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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
19/92

019 レニーさんは、いろいろスゴかった!?

 とまぁ、そんなレニーさんだったけど。


「レニーさんっ すごいっ ぼくっ レニーさんをとってもそんけいしますっ!」

「そ、そうかい? あ、あはは」


 そういいつつも、レニーさんはちょっとお疲れぎみ。

 それというのも、


「まさかアイナママから、街に行っていいって、いわせちゃうなんて!」

「まぁね、そういう約束だったろう?」

「ですけど」


 そう、レニーさんはアイナママに頭を下げっぱなしではあったけど?

 それでもきちんと、ぼくを街につれていって、冒険者ギルドでの【はじめてのおしごと】をさせてあげてやりたいって、アイナママにお願いしてくれたんだ!


「あー、そっから先は言わなくてもわかるよ。アイナ様にあたしがビビって、もうなにも言えないそう思ったんだろ? クリスは」

「……(ふいっ)」

「そこで目を逸らすってのは、認めてるって事だねぇ」

「ぎくっ」

「ま、その通りなんだけどね」

「そうなんだ」


 するとレニーさんが、ふと遠い目をする。


「あたしらのパーティーが、今まで出くわした一番ヤバい魔物がねぇ」

「やばいまもの?」

「大きめな風車ぐらいの大きさのあるストーンゴーレム」

「おおきめなふうしゃ!」

「追ってた別の魔物が、そのゴーレムの縄張りに入り込んじまってねぇ」

「おぅふ」

「しかも見通しも足場も悪いうっそうとした森の中。あっちは木をなぎ倒しながらひたすら追いかけて来る。その脚は予想以上に速く、さらには攻撃魔法まで飛ばして来やがった」

「こわすぎる!」

「そりゃぁもう、死にものぐるいで逃げたよ。あれでひとりも死ななかったのは、それこそ奇跡だね」

「よかった」

「でまぁ? ぶっちゃけアイナ様は、ソイツの時より怖かった」

「おぅふ」

「ああ、もちろん【恐怖】とかじゃないよ? あくまであたしが緊張しただけさ。それだけアイナ様は、あたしら神官にとっては雲の上のお人だからねぇ」

「あー」


 それはそうかも~

 ぼくにとってはずっと一緒ににいるママで、とってもきれいで優しくて、料理上手な家庭的なママだけど。


(それに前世では恋人だったし?)


 あとぼくが【勇者】だったっていうのも、そのへんがマヒしちゃってる理由かも?


「というか、クリスは知ってたんだろう? アイナ様のことをさ」

「ええと」


 そういえば、アイナママが勇者の従者で【救国の英雄】だったってことはぼくは知らない?


(そうだ知ってるのはあくまで【前世】のぼくだ)


 今のぼくは、アイナママからそれを聞いてない。


「アイナママから、ちょくせつじゃないですけど村の人たちは【聖女さま】ってよぶ人も多いから」

「ん? そうなのかい?」

「それでぼく、なんとなくアイナママが勇者さまの従者だったって、わかったというか?」

「ってことは……あちゃあ」

「レニーさん?」

「もしかしてクリスには救国の英雄だって事、秘密にしてたのかい?」

「ええと」


 秘密というより【まだ教える時期じゃない】って感じかも。

 それはそうだ。

 従者の話をするなら、まず勇者の事を話さないといけないから。


(それに、レイナちゃんのパパの話にもなっちゃうし)


 だからきっとアイナママは、ぼくらが聞けば教えてくれると思う。

 けれど、それを聞かないかぎりは──


(その【時】が来るまでは……ってことかも)


「まえに王都にいるころは、すごい神官だったって聞いてました。でもレイナちゃんが生まれたんで、いまはこの村で静かに暮らしてるって」

「なるほど……ああ、こりゃ悪いコトしちまったかねぇ」

「あ、いえ。ギルドのお姉さんもぼくの前で【英雄級】っていってましたし?」

「そっか。ならそこまで秘密ってワケでなかったのかねぇ ──ん? そのレイナっていうコは、アイナ様の娘さんかい?」

「そうですけど?」

「じゃあ、クリスの姉か妹ってことか」

「あ、ぼくはアイナママのほんとうの子供じゃありません」

「へ?」

「ぼくを産んでくれたママは、ぼくが赤ちゃんのころに病気で……」

「なんだって? じゃあ──」

「はい、ぼくを産んでくれたママが亡くなってしばらくして、アイナママがレイナちゃんを連れて、この村に来てくれたって聞いてます」

「………………」

「それからアイナママは、ぼくをほんとうの子供みたいに──」

「あっ あっ アイナっ さまぁぁぁっ」

「ぎょっ」


 なんてことばが出るくらい、ビックリした。

 レニーさんが歯を食いしばって、ぽろぽろなみだを流してるから。

 それはもう【マジ泣き!】って感じで。


「れれっ レニーさんっ」

「くぅぅっ さすがは【慈愛の聖女】! くぅぅうっ」

「えっ?」

「それにクリス! よかったなぁっ ほんとうに良かった」

「えっ えっ?」

「親を亡くした子なんて、いくらでも見てきたけど……その中でもクリスは、ほんっとうぅぅぅに幸せ者だ! よかったなぁっ よかったなぁっ うぅぅっ」

「れ、レニーさん」

(レニーさん、姉御だけあってナミダもろい?)


 でもまぁ? そういうことになるのかなぁ

 平和をもたらした救国の英雄が、すべての地位や権利をなげ捨てて。

 片田舎の村で、今は亡き同僚の子供を母代わりとして育ててる。


(そりゃぁ【いい話】かも? ──んごっ)


 そのとき、ぼくのお顔に衝撃

 というかこれ


(レニーさんに、だきしめられてるっ?)


 レニーさんはぼくの頭をきゅっとかき抱いて、今もちいさく震えながら泣いてる。


「レニーさん、そのぉ 泣かないで?」

「ぐすっ ぐふぅぅぅっ く、クリスはいい子だなぁっ ぐすっ でもいいんだ! 別に悲しいワケじゃないからぁ」

「え、ええと」


 なんていうかその、困る。

 悲しくなくても、女の人が泣いてるのは~

 それに、


(レニーさんっ すごくいいにおい、するぅ それにそのおっぱいぃぃ)


 レニーさんの弟のユカイさんは【まな板】っていってたけど?


(そんなことない。そりゃあアイナママよりはずいぶんひかえめ? だけど)


 ぼくのお顔にふんわりと押しつけられたそれは。

 とってもやわらかかったんだ。


 ◇◆◆◇


 レニーさんによると?

 ぼくの住む村に【聖女アイナ】がいることは知ってたみたい。

 でもギルドから、


【静かに暮らしていらっしゃるので、極力干渉は避けるように】


 っていわれてたみたい。

 なのにガッツリ干渉しちゃってるし。


(レニーさん、だいじょうぶなのかなぁ? って、ぼくがおねがいしたんだもん、へいきだよね?)


 そもそもいま、アイナママが静かに暮らせているのは……

 平和だから。

 魔王がいない魔王軍なら、人族の軍隊でもなんとかなる。


(そりゃぁ、ホンネをいえば? 聖女には、もっといろいろ働いてほしいだろうけど)


 そこは救国の英雄として、すでに実績のある身だし?

 超緊急事態ならともかく、そうでないなら、


【望みのままに、静かな暮らしをさせてあげたい】


 そう考えてるくらいには、王宮の人たちは良識派っぽい。

 そしてレニーさんも、ぼくがアイナママの家族だということは、知らなかったわけで。


(ホント、この世界の情報っておそいし、そもそも伝わらないことも多いからなぁ)


 もしぼくに前世の記憶がなかったら、アイナママが【勇者の従者】だったこと、気付かなかった?

 そう考えると……たぶん気付いたと思う。

 もともと【聖女と呼ばれるくらいすごい神官だった】、というのはわかってたし?

 あの街のひとたちの慕いっぷりとか、アマーリエさんの言葉で。


(もしかしたら……)


 アイナママはあの街にいるときに、ぼくに従者時代のことを聞かれたら、話してくれるつもりだったのかも?


(でもぼくは、前世の記憶があったから──)


 そう、聞かなかったんだぼくは。

 これってもしかして、


(あっ アイナママに、へんな心配かけちゃった?)


 あの日、荷馬車で見るものみんな珍しくて。

 あれだけ質問してたぼくが、アイナママ自身の事については、何も聞かない。


(うわぁ、すっごく不自然っ!)


 それともぼくが【聞いちゃいけないこと】と察して、あえて気付かないふり。


(なんて感じに考えちゃってるのかも?)


 前世の記憶のせいで、なんだかアイナママと、距離ができちゃう感じ~


(やっぱりこれ、問題だよぉっ!)


 ◇◆◆◇


「では、ご子息をお預かりさせていただきます」

「はいよろしくお願いしますね? レニーさん」

「はい、あたしの全身全霊をもって」


 翌朝、ぼくをむかえにきてくれたレニーさんが、アイナママにそういった。

 ゆうべの件で何か思うところがあったのか、レニーさんのアイナママへの緊張はなくて、あるのは尊敬のまなざし。


(また、アイナママのファンが増えちゃったなぁ)


 そしてレニーさんの【全身全霊】という言葉に、アイナママは深くうなずいた。

 その表情には、信頼がこもっていたんだ。


「ねぇクリスぅ あれ」

「あ、レイナちゃんは知ってたんだ?」

「ま、まぁね」


 そう、レイナちゃんのいう【あれ】とは。

 レニーさんの歳が、20代半ばを越え、かつレベル30という高レベルゆえに。

 装備することをためらい、一時期は諦めてしまった──【あれ】。


(レニーさん、ビキニアーマー装備してきちゃった!)


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 実は幼女先輩を思い浮かべてた(笑) …うわ!何をする!?アッーーー
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