↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/32

32 逃げる



 ギフト高校の校舎は、3つの校舎が横並びになっている。今現在いるのが、一番右端の校舎だ。マリスイヤーの話によると、ジスター達は真逆の左端の校舎にいるらしい。現在右端の校舎に生徒会が集まっているので、この校舎を抜ければ左端の校舎に行くのは難しくない。


 生徒会たちは、マリスイヤーとイリクがひきつけてくれる。私たちは、目立たないように校舎を抜けて、左端の校舎に行く。中庭を通るか、渡り廊下を通るか悩むところだが、運動場から丸見えになるのは中庭だ。運動場には、裏生徒会以外の全校生徒が集まっている。彼らに見つかれば、私達がどの校舎に潜んでいるのかは生徒会に筒抜けになってしまうだろう。

 渡り廊下を通るしかなくなった。ひらけた場所ではないので不安は残るが仕方がない。

 4階建ての校舎の、1階と3階に渡り廊下はある。1階は遮るものがないので、ここを通るつもりは最初からない。ここを通るなら中庭を通る方がまだましだ。

3階の渡り廊下は胸のあたりの高さまでコンクリートの壁があるので、腰を低くして移動すれば、外からは分からない。私たちは3階の渡り廊下をいく。


「なんで、こんなことになってしまったのかな。」

「それは、裏生徒会にきたことを後悔しているのか?」

「そういう意味じゃなくって、裏生徒会が何をしたのって話。私達、別に悪いことなんてしていないのに、こうやって追い詰められてさらし者にされる理由なんてある?」

「・・・それが今の世の中ってことだろう。僕たちはひっそりと隠れて、我慢して暮らしていくしかないんだ。」

 渡り廊下を中腰になりながら歩き進む。こんな風に人の目を気にして生きていくのが、能力者の今の生き方。

 満足に能力を使えず、何をしても能力のおかげと言われ、能力があるというだけで白い目で見られ差別される。そんなひどい世の中。


 イリクが入るまで裏生徒会が何もしなかったのは、きっとみんなで集まってお互いの心の傷を癒すことだけで満足していたから。でも、満足すると人間は欲が出てしまう。普通に生きたい・能力を認めてもらいたいと思い、イリクをメンバーに入れて動き出したのだろう。

 その結果が、このイベント。


 全員捕まれば退学。一人でも逃げきれればそのまま。でも、本当に今まで通りに生きられるわけではないのは明白。このイベントで、裏生徒会が誰なのかわかってしまった。世間のルールに異を唱えているのが自分たちだと全校生徒に知れ渡れば、私達は普通とは程遠い生活を強制される。今まで以上に白い目で見られ、後ろ指をさされるような、嫌な生活。


 こんなの、間違ってる。


 でも、私はその間違った考えを受け入れて、今まで生活してきたんだ。あの日、イリクが裏生徒会に誘われて、私も裏生徒会に入ることになる日までは。


 間違っていることなんて、ずっと前からわかっていた。でも、受け入れてしまう方が楽だったから・・・いや、私は怖かったんだ。

 間違ったものと戦うのは、怖くない。私が怖いのは・・・


 過去の情景が浮かび、私は頭を振ってそれを追い出した。


「ライは、自分が能力者だって気づいたとき、すぐに誰かに相談した?」

「いや・・・僕の場合幼少の頃に能力が発現したからな・・・両親が気付いて、物心つくころにはすでに能力者として扱われていた。そして、そんな僕の近くには、あの2人・・・会長と副会長だけが隣に並んでいてくれたんだ。」

「そっか・・・」

「とりあえず、中央の校舎までこれたな。くっ・・・腰が痛い。」

「ちょっとの距離だけど、中腰はきついよね。」

「あぁ。少し休みたいが、ここで見つかっては意味がないからな。さっさと左端の校舎に行こう。」

「うん。」

 渡り廊下の先、右端の校舎を見るが誰もいない。2人がうまく引きつけているのだろう。2人に感謝して、私達は先に進む。


 間違っていると思ったから、だから私は・・・


 いや、そんなこと思っているわけじゃない。ただ私は、裏生徒会を守りたいんだ。周囲を変えたいとは思うけど、そんな大それたことができるはずないってわかっているから、夢は持てない。でも、能力者たちの居場所である裏生徒会くらいは守りたいと思うのだ。


 もう、自分の居場所だ。だから、絶対守りたい。


 でも、完璧に守ることが無理なのは、もうわかっている。生徒会から逃げ切ったとして、周囲の目がよくなるわけではない。逆に白い目で見られることはもう何度だって考えて出た結論だ。


 それでも、退学くらいは回避して、白い目の中でだって仲間たちと楽しく暮らしていきたいって思う。これからも。


 だから、絶対に逃げ切ってみせるよ、イリク。

 どんな手を使っても。間違った今の世界と戦うことを決めたから、私は今の世界のルールに従うのをやめにする。

 前は怖かった、でも今なら。


 守りたいと強く思う。怖さなんて乗り越えられるくらいに。


 私はもう、迷わない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。