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酒蔵姫  作者: キノぴょ


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第1話 庶民と姫

暁の桃源郷。

聖水の都。

聖水せいすい二十にじゅう殿下が治める都。


二十殿下の娘。

聖水せいすい主氏しゅし姫は、幼い頃から、不治の病にかかっていた。

それは、それは、謎の奇病。


水の精霊カッパは、それを知って、名酒をつくる。

精霊酒せいれいさけ”。

どんな病も、治す不思議な酒だ。


それを、1日1杯飲むだけで、姫の奇病は、遠くなる。

1日1杯飲まなくては、奇病に逆戻り。


1日1杯の酒を飲む姫は、“酒蔵さかぐら姫”と呼ばれた。


第1話 庶民と姫


聖水の都。

木凜きりん酒場前。

「おい。弱者小僧。その酒、ワシによこせ」

体格の良い意地悪いじわるじいさんがつめよる。

「こ、これは、親父の分の酒だ」

逸見は、精霊酒の入ったひょうたんをかかえ込む。

枯枝かれえだ逸見いつみ。16歳。

短髪の気弱な男の子だ。

精霊酒は、1日1杯。病気の父親の分。

これを、持って帰らなきゃ、親父が病気に逆戻り。

「精霊酒を飲みたいんじゃ。よこせ」

「わ、渡さないぞ」

「お前、剣道場に通ってるくせに弱いじゃろ。何だったら、木刀で勝負じゃ」

意地悪爺さんは、木刀を取り出す。

逸見も木刀は、持ち歩いている。

だけど、強くない。

剣道場に通い続けても、弱いのだ。

ずっと、弱い。

「ぼ、木刀勝負の自信なんかない」

「じゃあ、酒をよこせ」

「い、嫌だ」


「…おい、意地悪爺さん。弱い者イジメしてんじゃねえよ」


木刀を構えた。長い髪をひとつ結びにした男の子が言う。

いや、違う。女の娘だ。

聖水せいすい主氏しゅし姫。16歳。

金髪の酒色の長い髪をひとつ結びにした女の娘。

「酒蔵姫だ…!」

「主氏姫さまだ…」

いつの間にか、遠くで見ていた野次馬たちが、あわただしくなる。

「どいつもこいつも、うるせえな」

酒蔵姫、主氏は、男言葉で木刀を振りかざす。


ゴツンっ…。

素早く、意地悪爺さんの頭に、木刀が振り下ろされた。

「あいたたたっ…!」

意地悪爺さんは、頭をかかえて、木刀を落としてしまう。

「逸見。行くぞっ」

「う、うん…」

酒蔵姫、主氏に腕を引かれて、逸見は、この場を後にする。


「姫さま」

「酒蔵姫さま。お元気そうで」

「主氏姫さま」


道行く人が、主氏に、挨拶をする。


「や、やっぱり、主氏は、強いや」

逸見は、ひょうたんをかかえ込んだまま、苦笑いする。

「あん?おめえが弱いだけなんだぜ。逸見」

男言葉の主氏。

二人は、幼なじみ。

同じ、剣道場に通っている。

「天山師匠に、会わせる顔がないぜ」

「ご、ごめん…」

天山師匠。二人の木刀の師。

天山剣道場に、二人は通っている。


枯枝そば屋。

「親父。精霊酒を買ってきた」

「ああ、逸見か」

店でいそがしい父親が、ひょうたんを受け取る。

これを、1日1杯飲むだけで、どんな奇病も治る。

「主氏姫さま。いつも息子と仲良くしてもらってありがとうございます」

深々と頭を下げる。

「主氏は、精霊酒を飲んだのか?」

「飲んでるぜ。毎朝な」

「そうか」

逸見は、笑って見せる。


その日の晩。

事件が起こる。

聖水の都の酒蔵から、精霊酒だけが、きれいさっぱり消えてしまったのだ。

1滴残らずだ。

その時、山妖怪ダイダラボッチが目撃されたという。

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