14 餃子
噂を流し終えて、今日は一緒にイリクの家で夕食をとることになった。私は一人暮らしをしているので、こうやって誘ってもらえるのはありがたい。イリクは両親と暮らしているが、帰りが遅く朝が早い仕事人間のため、イリクの両親にあったことがあるのは数えるほどだ。
今日も両親と会うことはなく、イリクの家で自分の家のようにくつろぐ。電源は入っていないが、早めに用意したこたつがあったのでその中に足を入れて机に突っ伏した。
「リアは昔からこたつが好きだよね。」
「うん・・・そして、よく寝る。気づいたらこたつから布団に寝かされていることが子供の頃よくあったよ。」
「知ってる。というか、何度かウチも運んだことあるし。」
そういって、私の背後にイリクは周って、膝立ちになった。シュルっと音がして、髪を束ねていたリボンが回収される。
そういえば、変装・・・というのは大げさだけど、噂を広める格好のままここに来たことを思い出した。
「リボン、今日は色が違うんだね。」
「え、よく気づいたね。」
「いつも紫だってことくらい知ってるよ。今日は何で赤?勝負の色なの?」
「・・・ウチの顔を見ればいいんじゃない?」
「何、目の色に合わせたの?イリクの瞳はルビーみたいで綺麗だよね。」
「なら、リアはアメジストだね。」
お腹のあたりの締め付けが無くなった。どうやら、巻き付けていたブレザーを回収されたようだ。てきぱきと私の変装を解いて、ブレザーのしわを伸ばしてハンガーにかけてくれる。
女子力が高い。
「イリクは、お嫁にでもいくつもり?」
「・・・あのなぁ、リア。まさか俺が本気で女子力を上げにいってると思っているわけじゃないよな?」
「違うの?」
「違うわっ!?」
「最近、マジでやってるのかと思った。」
「冗談かと思ったのに、冗談じゃなかったのかよ。」
ひくっと、顔が痙攣するイリク。この様子だと、本当に男の娘になる気はないようだ。もったいないなぁと呟けば、何が?と先ほどよりも怒りを抑えるように低い声で言われたので、話を変えることにした。
「紫と言えば、リディの色だよね。そっか、いつも一緒だよっていう意味が込められているんだね、うん。離れ離れになっても、友情で結ばれているみたいな!」
「・・・」
ドンと、机が揺れる。机に置かれたイリクの手・・・私の背後から机に手を置いているので、イリクとの距離がものすごく近い。
「・・・あの」
「リア、いい話題選びだったな。で?」
「・・・」
どういうこと!?さっきより声が低いし、何を怒っているの!?
「俺を怒らして、どうするつもりなんだ?ん?」
「ご、ごめん!ごめんってば、怒らないで!」
こたつの中に避難しようと思ったが、背中にイリクの体が当たって思うように動けない。しかも、腕を掴まれて逃げられないようにされてしまった。
「ん?」
「・・・お、怒らせるつもりはなかったよ。その、嫁のことは言い過ぎたというか、バカだったなと思うよ、ごめん。機嫌を損ねたのがわかったから、話題を変えようと思っただけで、怒らせるつもりはなかったの!」
「本当かどうか、確かめてもいいか?本当に俺を怒らせるつもりがないのなら、ちょっといじめるくらいで許す。」
「そこはいじめないで欲しいというより、今まさにいじめられているから!」
「え、どこが?」
「尋問を受けているところがだよ。」
「そんなことをした覚えはないな。ただ、聞いているだけだ。で?」
「・・・」
確かめていいのか?再度無言で聞いてくるイリク。これは昔から変わらない、イリクの悪癖と言っていいだろう。何か不安があると、すぐに能力を使って確かめたがる。そうしないと不安で仕方がない、そんな弱さがイリクにはあるのだ。
喧嘩をした後や、イリクと離れて別の友達と遊んだ時、男子と話した時とかすぐに確認したがるから、イリクとリディくらいしか男子の友達はいなかったな。あまり関わらないようにしていたが正しい。
たまに意味がよくわからないときにされるけど、今回もそうだなと思いながら了承した。
ここでだめだと突っぱねると、イリクが人間不信にでも陥ってしまうのではないかという不安があるからだ。
「いつでも読んでいいって、言ってるよね?イリクは、頭はいいし運動もできるし、かっこいいのに・・・なんで唐突にそんな不安そうな顔をするの?」
「それは、ここまで本音で言ってくれるのに、リアが友達だからだよ・・・鈍すぎ。」
「?」
「・・・・・・・ウチが悪かった。リアがどんな子かなんて、あきらめがついていたのにね。」
「機嫌が直ったのはいいけど、その言い方はひどすぎると思う。」
確かに、人様の家でだらしなくこたつに座って、身だしなみを整えられた私が言うことではないかもしれないが、諦めているなんてあんまりだ。そこは頑張って欲しい。イリクに。
「いや、そこは諦めるよ。大丈夫、リアには他にいいところがいっぱいあるから。そう、例えばかわいいところとか。」
「・・・褒められているのか、けなされているのかわからないけど、とりあえずありがとう。」
「うん。そうだ、夕食は何がいい?」
「・・・今日は、一緒に作ろうかな?せっかく仲直りしたし。」
「いいね。なら、餃子にしようか。皮あったし・・・具も何とかなると思う。どう?」
「任せて!」
「うん、包むのは任せた!」
いつものように役割を決めて、お互いに笑い合う。
悲しいかな、料理の才能がない私は、餃子を作るときは包む担当なのだ。タレすら満足に作れないので、包むだけしかやらない。でも、そのおかげで包むだけは一般のレベルまでできるようになった!ありがとう、根気強く一緒に餃子を作り続けてくれたイリク!




