともとノラのネコさんは、味付けなんかしないし、だいじょうぶじゃない?」

「あー それもそうね」


 と、ノワールのお世話はぼくとレイナちゃんのふたりですることになったんだ。

 でも、ごはん代はおうちで出してもらえるし?

 アイナママが毎日【サンクティファイ】の魔法をかけてくれるんだ

 だからおふろに入らなくても、いつもキレイ♪


(それに、ぼくも定期的に【万物真理(ステータス)】で【鑑定】してるからね)


 ノワールはしゃべれないから、病気になってもわかりにくいし?

 だからぼくがこまめに鑑定してあげることにしたんだ。


(だから病気になっても、すぐに治せると思うし、ね?)


 そしてしばらくは、ノワールはおうちから出さないことにした。

 街と違ってこの村は、外に出たらわりとすぐに獣と出くわしちゃうから。

 それに魔物だって、街よりは遭遇する可能性が高いし。


(とはいえ、おかげで)


 ぼくたちがおうちの外にお仕事に出かけると、ノワールに会えなくなっちゃう。

 今まではそれが普通だったけど、


「もー、ママったらっ わたしにばっかり、神殿のおしごとさせるし! おかげでノワールとはなればなれだわっ」

「うーん」


 レイナちゃんはそういうけど、


「でもさ、レイナちゃん?」

「なによぉ、クリス」

「アイナママが神殿のおしごとをレイナちゃんに任せるのって、やっぱりレイナちゃんを信頼してるからじゃないのかなぁ?」

「そうかしら?」

「うん。だってアイナママが、ぼくたち家族の次にだいじにしてるのが、うちの村の神殿でしょ?」

「そ、そうよねぇ」

「だったら? アイナママがおサボりしたくてレイナちゃんに押し付けるとか、ちょっとありえなくない?」

「うん、そうかも」

「それに村のひとたちだって、レイナちゃんが代理で神殿のおつとめしてても、だれも文句なんていわないし? それってレイナちゃんが、アイナママや村のひとたちに信頼されてる証拠だよぉ」

「えへへ、そう思う?」

「うん、ぼくレイナちゃんががんばってるの、知ってるから」

「も、もぉ。クリスったらぁ」


 なんだかほっぺを赤くして、ニコニコしてるレイナちゃん。

 さっきまで【おこ】だったけど、


(うん、やっぱりレイナちゃんは笑ってたほうがかわいいし)


 な~んてぼくたちが、お昼ごはんを食べに、おうちへ戻ってくると、


「いやーん、ノワールぅ」

「にゃーん」

「今日もとってもカワイイでちゅねぇ」


 なんて声が、おうちの中から聞こえてきて。


「ね、ねぇクリス?」

「う、うん、レイナちゃん」


 ぼくたちがそっと、ドアを開けて中を見てみると、


「あぁっ このカワユイお耳っ そしてぷにぷにした肉球っ なんてカワイイんでしょう ノワールちゃんったらぁ」

「にゃぁん」

「よちよち ママがいまごはんをあげましょうね~ はい と~っても柔らかく煮込んだお肉でちゅよぉ?」

「にゃぁん」

「んー、おいちいでしゅかぁ?」

「ま、ママ?」


 びくんっ!


「れ、レイナ!? それにクリス!」

「ママ、なんていって──」

「ち、違うんです! これはその、とにかく違うんですぅぅ!」


 そう……

 やっぱりアイナママだって、カワイイものには目がなかったんだ。

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