神想開幕
「ぐあっ!!」
「痛っ?!」
正面から突然抉りこまれた拳に身体が後ろへと飛ばされる。
ナディーも同じ様に抉りこまれた拳に身体が後ろへと飛ばされた様で不思議そうに衝撃を受けた箇所を見ていた。
俺が見た限りだとフィリアムは微動だにしていなかった。
ナディーも恐らくそうだろう。
まるで、俺たちが殴られた瞬間だけを遺したかの様なそんな衝撃の感覚だった。
フィリアムはゆっくりと微笑みながら言う。
「時…それは我が全てを支配するものです…もうお分かりでしょう…?」
「まさか…!」
「そうですね。我は"我が貴方たちを殴った"と言う時間だけを具現化させました。すなわち、貴方たちの行動が手に取るようにわかるわけです。」
ナディーがゆっくりと立ち上がりながら言う。
「ナディーは負けない…だから…リアも負けない…ナディーはもうその手には乗らない…見切ったから…」
「そうですか?ならば、その力を存分に振るうといいでしょう。」
俺は何か引っかかるような感じがした。
多分、フィリアムはまだ何かを隠してる…
「フィリアムは俺たちを殴った時間だけを具現化させたと言っていたな…まさか…!」
俺はあるものをイメージした。
それは徐々に実行されていく。
「ナディー!」
「わかった!」
ナディーが無属性の魔力を纏った拳でフィリアムを殴る。
フィリアムはそれに触れないように紙一重で避けながら言う。
「どうしました?見きったと言う割には攻撃が全く当たらない様ですが…」
「フフッ…手に取る様に分かる…この先の事はもう分かるはず…当ててみて…貴方の未来を…!」
ナディーはフィリアムから素早く距離をとって両手を横に広げて言う。
「汝、我が声に従いて、その力をここに示せ!黒雷の波動!」
フィリアムの周りから突然黒雷が発生し、フィリアムを包み込む。
「甘いですよっ!時の英雄よ…我に力を貸しなさい…時神の調べ…顕現せよ!虚ろの星奏!」
虚構から無限の音が響き、彗星の流れの様な音の矢が無数に発生し、無造作に飛び交う。
「手に取る様にわかるわりには無造作過ぎないか?」
俺は飛び交う矢を避けながら言う。
ナディーが拳に魔力を纏い矢を弾きながら言う。
「ナディーたち…目…逸らす作戦…かも…」
「だとするなら、答えは一つだな!」
俺は飛んでくる矢を避けながら魔力を溜める。
「させませんよ!えい!」
「ナディー…守る!」
フィリアムがさらに矢を放とうとするが、ナディーがそれを阻止する。
ナディーがフィリアムを殴り続けて、フィリアムがそれを交わし続けていた。
「ナディー!」
「分かった!」
俺は溜めた魔力を一気に光に変えて放出するイメージをする。
「くらえ!光の超電磁砲!」
ギュオッ!と光が圧縮される様な感覚がし、それを突き出すように前方へ発射する。
ズガーン!
確実に直撃した。
そう確実に…だ。
いくら神だろうとタダではすまないはずだ。
「はたして、君が見ているのは現実であろうか…それとも…」
そんな声が聞こえた気がした。
「うがっ?!な…んで…」
俺は突然腹部に焼ける様な激痛を感じ、そこから流れる熱い何かを感じていた。
「あ…う…リア…?!」
ナディーが俺の身体を見て目を見開く。
確かに俺はフィリアムに向けて発射したはずだ…
そして、それが直撃したのを見たはずだ…
フィリアムは初めの場所から全く動いて居なかった。
「…この程度ですか。とんだ期待外れもいいところですね。あの子も人を見る目が落ちたんじゃないかしら…」
「あの…子…だと?」
俺がそう言うとフィリアムは顔色一つ変えずに言う。
「そうか…貴方達はまだ知りませんでしたね。私が何故、貴方達を神にしようとしているのか…まあ、だからと言って、教えはしませんがね。彼女と私の約束ですし。」
フィリアムはそう言って目を閉じる。
俺の中の生きる力が急速に失われていくのがわかる。
俺は死力を尽くして最後の言葉を放つ…
「なら……俺…が…し…をつ………だ…」
俺の意識はここで途切れた。
ここは…
俺は辺りを見渡す…
俺は…死んだ…のか?
俺がそんな事を考えて居ると、目の前に俺によく似た少女…
いや、紛れもない生まれたままの姿のリアそのものがそこに居た。
あれ?じゃあ、俺は…
俺は自分の身体を見回す。
…?!生前の身体だ!あっちで生きてた時と変わらない!生まれたままの男の姿だ!
目の前の少女が言う。
「私は…貴方と時を同じくして死んだ…入れ替わりに貴方が私の中に入った。」
俺と…同じ時に死んで、俺が代わりに入った…だと?
レグラスの野郎は俺の身体をいじったと言っていたが…
「うん。確かにレグラスは貴方の身体をいじった。いや、正確には魂を…ね。」
どういう事だ?魂をいじっただと?
「そうね…それを知るにはレグラスに直接問いただすしかないけど…」
そうか…
ん?そう言えば、お前、レグラスの事を呼び捨てにするんだな…
「そうね。私も貴方と似た境遇だからかしら…ただ一つ言えるのは、今の貴方にはそんな事は関係ないと言うことね。」
そうか…
気になる事は山ほどあるが、話を進めてくれ。
「ありがとう。話が早い人は好きよ。それで、本題なんだけど…」
少女の動きが止まる。
俺は不思議に思って言う。
ん?どうかしたのか?
「いや、なんでもないわ…」
少女はまたなんでもない様に俺の目を見る。
「今、この世界の神は邪神と冷戦状態にあるの。と言っても、完全に邪神側が手を抜いてるってだけなんだけどね。ほとんど、こちら側の神は邪神に食われてしまったからね。」
神が…食われる?
「そうね…貴方の世界で言う所のRPGとかでボスキャラが別のキャラの力を奪って強くなる様な感じね。正確には違うけど、そんな感じだと思っててくれたら助かるわ。」
そんな事があったのか…
神の世界も大変なんだな。
「そうね。ただ貴方もその中に入れられているって事は忘れちゃダメよ。貴方は神の後継者であるのだから…」
俺が…神の後継者…?
「あら。レグラスに教わらなかったのかしら?まあ、良いわ。今の貴方には関係のないことだもの。」
どういう事だ…?
「今は時間が惜しいの。疑問はあるだろうけど、それは後にして。今の貴方は死んでいるけど、生きている状態…つまり、本来ならあってはならない状態よ。長くはこの状態も保てないわ。 多分、貴方の能力のおかげね。」
俺って、そんな状態だったのか…
それと、俺の能力って凄いんだな。
「そうね。そして、貴方はこれからもっと凄いものを見ることになるわ…」
もっと凄いもの…だと?
俺がそう言うと少女が俺の腕を引っ張って暗闇を歩き始める。
お、おい…どこへ行くんだよ?!
少女は俺の声を無視して歩く。
お、おいって!
俺が手を振りほどくと少女が立ち止まって言う。
「下を見て。」
下だと?
俺はそう言って下を見た。
そこには言葉に現せないほど、綺麗な黄金の球体があった。
「あれは貴方の中に眠る力…」
少女は俺の腕を引っ張って下へと向かう。
そして、黄金の球体の目の前で立ち止まって言う。
「貴方はこれから神になる。さあ、先に行って…私も追いかけるから…」
俺はよく分からないが走って球体の中へと飛び込んで行った。
自分でも何故走って飛び込んだのかは分からないが気がついたら黄金の風景に包まれていた。
目の前に先程の少女が現れて言う。
「ここは神の間…新たなる神の誕生を祝う世界…」
新たなる神の誕生…
「うん。そして、私はその貴方の依代となる身体…」
少女はそう言うと俺の身体を抱きしめて言う。
少女の柔らかい感触を感じる。
「私が出来るのはここまで…後は貴方に任せたよ…」
待ってくれ!俺はまだ…!
「貴方と話せて良かった。貴方が邪神を打ち倒した時には会えると思うよ…その時には貴方の知りたい事…全て教えてあげる。」
俺の視界が白く染る中、少女は思い出した様に言う。
「そうそう。私はシルクって名前よ。それじゃあ、竜胆飛鳥…頑張ってね。」
「ならば…俺は…誓う…」
眩い光が全てを包み込む。
俺は再構築された身体で目を見開いて言う。
「お前の望み通り、邪神をぶっ倒してやるとな!」
フィリアムが驚いた様に目を見開いて言う。
「まさか…あやつが生きていたとはな…」
ナディーが不思議そうに言う。
「リア…治った…奇跡だ…」
俺は確信した。
そう俺は…
「俺は今…神になったのか…これでやっと互角にやり会えるようになったんだ…!」
フィリアムはクスクスと笑って、背中に天使の様な純白の翼を広げて言う。
「良いでしょう。では、遠慮なく全力で来なさい。我も全力で戦って差し上げます!」
俺はフィリアムの目を見て言う。
「ここからが俺の本領発揮だぜ!」
その傍らである者が言う。
「僕も…力を貸してあげないとね…」
眠い!(いや関係ないやん。)
次回に続きます。




