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チュートリアル

 手を伸ばす。


 届かないことは分かっていた。誰よりも。決して触れることのできないその背中に、それでも伸ばし続けていた。


「ーーーーーーー!!!」


 離れていく。


 足は折れ、腕が重りとなり、喉も枯れた。


 叶わない。


 届かない。


 けれどそれでよかった。いや、よくはなかった。でもよかった。


「ーーーーーーーー……」


 ただ窓の外を眺めるだけの姿を見るよりは、ずっと。






◇  ◆  ◇  ◆






『周囲を警戒しろ!』

『右、いないよー』

『左方異常無し』


「やんなっちゃうねえ」


 壁の向こうから声が近づいてくる。このまま隠れていても、見つかるのは時間の問題だろう。

 隣で静かに待つ相棒にポンと手を乗せる。武骨で無機質な相棒。その魅力はまだよく分からない。 でも、なんか強そうだからで選んだことはまだ後悔していなかった。


「んー、まあ適当にやりますか」


 ひらりと相棒に飛び乗り跨る。まだエンジンはかけない。

 徐々に大きくなる声を頼りにタイミングを計る。


「3」


『いないですねえ』


「2」


『レーダーが正しければこの付近だ。そこの行き止まりの家を見たら隣の道を』


「1――GO!」


 ボタンを叩くように押し込む。 同時にスロットルを全開。


 爆音。


 正面の壁をぶち抜き、そのまま一気に飛び出した。


ドゴォン!


 壁だった物を盛大にばら撒きながらの突進。振り注ぐ瓦礫の隙間から視界に入るのは奇妙な格好をした3人組だった。光のラインが走るライダースーツを纏い、それぞれが乗り物に跨るか乗っかっている。


「ビンゴ!」


 タイミングはちょうどよく、3人が固まってる場所の真横から強襲。


 これなら、ワンチャン!


「ライゼ、オン!」


 起動キーのワードを叫ぶ。すると、乗っていた相棒、”ゲットオーバー”と名付けられていたバイクがウィリーするように跳ね上がった。


 車体が真っ二つに割れる。


 装甲がバラバラに崩れ、意思を持っているかのように身体へ纏わりつく。


 腕へ、脚へ、身体へ。


 一瞬で全身を覆い、装着が完了した。


 エンジンブロックが背中へ跳ね上がる。


 キィィン――


 高音の駆動音。


 全身のロックが次々とかみ合った。


 タイヤは亀裂が入り内側へスライドするように縮小すると、下腿部に張り付き地面を噛み締める。


 ブースターが火を噴く。


「はぁ!」


 バイクだった鎧を身に纏い、勢いそのままトンファーへ変形したハンドルを叩きつけるように一番近くにいた敵に向かって振り下ろす。


「っライゼ!」


 しかし。


 相手の反応がかろうじて間に合った。


 乗っていたスケートボードのような物と一体となり、身を沈め、腕に展開した盾に決死の攻撃は阻まれる。


「ちっ」

「きた! ライゼ!」

「ライゼー」


 不意打ちによる1人即排除作戦、失敗。


 他の2人もそれぞれの乗り物を身に纏う。1対3。盾持ち。レイピア。後方には砲撃型。


 ……詰みだ。


「……まあ、無理だよねー」


 響く爆音。鳴るブザー


[試合終了]





◇  ◆  ◇  ◆





「かーっ、きついってえ」

「いやーごめんね。開幕乙っちゃって」

「まだ修行が足りぬ……精進すべし」


 学校の教室。そこでオレたちは1つの机を囲み集まっていた。

 空中で指を何度か動かすと、空中に浮かんだウインドウがさっきの試合の様子を始めから最後まで、様々な角度で動画として映しだす。


「俺はまあ、見事に奇襲受けちゃったからなあ。反省点はタワーにたどり着いた時に、周りの警戒をもっとするべきだったとか?」

「しかしそれはそこそこ結果論ではあらぬか? 遠距離砲撃のクリーンヒットなぞ、警戒してどうこうできるものではなかろう」

「ヒットからのあたふたしてる間に即座に詰められて落とされたからな。どっちかってーとその後のカバーが遅かったせいだ」


 映像を見ながらやいのやいのと先ほどの試合の感想と反省をしてどうすれば勝てたかを話し合う。


「まあゲームの仕様上、スナイプは確かに難しいけど運が良ければできなくはないんだ。警戒しすぎて動けないのはあれだけど、やられたなら頭切り替えて動けないと」

「確かに。それは否定できぬ。我が支援が間に合っていれば……」

「お前の場合変形する時に変なポーズとるせいだからそれ以前の問題だろーが。その隙で致命傷食らってそのまま落ちてるしよー」

「何を言うか! 変身に決めポーズは付き物であろう! むしろ決めポーズ中に攻撃する方が恥知らずなのだ!」

「相手はヒーロー番組の怪人じゃねんだわ」


 机をバンバンに叩く中二病にオレはやれやれと首を横に振る。これではあの悪癖は治りそうにない。

 表示していたウインドウを消し、机に足を乗っけて椅子を揺らす。天井を見上げれば何があるわけでもないが、電灯から目を覆い隠すように腕を伸ばし、すぐにダランと落とした。


「ま、いいけどさ」

「だなー」

「むう」


 そう言って、その後も少し雑談してから解散し帰宅する。


 どこか適当で気の抜けたような日常の中、オレは生きていた。

まともに書いたオリジナルは初投稿です。よろしくお願いします。


とりあえず3話まで書いてモチベが切れたので感想をいただけると嬉しいです。なかったらたぶん続きません

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