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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
32/92

032 なーんか、なかよしすぎない?

「………………ん」


 まぶたごしに感じる明るさに、ぼくが目を開けると──

 となりにアイナママがいなくて、ちょっと寂しいきもちになる。

 けれど視線をめぐらせると……そこには髪をクシですく、アイナママの背中が見えた。


「あら、クリス。おはよう、よく眠れた?」

「うん、アイナママ」

「よかった、じゃあ身体を拭いてあげるから、背中を向けて?」

「うん」


 アイナママはもういつもの神官服を着てるけど、ぼくはハダカで寝ちゃったみたいで、ちょっとはずかしい。

 後ろを向いて、ついおまたのあいだに手をはさんじゃう。

 ゆうべは、もっと恥ずかしいコトをしたのに、ね。


「………………」

「………………」


 だけど、やっぱり恥ずかしくて、なにをお話したらいいかわかんない。

 でも、こんどはちゃんと覚えてる。

 アイナママの優しいお顔と匂い それから──


「クリス、ごめんなさいね」

「え?」

「………………」


 そういったまま、アイナママはまた黙っちゃう。


「ええと、どうして『ごめんなさい』なの?」

「それは……」

「ぼくはアイナママのおかげで、一人前の男のコになれたのに?」

「ですが……クリス、ママはズルをしたんです」

「ズル?」

「ええ。ほんとうは……クリスのお勉強相手は、もっと若くて綺麗な女性がするはずだったんです」

「えっ?」


 アイナママより若くてきれいな人?

 そんなひと、この村にいるの?


「ですが、わたしがそれがどうしてもイヤで、村長さんの申し出を、断って……しまったんです」

「そう、だったんだ?」

「だからクリス、ごめんなさい。あなたの大切な初めてを、ママみたいな年増がするだなんて──」

「ちょっ アイナママっ! ぼくは、それでもアイナママがお相手で、よかったって思ってるよ?」

「……クリス」

「ううん、ぼくは、アイナママがいい。だからボクのはじめてが、アイナママでホントによかった」

「クリス、ありがとう。ママ、嬉しいわ」

「えへへ。それに? この村にアイナママより若くてきれいな人なんていな──むぎゅっ」


 アイナママはぼくを抱きしめて、何度もほっぺにキスをしてくれた。

 でも、決してウソでもオセジでもなく、ぼくはアイナママでよかったって思う。

 心から、そう思っていたんだ。


 ◇◆◆◇


「ほら、クリス? ジャムがほっぺに付いてるわ? ちゅっ はい、取れた」

「えへへ~ ありがとう、アイナママぁ」

「うふふ、どういたしまして」

「……むぅ」


 収穫祭も終わって、またいつもの日常がもどってきた。

 昨日のごちそうが残ってるから? もうしばらくは食卓がにぎやかだけどね~


「ん? レイナちゃん、もう食べないの?」

「食べるわよっ でもぉ」

「でも?」

「クリスとママ、なーんか、なかよしすぎない?」

(ぎくっ!)

「あら、レイナ? クリスとママは、いつも仲良しよ?」

「そう、だよね? アイナママぁ」

「むー、でもなんかママ、いつもよりうれしそうなのよねー」

(ぎぐぎくっっ)


 れ、レイナちゃん、するどすぎ!

 コレが【女のカン】ってヤツなの?


「ええ、嬉しいわ だって──」

(ちょっっ アイナママっっ)

「昨日までのクリスは、村のみんなの【英雄】だったでしょう? なのにママは神官のお仕事で、ずっとクリスのお世話をできなかったのよ?」

「そういえば、そうね?」

「ええ、なのにクリスの隣をずっと離れずにいた子も、いたみたいでね~」

「ぎくっ!」

「やっとお世話できてママ、嬉しいのに~ やっぱりそんな子には、判ってもらえないのかしら~」

「わ、わかったわよっ! もうっ」


 おぉ、さすがはアイナママ。

 かんたんにレイナちゃんをいいくるめちゃった。


「お祭りも終わったし? すこしはクリス、ママに貸してあげる」

「か、貸してあげるって、レイナちゃん?」

「なによぉ? クリスのくせに、もんくあるの?」

「ないけど──うわっ」


 ぎゅっ


「んふふ じゃあクリスは今日、ママのお手伝いね」

「あ、うん。わかったよ、アイナママぁ」

「レイナは神殿のお掃除をお願いね?」

「ぶー、きのう村の人たちが、みんなでおそうじしてたじゃないっ」

「いろんな人がいっぺんにやるとね? どうしても雑なところが出てくるのよ。だからあなたがひととおり、全部チェックしながらもう一度、ね?」

「うぅ、はぁい……というか、ママ? クリスばっかり甘やかさないでよねっ」

「あら、ママはね? ほんとうはレイナのことも甘やかしたいのよ?」

「えっ」

「なのに、ママが甘やかそうとすると、『ママウザい』なーんて嫌がるのは、どこの子だったかしら?」

「わ、わたしはクリスとちがって、そんなのでよろこんだりしないもんっ」

「はいはい、ですからお仕事がきちんと出来たら、褒めてあげるから。頑張ってね? レイナ」

「うぅ、はぁい」


 そういってレイナちゃんは食器を片付けると、そのまま神殿にお掃除しにでかけちゃった。


「じゃあクリス、今日は薬草の収穫をしましょう。お外は寒いから、しっかりと温かい格好をしてきてね?」

「はぁい」


 ぼくはお部屋にもどって、上着を着こんで手袋をはめる。

 そしておうちのうら庭に行けば、そこにはアイナママの菜園があるんだ。

 菜園といっても? トマトやジャガイモみたいな食べるお野菜じゃなくて、薬の効果がある【ハーブ】みたいなのがほとんど。


(それに、食べる方のおやさいは、村の人がおすそ分けしてくれるしね~)


 ◇◆◆◇


 ゲームなんかでの【薬草】は、なぜだか【生の葉っぱ】のイメージだけど?

 そんなのあっというまに枯れちゃうから、じっさいにはありえない。

 だからこの世界での【薬草】は、いわゆる【漢方薬】みたいなモノなんだ。


(だから効果はそれなりだけど? 普通に暮らしてる人には、それでじゅうぶんだしね~)


 もちろんお値段もお安いし、そして手にも入りやすい。

 だから薬師のいないこの村では、アイナママが代わりにそれを作ってるんだ。


(じゃあ、冒険者はどうするかというと?)


【魔法薬】を使うんだ。

 そういった薬草を煮詰めて、うんと濃くしてエキスをいっぱい集める。

 そしてそのエキスの濃縮液に魔力を染み込ませると、【魔法薬】として錬成されるんだ。


(だからそっちは、回復魔法みたいな【即効性】があるんだよね~)


 だから当然、お値段も薬草の何倍もするし、作る手間もけっこうたいへん。

 そしてアイナママは魔法薬の調合を、神聖魔法ですることができるんだ

 そして作れるのは?


(あ、【万物真理(ステータス)】さん? 説明よろしく~)


 パッ!

-------------------------------------

【回復薬】

 使用した者の体力を一定量回復し、怪我などを治癒する効果のある魔法薬。

 空気にさらすと劣化するため、小ビンに小分けして密閉して保存。

 そのつど使い切るのが前提。

 体力回復の場合は服用し、怪我や骨折の治癒には患部に振りかけて使用する。


【状態回復薬】

 使用した者の【毒】や【麻痺】等の異常状態を、正常に戻す効果のある魔法薬。

 なお、保存や使用方法などは【体力回復薬】に準ずる。

-------------------------------------


 ちなみに【回復薬】は【初級】【中級】【上級】の3グレードあって、もちろんグレードが上がるごとに、その効果とお値段がはね上がってゆく。

 ただし、上級ともなれば作るのに魔力をいっぱい使うし? 作ってからその効果が安定するまでの日数もだいぶかかる。


 ◇◆◆◇


(もちろんアイナママは【上級】だって作れちゃうけどね~)


 なんて事を考えながら、ぼくはもくもくと薬草の収穫をする。

 ちなみに【薬草栽培】のスキルがあるから、手が勝手に動いてくれるんだ~

 アイナママのおかげで【調剤】のスキルもあるし、


(このままがんばれば、魔法薬も作れるようになるかも?)


 ただ、残念ながら【魔力回復薬】は、まだ実用化されていないんだ。

 だから、冒険者たちは魔法使いや神官の魔力──すなわち【MP】(マジックポイント)が少なくなってきたら、すぐに撤退。

 そんなルーチンで冒険をやっているのが普通なんだけど、


(もしそれがあれば、もっと冒険できる時間が増えるのになぁ そしてぼくも、MPが少ないから)


 この前の【ソニックブレード】の呪文は、【風精霊魔法】の応用だけど?

 ぼくのスキルレベルだと、いちどの発動で効果があるのはほんの数分。

 それにけっこう魔力をもっていかれたから、まず連続使用はできない。


(そもそもMPが残り1割を切ったら、めまいをおこしちゃうし)


 そしてゼロになれば昏倒する。

 すなわち戦闘不能状態になるということで、


(うぅん、それはぜったいマズいよねぇ ええと、【万物真理(ステータス)】、ぼくの今のステータスは?)


 パッ!

-------------------------------------

・名 前:クリス(人族)

・性 別:男

・レベル:LV63

・状 態:正常

・H P:102569/102569

・M P:37/37

・スキル:【剣術:LV87】【槍術:LV81】【弓術:LV72】【抜刀術:LV87】

     【盾術:LV83】【斧術:LV80】【鞭術:LV71】【格闘術:LV77】

     【体術:LV82】【暗殺術:LV85】【隠密:LV84】【投擲:LV82】

                            下画面があります▼

-------------------------------------


(うーん、魔王を倒してレベル63になったばっかりだしなぁ こんなんじゃレベルアップはそうとう先だし? MPも──ん?)


 ずっとレベルアップしないから、代わり映えのしないぼくのステータスだけど……


(【37】? えと、たしか【29】だったよね?)


 そう、30に1足りなかったから、よく覚えてる。

 なのに、なんでMPだけ増えてるの?


(ええと、【万物真理(ステータス)】、ぼくのMPが増えたのはいつ?)


 パッ!

-------------------------------------

 MPの数値変動における報告

 出典:万物真理【ステータス管理ログ】より


 昨日の夜半に【29】→【37】へと【08】のMP増加を確認。

 なお、このMPの数値変動は【クリス(人族)】の出生以来、初のものである。

-------------------------------------


(えっ? きのうの夜? それって)


 きのう夜といえば、アイナママに【手ほどき】してもらってた日だ。

 というか、それが原因なの?


(えと、【万物真理(ステータス)】、ぼくのMPが増えたのはなんで?)


 パッ!

-------------------------------------

 MPの数値変動の原因報告


 不明。

-------------------------------------


(おぉう)


 さすがの有能な【万物真理(ステータス)】さんでも、わからないことはあるっぽい。


(うーん、これはもうミヤビさまにでも、聞くしかないのかなぁ というか最近、ミヤビさまぜんぜん来ないみたいだけど?)


 ともあれ考えても仕方ないので? ぼくはアイナママのおてつだいに、集中することにした。


 ◇◆◆◇


 薬草の収穫を終えて、ひとやすみ。

 ぼくたちは、アイナママの淹れてくれたお茶を飲んでまったり中。


「ねぇ、アイナママ?」

「なぁに? クリス」

「あのね? レベルアップしてないのに、MPが増えるってことって、あるのかなぁ?」

「それは……クリス、あなたのことなの?」

「うん、そうなの。ええと、朝ごはんの前に、剣の練習をして、魔法も使ってみたんだけど? なんだか昨日よりも、MPに余裕がある気がして」

「ええ、それで?」

「レベルアップしたのかな? って思ったけど、【筋力】とかは変わらないみたいだし?」


 もちろんコレは作り話。

 けど、ギルドで調べてもらわないと、ステータスなんて判らないからね。


「そう、ですか」

「え? アイナママ、信じてくれるの?」


 てっきり『気のせいじゃないの?』っていわれるかと思ったのに。


「ええ、実は……レベルアップしていないのに、MPが増えたことが、ママにもあるの」

「えっ そうなの?」

「ええ、それもだいぶ前。10年以上前の、まだママが冒険者をやっていた頃の話よ?」


 ん? それって、勇者の従者だった頃のお話だよね?


「れ、レイナのお父様にね? ママが……ええと、【手ほどき】をしてもらったの」

「…え?」

「その次の日にね? ママも、MPが増えていたの。クリスと同じように、レベルアップをしていないのに……ね」

「なんと」


 や、やっぱり!

 コレってアイナママに【手ほどき】してもらったせいなの?

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