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31 計画通り



 リディをまいたリアがこちらに来るのを見て、俺は手を振ってこちらの位置を知らせる。リアが校舎に入ってきたらすぐにわかるよう、一階の階段側で待機していた。逃げ足が遅いライには踊り場に待機してもらい、生徒会が来てもいつでも逃げられる準備をしていたが、リアの方が先に来たのでそのまま迎い入れる。


「よくまいたね、リディを。」

「ははっ・・・やっぱりリディはすごかったよ。」

 肩を落としたリアを見て、リボンがないことに気づいた。


「変わり身を使わないと、逃げられなかったんだね。」

「うん・・・ごめん、今まで以上に警戒されると思う。」

「いいよ。どんな手を使っても、リアには逃げて欲しいから。」

「そう言ってくれると、ありがたいよ。イリクも、ライも、会長たちも、全員で逃げ延びたいね。一人逃げ切ればいいけど、人数が少なくなればなるほど逃げにくくなるだろうし。」

「そうだね・・・とりあえず上の階に行こう。そろそろ生徒会も追いついてくるだろうし。」

「うん。」

 リアの手を取って、俺たちは階段を駆け上がる。ライもそれを見て階段を上がって2階で立ち止まった。


「どうする?もっと上がるか?」

「・・・3階まで行こう。」

「わかった。」

 ライが3階への階段を上がり始めて、俺たちもそれに続こうとしたとき、唐突に背後から声をかけられて、俺はやっと会えたなと声の方に顔を向ける。

 そこにいたのは、マリスイヤーだった。


「この校舎に生徒会が群がってると思ったら、あんたたちがいたのね。」

「マリスイヤー・・・まだ逃げきれていたんだ。」

「あたりまえよ!私の能力は鬼ごっこに向いている能力だし?それより、どうすんのよ。この校舎に生徒会全員入って来てるけど?」

 マリスイヤーの言葉に驚くことはない。なぜなら、生徒会に見つかっているのは知っているし、生徒会が全力で俺を捕まえたいのは理解できるからだ。


 本来、このようなマリスイヤーがいうような鬼ごっこは、俺のような能力は使い物にならないと考える。心を読める能力が鬼ごっこに使えるとは思えないからだ。

 だが、あちらには俺のことを理解しているリディがいた。俺に能力がなかったとしても、リディは俺を高く評価するはずなので、全力で捕まえに来るはずだ。


 もしかしたら、俺がいなくなれば、裏生徒会を次々と捕まえられると思っているかもしれない。実際はどうだろう。俺もこのイベントが始まる前まではそう思っていたが、意外と裏生徒会はうまく逃げられていると思うし、そう簡単に捕まえられるとは思わない。


 一番驚いたのは、会長たちが人体模型を使って罠を張ろうとしたことだ。ただ逃げるだけでなく、時間を稼ぐことも考えられるのなら、少しだけ裏生徒会も長くもつだろう。

 ほんの少しの差だが。


 もう、このイベントの流れは決まっているからな。

 リディがこのイベントに別のことを期待しているように、俺も別のことを期待している。


「なら、マリスイヤーがウチたちを運んでよ。」

「・・・やだ!別に意地悪じゃないよ。もう1日に運べる人数制限を超えたの。ジスターたちを逃がさなきゃいけなかったし・・・マイだけならいくらでも移動できるけど、他の人を連れては無理。」

 どうやら、マリスイヤーは一日に他人を運べる回数が決まっているようだ。しかし、本人が移動するのに制限がないのなら、問題がない。


「なら、囮になって欲しい。マリスイヤーが生徒会をひきつけているうちに、リアたちは他の校舎へ逃げるから。」

「ちょっとまって、何かおかしくない?」

「つーちゃん優しいっ!そうそう、女の子をおとりに使おうなんて、おかしいよイリコ。」

「そうじゃなくって・・・イリク、まさかあなたも囮になる気?」

「・・・」

 俺はリアに微笑みかける。リアの言う通り、俺はここでマリスイヤーと共に囮になるつもりだ。生徒会が今最も捕まえたいのは俺だ。なら、囮には俺が一番最適。


「元からそのつもりだったから。大丈夫、これも計画の内。」

「そんな・・・駄目だよ。まだあと何時間逃げ切らないといけないと思っているの!こんな序盤でイリクが抜けたら・・・」

「そうしたら、リアは逃げることだけを考えればいいよ。いや、もちろんその逆だって考えてもいいと思うけどね。だいたい、何時間も逃げきる方が無理って話。あっちは人数少ないけど逃げ隠れる必要ないし、休憩だって十分にとれる。それに、リディがいる。ルールに沿っていたら負けしかない。」

「それならどうするの?」

「だから、ウチは捕まる。きっとウチが捕まれば自体は大きく動く・・・いや、動かせる。」

 リアの頭をそっとなでて、俺はマリスイヤーに目を向ける。


「1階で、生徒会が来るのを隠れて待って欲しい。それで、わざと見つかるように動いて逃げて、女子トイレの個室に入って移動してくれるかな?」

「別に捕まりそうになったらテレポート使えばいいじゃん。そうすれば長く時間が稼げると思うけど?」

「それだと、確実にマリスイヤーが逃げきれない。・・・3秒あるからな。」

 マリスイヤーは移動するのに3秒かかる。その3秒で捕まる可能性があるのだ。


「確かに、腕を掴まれたりしていたらマイだけ出てレポートすることはできないし・・・わかった。でも、捕まりそうだったらすぐに移動するからね。」

「それでいいよ。」

「危険じゃないかな・・・ナリーがいたら、見つかった瞬間テレポートさせられるかもよ?」

「マリスイヤーなら、阻止できる可能性はあるし大丈夫でしょ。」

「あぁ、ナリーのテレポートならマイには効かないから安心して。それじゃ、マイは下に行くよ。」

「頼んだよ。リア、向こうの階段から下に降りて。様子をうかがいながらこの校舎を出るんだ。」

「・・・イリク、本当に捕まる気?」

「どうだろう。逃げ切れるなら逃げ切るけど・・・まぁ、無理かな。ウチはそばにいられないけど、リアは・・・リアの思うように行動したらいいよ。」

「・・・わかった。」

 リアのアメジストの瞳が揺れ動くのを見て、俺は笑みを深めた。

 あと少し。もう少しで、俺の見たい光景が見られる。


「またあとで、リア。」

「うん。」

「イリコ、俺もいるのだが?」

「・・・リアの盾になってね、ライ。」

「そこはよろしく頼むじゃないのか?」

 そんな風に頼むのは癪だったので、俺はライの肩を軽く叩いて階段を駆け上がった。




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