少年と少女の出会い
あれから数日…
今さっき、俺はアニスフィーの門番に事情を話して、しばらく仲間を置いて街の外に出る事を伝えて出てきたところだ。
その後、少し森の中を散策していたが、ナディーを見つける事もナディーが居た痕跡も見つけられなかった。
アルテノンが別れ際に言っていた事を思い出す。
「もしも、あの子と会う時は気をつけてね。」
あれはどう言う意味だったのだろうか…
嫌な予感がする…
俺は森の風に吹かれながら考える。
どうすればいい…
どうすれば…
強欲とか言うやつの言葉通りに行動すればいいのか?
人を殺さないといけないんだよな…
ガサガサッ!
「うあっ…いてて…」
俺は思わず声が出そうになるのを無理に抑えようとして舌を噛んでしまった…
木陰から見覚えのある青年が傷だらけの姿で出てくる。
「また亜人かよ…やだなぁ…」
青年が刀を構えている間に名前を思い出す。
「アルス…?」
青年は驚いた様子で目を見開く。
そして、少し考える素振りを見せたが、よくわかってなさそうだった。
「なんで俺の名前を知ってるのかは知らんが、刃を交えれば思い出すかもしれん…一つ、手合わせ願おうか。」
「ああ、思い出せないなら、そうしてみるか!」
俺は魔力で右手に真っ黒な剣を生成する。
「その力…懐かしいな…こちらからいかせてもらうぞ。牙突!」
アルスはそう言うと目にも止まらぬ速さで突っ込んでくる。
俺はギリギリで剣を横に構えてアルスの攻撃を防ぐ。
「あっぶねぇ…死ぬかと思ったぜ…」
「そう言いつつも、お前には余裕があるように見えるぞ。」
「ははっ!どうだろうな?」
俺はそのままアルスを押し飛ばす。
そして、アルスに剣を振りかぶる!
「爆ぜろ…爆裂剣!」
俺の剣の剣筋がドゴォンと爆裂する。
アルスはギリギリで身を交し、刀に水を纏わせて被害を軽減させていた。
「ならば、これでどうだ!水刃!」
アルスが勢いよく刀を振るうと水の刃が飛んでくる。
「俺が使えるのは炎だけじゃないぜ!白雷!」
俺の突き出した剣先から白い雷が放たれ、アルスの水刃に引き寄せられるように軌道を変える。
アルスはまるでわかっていたかのように刀を地面に突き刺して膨大な魔力を使い、山のように巨大で硬く、長い刃を形成する。
その刃で俺の白雷は完全に無力化される。
「簡易武装!土着の刃!」
「なんてバカみたいな力だよ…」
アルスは静かに目を閉じて言う。
「俺はある人のパーティに居たが、とある怪物に壊滅させられた…相棒の武器は砕け散り、仲間は生きてるのかすらわからない…仲間の情報を追いかけては、絶望した。やがて、俺の中にあいつらは死んだのかもしれないと言う思いが湧いてきた…だから、俺はここを最後に探して、見つからなければ諦めて、死んだと思うつもりだった…」
アルスはそこまで言うとフッと笑う。
「不思議なものよな…」
「アルス…」
「続けるぞ。」
アルスはそう言うと軽々と山のような大剣を上方に構える。
「受けてみよ!我が必殺の刃を!巨躯の剣!なぎ払い!」
アルスが巨大な刃が周囲の木々を粉砕しながら、刀を横に構えて左から力強く振るう。
俺は魔力で自分の身体を大幅に強化しながら、それを剣で受ける。
「ぐっ?!」
ズガァァァァァン!と強烈な衝撃と音が大地を震わせる。
直撃は避けられたが、かなりの衝撃とダメージがあった。
身体が大きく吹き飛ばされ、受け止めた剣を持つ右腕が弾けるように血を吹く。
強化していなければ意識ごと、身体が木っ端微塵になっていたかもしれないと感じながら、俺は剣を左に持ち替え、右腕は治療に専念する。
アルスは刀を再び構えて少しだけ楽しそうに言う。
「ほう…さすがに今のでは片腕を飛ばすしか無理か…お前もなかなかの力を持っているな…」
「この間、神の力を得て、俺もそれなりには強くなったって事かな。さすがに今のは強化してなければ死んでいただろうし…」
俺が言っているとアルスが少しだけ驚いたように言う。
「ほう?お前がついこの間、世界に指図したと言う無謀な神か…」
「ははっ!俺も有名になっちまったようだな!」
「当然だ。なんせあのレグラス様でも、そんな無謀な事はしなかったし、出来なかったからな…下手をすればお前も死んでいたぞ。」
あれ?これって、あれじゃね…
なろう小説でよくある、俺、またなにかやっちゃいました?じゃね?!
って、なんで俺がメッタメタのメタ〇イト卿になってんだ。
いい加減にしろ!
「リア、置いて行くなんて酷いわよ?」
エイリスは少し機嫌が悪そうにやってくる。
アルスはやはりかと言いたげに言う。
「お前が…」
「そう言えば、まだ名乗ってなかったな。俺はリアだ。つっても、名乗るのは2度目なんだがな。」
アルスは刀を戻しながら静かに目を閉じて言う。
「薄々気づいてはいたが…お前があのリアだとはな…」
エイリスが不思議そうに微笑みながら言う。
「あら?貴方、私のリアと知り合いなのかしら?」
アルスはゆっくりと目を開けながら言う。
「あぁ…ようやく会えた…実に7年ぶりだ…諦めずに探し続けた甲斐があった…」
俺はアルスに近寄り、頭をそっと抱きしめる。
「ずっと一人にしてしまってすまない…」
アルスは静かに涙を流していた。
しばらくして、エイリスが言う。
「そう言えば、私、貴方に自己紹介ってしてたかしら?」
「いや、まだだな。」
「じゃあ…」
エイリスは俺の腕に胸を押しつけながら言う。
「私はリアのエイリスよ♪よろしくね!」
「ああ、俺はアルスだ。今はソロで国宝級冒険者をやっている。よろしく。」
アルスはエイリスに握手を求めて手を伸ばす。
エイリスはアルスの素振りを見て少しだけつまらなさそうに握手する。
きっと、アルスをからかうつもりでやって反応を見ていたんだろうな。
だが、アルスが思いのほか無反応だったから、面白くなかったのだろう。
「そう言えば、アルスは今はソロで冒険者をやってるって言ってたけど、何かあったのか?」
「俺はお前たちが死んだと聞いていたからな。そんでそのまま流されるように解散の手続きをやらされたわけさ。その後、依頼をこなしながら、お前たちを探していたんだ。気がつけば、7年もたち、B級だったギルドカードも国宝級になっていたわけさ。」
アルスはそこまで言うと真剣な眼差しで言う。
「リア、お前以外に生き残ったやつは知ってるか?」
俺は少し考える。
ナディーの事をどう言えば良いのか、他のやつはどうなったのか…
「ナディーについては俺と共に行動していたから、生きているのは知ってるが、この間、俺の前から姿を消した…他のやつはまだわからんが、世界に聞いた時には生きてはいると聞いたぞ。」
「そうか…」
アルスは安心した様子で空を見上げる。
「良かった…皆、生きていて…本当に良かった…」
感傷に浸るアルスにエイリスが言う。
「君はこれからどうするつもりかしら?」
「そうだな…」
アルスは少し考えて言う。
「俺はリアのパーティの一員だ。その思いは今も変わらん。だから、リアについて行こうかと思っている。」
エイリスはそれを聞くと楽しそうに頷いて言う。
「良いわね!リアもそれでいいのよね?」
エイリスが楽しそうに俺の顔を見る。
「そうだな。アルス、これからもよろしくな。」
「ああ、こちらこそよろしく頼む。」
俺とアルスはガシッと固い握手をする。
こうして再び俺とアルスはパーティに戻ったのである。
とある場所にて、何かが目覚めようとしていた。
「我に釣り合う者がようやく現れた様だな…」
禍々しい力を纏った"ソレ"はまるで己の運命だと言わんがばかりの声で言う。
「原初の神と同じ姿の者よ…汝は必ず、我の手駒を討ち、我の首に刃を突き立てる者となる…その時まで、我は待っておるぞ…」
静かに"ソレ"は言い、再び眠りにつく。
その首を狩る者が来る事を期待しながら、ただ眠る。




