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女公爵クルシェ嬢 アレックス殿下に好きと…ですが…

ルーキンス入りしました。クルシェが恋に進む前に片付けたい事にたどり着きましま。上手く伝えられる話を書けたらと思います。


レイナードの王都の西。王宮殿まで一時間程の距離の離宮。

そこが私達の滞在場所となった。

継承三位のクロイスに同行しての友好訪問。急にしては、よく受け入れられたと思う程だ。王宮殿には、既にビデディアの王子が滞在しているので、少し距離を置いてと言う事なのだろう。

それでも、三日後に行なわれる二人の王女主催のお茶会。ビデディアの王子の出席予定に合わせて、私達も招待された。

まずは明日の謁見を済ませなくてはならないのだけど、それは…まぁ…全権をアレックス殿下に丸投げしたい。

後は、 晩餐会や、王宮殿舞踏会も、希望すれば出席も叶うらしい。

それは、殿下やお父様にお任せだろう。


その離宮で私達の到着を待つ人が居た ハレスの義父と母…。

前の宿泊場所から半日の移動とはいえ、楽な支度の出で立ちなので、改めたい気持ちはある。

が、ご子息ご息女に直ぐにでも会いたいとの事だからそのままでと。

ならばとクロイスがアレックス殿下の同行を求めた。

夫人は身重と聞くし、団欒の邪魔はしたくないと辞そうとしたアレックス殿下だったが、クロイスの言い分が通った。殿下が共にでなければ行かないと。

人の好き嫌いのハッキリしたクロイスが、自分の近くに他人を置こうとするのは珍しい。何人か御友人と紹介されても、誰もクロイスの御友人にはなれてない。お付もクロイスが身近に置くのは、今回同行していた従者ヨシュと侍女のマーナ二人だけ。アレックス殿下とは、打ち解けるのが早いと思ったけど、側近のイヴァン様とレイン様とは一線がある。両親への帰宅の挨拶で紹介したい程好きなのかしら?

逃がさなとでもいう様に、殿下の袖を引く。


案内された部屋の扉は、立ち止まる前に開かれる。

ゆったりとしたソファーに並ぶ二人。


「お義父様、お母様。お久しぶりでございます」


入室と共に再会の挨拶をする。立ち上がろうとするのを待たずにお母様へと歩み寄り、伸ばされた手の中へと体を屈めた。


「此方から行けなくてごめんなさいね。ルーキンスに来ると聞いて、とても待ち遠しかったの」

「いいえ。お母様こそ、お体大丈夫ですか? お母様もおめでとうございます」


母の腕の中から抜け、伸ばされたてをそのまま握る。

そんなやり取りを隣で見ていた義父は、息子のクロイスと殿下へと視線を向けた。


「クロイス。私の息子は、帰還の挨拶もできないのかと思われるぞ」


未だに殿下の袖を持ち、進められてもいないのに、ソファーへと誘導するクロイス。


「お会い出来て光栄です、父上」

「帰宅の挨拶じゃないのかい?」

「僕はまだ帰りませんよ。国に戻っただけですから。それよりも、父上?」

「あぁ、そちらは?」

「公の場じゃ無いから別にいいですよね…。アレク、僕の父上。父上、アレクです」


さぁ座ろうと、袖からその手を引く。

そんなクロイスを止めて、殿下は義父に向き合った。


「失礼をしてしまい申し訳ない。アレックス・エイメル・シルフです」


失礼で無い程に頭を下げた。

この場合…身分の高いのはどちらになるのだろうか?

隣国の第二王子。第二王子だった王弟、公爵家の当主。

公の場じゃ無いので、年下から年上の者への挨拶としたい殿下の様子が伺えた。


「これは失礼した。ようこそルーキンスに。ジェイド・ハレスだ」


座したまま見上げる義父に、殿下は挨拶だけで退室しようとす。


「駄目だよ、アレク!」

「だが、家族だけの話もある」

「なら、アレクだって関係あるじゃないか!」


私は思わず振り返る。


「姉上は母上の隣、そのまま座って。ほら、アレクはこっちだよ」


仕方無しに、クロイス言う通り腰を下ろす殿下。満足そうなクロイスの笑顔が私へと向けられる。


「関係があると言うのはどうしてだ、クロイス」

「それはですね、父上」

「待ってくれ、クロイス」


義父とクロイスの会話を遮る殿下。

義父を見ながら居住まいを正す。


「このような場で不躾ですが、クルシェ嬢に結婚の申し込みをしています。考えてみて欲しいとお願いしているところです」


私は恥ずかしさで下を向く。


「娘に直接申し込んでると…?」

「はい。ですが、クルシェ嬢の心が私に無ければ、無理に話を進めるつもりはありません」

「クルシェ? クルシェは何と返事を?」


私に話が振られてしまいました。泣きそうです。大丈夫です殿下! きちんと話を合わせてみせます。


「あの…ですね、色々あったお詫びとアレク様が足を運んで下さいましたの。デビューの時もお世話なって…」

「はいと返事をしたのか?」

「まだです。あの、結婚したいと思う気持ちが分からなくて…」

「ほらアレク。大丈夫だよ」


クロイスの言葉に、私も義父もお母様、アレックス殿下までクロイスを見た。


「姉上が、「まだ」と言ったよ。結婚したい気持ちが分からないのであって、嫌いじゃ無いってさ」


それに私は、顔を隠す様に俯いた。

一気に身体中の体温が上がった。きっと私は真っ赤だろう。


「何を言ってるんだ、クロイス」

「何って父上? 本当の事だよ。姉上は、嫌な事は嫌と言える人。ほら見て、照れてる姉上って可愛いよね、アレク」

「…とても」


殿下の声。その声で私は殿下を見た。

殿下は、少し視線を外しているが、耳まで赤くしていた。


「姉上が嫌なら、僕は断固として邪魔をするよ? でも、そうじゃ無いなら、アレクを応援だね」

「そこまでアレックス殿を気に入ったのかい?」

「そうだよ。アレクに学ぶ所もあるし、帰るまでは一緒に居たいんだ、いいよね父上!」

「学ぶ所?」

「僕は威張っていて我儘なそうなんたよ、アレク」


誰がそんな事をとアレクが聞いても、義父が聞いても、クロイスは答え無かった。


「兎に角ね、アレクも姉上も、帰ってしまえば何時も通りなんだから、その間だけでもお願い、父上」


確かにクロイスは、私達に対して我儘をする。でもそれは、兄妹や親しい者に対してであって、同年の者(恐らく貴族子息)や他家の者にはしない。そのクロイスを我儘と言う者に怒りを感じた。

そしてこのくらいの年代は、親が付き合う者を選ぶ。そんな者とクロイスを引き合わせたのは義父。義父が付き合わせたいと思う家の子息なのだ。この国でも高位の貴族子息だろう。

この遣り取りの後、義父はアレックス殿下に迷惑でないかと聞いた。

殿下は、弟がもう一人居る様ですと、微笑む。


「ならば、滞在中もクロイスの事を頼みたいが良いだろうか?」


アレックス殿下は「勿論」と、反対に、クロイスに助けられる事もあるだろうから、願ってもないと言った。

そうだ、求婚者の設定を知っているクロイス。

忘れてた。…恥ずかしい。アレックス殿下を、ハレス家にも求婚者と周知してもらわないと齟齬がでる。必要以上に照れて、まともに話せなかった自分って何? そう思うと、いっそう顔を上げる事が出来なくなってしまった。


この後、レイナードでのクロイスの事を少し聞いて二人は帰って行った。


「アレックス殿。此方もクルシェの、娘の結婚相手に対しては考えがある。悪いが、必要以上に話しを進めるのは辞めておいて欲しい」


馬車に乗り込む際に、そうアレックス殿下に言って…。




「アレクも姉上もごめんなさい」


見送りをしたその場で、クロイスが俯きながら謝る。

どうしたの?。そう思いクロイスの肩に手を乗せる。


「先ず失礼だよね。公じゃ無くても、アレクは王子だよ。王子の滞在先に、許可も無く上がり込んでるのに、あの態度だよ。姉上の事だって、娘? 一緒に暮らした事も無いのに? 確かレイナードの事や、姉上の結婚には、ハレスは口を出せない筈なのに…」


とても悔しそうで、苦しそうな顔。


「僕少し休んでくるよ。アレク…後で行ってもいい?」

「構わないぞ」

「ありがとう。姉上も、後でね」


背伸びをして私の頬にキスをすると、とぼとぼと歩き出した。

殿下と二人で、その後ろ姿を見送る。


「好きで嫌いな者が居ると聞いていたが、相手は父親か?」


小さい声で殿下が言う。

私は小さく首を傾げる。私はクロイスに、そんな事言われた事は無い。


話しをしようと言われて頷くと、手を差し出されたので自分の手を乗せた。




引き込まれた水の小川の傍らを、石を並べた小道が続く。

よろけると、もう片方の手も掴まれて体が持ち上げられた。


「大丈夫か?」

「はい、申し訳ありません」

「クルシェ? この場合はありがとうがいい」

「確かにそうですね、ありがとうございます」


言って見上げれば殿下と目が合う。

転ばないですんだのです。謝るよりお礼の方が確かに良いだろう。ですが、そろそろ手を離してくれないだろうかと首を傾げてしまう。


「あの…殿下?」

「さっきはちゃんとアレクと言ってくれたのに、今度は殿下?」

「アレク様?」

「ごめん。こんな遣り取りでなく、言いたい事があるんだ」

「何でしょう?」


言いたい事と言われたので、殿下の言葉を待つ。

改めてと思うと難しいと、視線を反らされる。

繋がれた手に殿下の緊張?、というか、力が入ったのが分かる。


「アレク様?」

「クルシェ。さっきの…求婚の事だが…」

「はい。上手に話せなくてすみませんでした」

「そうじゃなく…。俺を、求婚者の一人として、本当に考えてもらいたいんだ」

「えっ?」

「ハロルドもクロイスも、ハレス公の持ち出す縁談を回避したいと思ってる。そして、王子である俺が求婚してる以上、普通なら躊躇する。そして俺の方は、王女に求婚しに来たと思われたく無い。面倒事に巻き込まれない様にと、この話になっただろ?。だけど、俺はクルシェの事を本当に好きになってるんだ」

「あの…」

「ゆっくりでいい。このままなし崩しで、その気も無いのに求婚者として演技してると、思われたく無いんだ。本気で口にする言葉を疑われたくない」

「あ、あのですね…殿下?」

「アレクと呼んてと言った。君にアレクと呼ばれたい」


両手を持ち上げられて唇が寄せられた。


「本当は、こんな話しになる前に好きだと言えばよかったんだが…。忘れないで、俺は君が好きだ」


手を離して殿下が一歩下がる。


「こういう話しは、二人きりでしたかった。ごめん、君の兄君が怒ってしまった」


言われて殿下の視線の先を見ると、グレイ兄様が大きい歩幅で近付く。殿下の護衛が止めようとするが、それを殿下が止めていた。


「アレックス殿下? 何時もなら、私は殿下の護衛ですが、今は妹の護衛です」

「分かってる。済まなかった。ただ、言っておかないと、ハレス公に持ってかれると思ったら、焦ってしまったんだ。悪かった」


あの部屋には、この兄も殿下の護衛も居なかった。


「クルシェも、急に悪かった。だけど、俺の言葉を疑わないで」


そう言うと、また後でと建物への道を戻って行った。


グレイ兄様を含む、わたしの護衛だけが残った。




殿下は何と言っただろう?

私を好きと言った。…? 求婚者の一人にって言った。本気で?


「殿下に何を?」


心配そうに顔を覗き込むグレイ兄様。心配する様な事は無かったのよ。


「手を取って口を寄せるなんて、そう見える様に振る舞うと言われていたが、行き過ぎだろ? 嫌じゃ無かったか?」


兄様が心配してるのは、私が嫌な思いをしなかっかって事か…。


「殿下は別に、嫌な事はしてないの。ビックリしてしまった…のかしら?」


ほわぁと頭がするし、顔が熱い。


「それよりもね、ハレスのお義父様が…アレックス殿下に勝手に話しを進めるなとか? 具体的じゃ無かっなのだけど、んー? 相手を考えてる?。用意してる? 聞き取れ無かったのだけと…そっちの方が嫌かしら?」


グレイ兄様の顔が視界からきえたと思ったら、抱えられていた。


「兄様?」

「ん、取り敢えず親父ん所行こう」

「お父様? 着いたばかりでお忙しいでしょ?」

「やっ、これが先」

「グレイ兄様? 私、歩けますよ?」

「うん。この方が速いからね」


難しい顔。眉の間に縦の皺が寄る。

手を伸ばして皺が消えないものかと撫でてみる。


「クル、前見ずらい」

「ならば下ろせばいいと思いますの」

「少し急ぐから」

「兄様? ぐっと力が入る程重くなりなしたか?」


歩幅は変わらずながら、皺の消えた顔で見られる。皺は消えたが、眉が下がってる。


「重く無いよ」

「ですが、私も大きくなりましたよ?」

「そうだね。だから余計に、ハレス公が動くと困るかな?」

「困るのですか?」

「今も王子のハレス公が、クルの気持ちを考えないで動くのがね」

「そうなのですか?」

「だからアレックス殿下に頼んだんだけどね。取り敢えず、親父の所に行こう」


そうなのですか…。確かに、ハレスのお義父様は、あまり話を聞いてくれないところがあります。困ります。クロイスも、それが分かってるから、あんな顔になっていたのでしょう。

ルーキンスに来て解決したいと私が思ってた事が、もしかすると、ビデディアの王子に会うより難しいのかも知れません。

ですがお父様も、この問題には立ち入りたくないのではと思います。というか、私が嫌だと思ってます。どうしたらいいのでしょうか?。


明日の謁見も、心が重くなります。


今話もお読み頂きありがとうございました。


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