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10、鈍感

 




 元の村に戻るより、少し大きな街が近いと云うのでそちらに向かう事にしました。


 街にはすんなりと入れました。

 異世界警備こんなんで良いんですか

 魔物が溢れて大変だとか実感湧かないです。


 街に居る兵士に、さっきの冒険者の事を話して任せました。


 日も落ちてきたので宿を取りました。

 せめて宿泊費を払おうとしたら、険しい顔で睨まれ、しかも私の分まで払ってくれました。

 グエンさん曰く


「女は男に奢られとくモンだ」


 との事

 お金がかかるのでいいと断ったのですが、部屋も別々に二部屋取りました。

 女性扱いしてくれるのが…何かムズムズします。


 外で食事を取り、グエンさんの部屋でこれからの事を話し合いました。


「基本的に土地とかは誰かの所有なんですか?」

「どっかの貴族の領地とかはあるが、畑とか果樹園とかは領地になるが、それ以外の森とか草原は誰のモンでも無い時が多いな」

「そうなんですか?」

「一応は誰のモンでも無い土地は国の管理になるらしいが、広いからなぁ…勝手に家建てて住み着いたりする奴も居る

 それで、周りに人が集まってまた家建てて…村になる場合が多いな」

「住民登録とか…」

「ねぇな。

 大きな街とかはあるらしいが、村ではほとんどねぇ、一応、村の代表に許可取って家を建てるくらいだな」

「ふんわりしてますね…」

「ああ、だから気に入ったならそこに家を建てても誰からも文句は云われねぇな

 あ、ただ、村くらいの規模になると国に村として届け出して税を納めねぇと取り締まられるが…まぁ個人で暮らす分には面倒な手続きはいらねぇな」

「なるほど…」


 要は面倒な手続きも無く、良い場所を見つけたら建てちゃえ、住んじゃえ、オッケー!ヒャッハー!って感じですか、楽で良いです。


「なるべく、人里から程良く離れてて静かで人が来ない所が良いんですが…あと、魔物が少ない所ですかね。」

「確かに魔物は問題だな…しかし、人里から離れてるってーと…」


 村や町から離れると魔物の出現は多くなるそうです。

 グエンさんに、村の人口は町程多くないから、村に住む事で妥協したらどうかと提案されましたが、却下です。

 私は、なるべく人と関わらず、ひっそり独りで暮らしたいのです。


「あー…少し遠くなるが、嬢ちゃんの条件に合うかもしれねぇ所が一カ所ある。『精霊の森』って所なんだが…」

「………これまたベタな名前の場所が来ましたね…」

「べた?」

「いえ、何でも無いです」


 大体、こういう名前の場所には精霊の加護とかが有って、魔物が寄り付かないとか、何とか云う話なんですよね…


「実はな、その森には《精霊王》が住んでるらしく、その加護で魔物が寄って来ないって噂があるんだ」

「あーはーへーそーですかー」

 大体、予想通りでした。


「だが、精霊が気に入らねぇ奴は森に入れねぇって話もあるんだが…どうする?」

「あ、行きます。精霊見てみたい」

「いや、普通の人間にゃ見えねぇぞ?」

「そうなんですか?」

 残念です。


 が、行く事に決めました。

 幸い、時間制限がある訳では無いですからね


 しかし、少し遠い場所にあるとの事で、歩いて三日はかかるそうです。

 馬車だと一日程度らしいですが、あいにく、三日後までそっち方面の馬車は無いそうです。

 なので歩く事に決めました。


 翌日、町で野宿用の道具とか食料とか色々買い込んで、いざ出発!…なのですが…


「よし!行くか、嬢ちゃん」

「………」

「ん?何だ?どうした?」

「いえ…別に…」


 やっぱり付いて来ますよね


 実は宿屋に泊まった時に、夜逃げ出そうかとも思ったんですが、捜し出して捕まえられそうなのでやめました。

 しかし……



「そんなに家を空けて大丈夫なんですか?」



 グエンさんは村に暮らしてます。

 庭には二羽、鶏が居たし、野菜も植えてありました。

 お肉も置きっ放しでしたね

 鶏、餓死するし、野菜枯れるし、肉は傷むでしょう。

 それを伝えると、グエンさんは「心配ない」と笑いました。


「隣のお嬢さんがな、俺が居ない間、家の管理してくれてるんだよ」


 聞けば、私より一つ年上の隣の家のお嬢さんが野菜の栽培や、鶏の世話をしてくれているとの事。

 家の中も掃除してくれたり、たまに食事も作ってくれるらしいです。

 グエンさん宅のキッチンの綺麗さと、シーツの新しさに納得がいきました。


「大家さんか何かですか?」

「いんや?俺があそこに引っ越した時に挨拶してな、留守がちになるって伝えたら『では私が留守を守ります!』ってそれから色々してくれてる感じだな」

「え、何故でしょう?」

「なんでだろうな?」


 随分親切な方ですね


「グエンさんみたいにお節介なんでしょうか?」

「おい!そこは"親切"って云え!…まぁ…俺が居る時は朝飯とか昼とか夜も作ってくれてなぁー洗濯とかもしてくれるんで申し訳なくてな」

「ほぉ」

「流石に俺も悪いと思ったんで断ったんだが…どうしてもって聞かなくてな」

「ふむふむ」

「大人しい子なのに押しが強くてな。その癖、目を合わせると顔赤くして俯いて、男慣れしてないってーか…まぁ良い子だよ」

「なるほどー」


 なんか大体分かりました。


「グエンさん、やっぱりここでお別れしましょう。貴方は村に帰るべきです」

「なんでだよ!」


 何だか、悲痛な顔してます。


「お節介過ぎるのがいけなかったか!?それともやっぱり傭兵なんて嫌で…」

「いやいやいやいや、違いますから、落ち着いて下さい」


 お節介って認めちゃいましたね

 しかし何故、そんなに動揺してるのでしょう?

 何気に涙目になってるんですが…


「私が思うに、そのお嬢さんグエンさんが好きなんじゃないですか?」

「は?あのお嬢さんがか?」


 ナイナイと、笑います。


「こんな十も離れたおっさんをあんな若い子が好きになる訳ないだろ」

「十くらいなら充分許容範囲じゃないんですか?私の世…私の国でもそのぐらいの年齢差の夫婦とか恋人は居ましたから」

「……そうなのか?」

「愛があれば、年の差なんてって言葉もありますから、本気で好きなら十歳くらいの差は問題無いと思いますけど、それに26ってまだ若いと思います。自分でも云ってたじゃないですか」

「……………」


 あれ?なんか黙っちゃいましたね。

 沈黙したグエンさんを不思議に思って見てみると、何故かジッと見つめられてました。

 あれ?なんですか?朝食の残りカスでも顔に付いてます?


「グエンさん?」

「あー…いや、まぁとにかく出発しようぜ」

「あ、はい」


 顔を逸らされて、話も逸らされました。



 やっぱり、しばらくグエンさんとの付き合いは続くみたいです。



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