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凡人は司書官を求む  作者: ナジャ
35/102

035 駆け引き


「何か、二人でお出かけなんて久しぶりね」


「仕事を始めると、家庭が犠牲になる。

 二兎追う者は一兎も得ず。

 悲しい話だよね」


「マスターはどっちを取るの?」


「それは受け取る側の許容範囲によるかな」


 馬の手綱を引きながら、背中越しに横座りに馬の背中に座っているティアの言葉に返しながら、レヴェルは難しい顔をする。


「自分じゃ、どっちも頑張っている。と思っても、相手の考え方次第では、頑張っていると受け取られるし、そうじゃないと受け取られる可能性もある。

 だから、受け取り方次第」


「何か答えをはぐらかされてる気がするわ」


「それも受け取り方次第」


「受け取る側に分かりやすくするのも、大事じゃないの?」


「いやはや、ごもっとも。さすがはティアだ。まったく持ってその通り」


 ゆっくりした足取りで馬を走らせながら、二人は取り留めの無い会話を続ける。


 最近では、ゆっくり二人の時間を取る事もできなかったので、久しぶりの穏やかな時間だ。


 資料室化しているレヴェルの元には、アリスとサウスマギア以外の者が頻繁に訪れる。


 兵の扱い方の相談から、戦略の相談、輜重隊の編成から進軍するルートの相談、女性ばかりの職場にやりぬくさを感じる愚痴など、レヴェルの元には同じチームの面々からの相談がひっきりなしになる。


 本来であるなら、誰かしら年長者が指導や教鞭をとるのだが、アリスの配下はほぼ十代であり、全員、若い。


 その中で老成して、情報を多く仕入れているレヴェルは相談相手にはうってつけであり、アリスがグラゾフに派遣される話が出てからは、その真剣さも増している。 


 レヴェルとしてもチームのメンバーの相手をしながら、アリスが出陣しやすいように精霊達と協力して動き、無事に出兵までこぎつけた。


 レヴェルが想定していたより、クスハの行動が早かったので慌てる事になったが、概ねは予定通りに事が運んだ。


 元々、アリスが出兵するのを渋っていたサラディーナを説得するための行動だ。


 サラディーナを、直接説得するのは難しい。


 そう考えたレヴェルは、アリスが戦場に向いやすい状況を作る事にした。


 そうなると、アリスをうまく扱える姉であるサラスかクスハを利用した方がいい。


 同じ姉でもイクスラでは、アリスと一緒になって暴れる可能性があるので、サラディーナが納得しないし、許さないだろう。


 その点、サラディーナからの信頼が厚い長女のサラスか、次女のクスハなら安心して送り出す気になる。


 しかし、サラスは現在アニアト王国を挟んで、コストア王国とにらみ合っている。


 内応などの切り崩しに精を出しているサラスの行動から考えれば、すぐに戦端を開くような事は無い。


 すぐにでも槍を振り回したいアリスからすれば、サラスの元に向っても、戦場にその身を躍らせる事はしばらくは無いだろう。


 だが、グラゾフの不満分子を一掃しようとしているクスハの元なら、すぐにでも暴れられる。


 風の精霊達を通じて、バエン王国の間接的な支配に不満を感じている反乱分子達の情報をクスハに流した。


 それから、アリスの手を借りさせようと工作を始めたところで、クスハ側から先にサラディーナにアリスに対する援軍要請が届き、さらに、そのバエン王国からの援軍が来ると言う情報をグラゾフ王国内に流布させられた。


 “先駆け飛龍”のアリスが軍を率いて来るとなれば、反乱分子達は、アリスの強さを恐れてその到着前に行動を起こす可能性が高くなる。


 クスハはアリスが来ると言う情報を先にばら撒く事で、反乱分子の行動を加速させ、現在の国王であるシルヴィアと結託して、王国内の風通しを良くしようと企んでいる。


 つまり、アリスは暴れたいところだが、クスハは妹が到着する前に、すべてを片付けてしまおうと考えているわけだ。


 妹をおとりに追いたて、準備のできないうちに反乱を蜂起させ、叩いてしまう。


 それが、クスハの計画になる。


 “強か狐”の異名どおり、本心を明かさず、自分の周りをうまく利用するクスハの性格が出た作戦だ。


 そのまま行けば、アリスは出陣損で、不機嫌になる事この上ないが、レヴェルはさらにクスハの計画を利用させてもらい、アリスには国境沿いまでは慌てずに進む事を奨めている。


 クスハ側はとりあえずは放置しているが、グラゾフとバエンの国境沿いにも不穏な動きがある。


 難民達の中には、没落させられた貴族や騎士達が紛れ込み、国境沿いの街を襲おうとしている計画がある。


 バエンとグラゾフの中継点である地域で蜂起すれば、グラゾフに残るバエン軍は浮き足立つし、通商を阻害する事もできる。


 レヴェルは、チーム・アリスの初陣の景気付けに、その元貴族達率いる反乱軍を叩き潰させ、その足でクスハと合流するように、リーヴェと打ち合わせている。 


 アリスは戦えられればそれでいいので、戦の大小は関係ない。


 小競り合いでも戦わせれば、アリスは満足する。


 それに、後ろで蜂起させ、相手の目を引こうとしている反乱者達をアリスが粉砕すれば、クスハ側の戦いも有利になるし、不満分子達の士気は著しく低下する。


 後はタイミングさえ間違わなければ、グラゾフの統治はよりスムーズに進行するだろう。


 おそらく、国境沿いの問題は、アリスに任せておけば勝手に解決してくれるだろうと言う、クスハの読みと信頼もある。


 だからこそのクスハの放置なのだろう。


 レヴェルとしては、どちらでも構わないし、アリスがとりあえず満足してくれればそれでいい。


 そんな全体の動きを見ながら計画を進められるのは、風の精霊達を利用できるレヴェルだからこそできる、裏技的な行動である。


「それで?戦場にも向わない私達はどこへ向っているの?」


 取り留めのない会話を続けながら馬を進めていたレヴェルに、ティアが背中越しに尋ねて来る。


 戦場に出られると喜び勇んで出て行ったアリス達を見送り、一人王都に残る事になったレヴェルは、今のうちにできる事をしておこうと行動を起こしている。


 アリスの側にはリーヴェ達がいるし、統率も武装の整っていない反乱軍などアリス達の敵ではない。


 レヴェルが、わざわざ一緒に行く必要はない。


 それに何より、レヴェルは事務方である。


 予算の計上や、後方から物資の補給など切らさないようにするのが仕事であり、わざわざ部隊に付き合う必要はない。


「シルフィールが言ってた、お勉強中の彼を誘おうと思ってね」


 アリスの下には、純粋な魔法使いがいない。


 サウスマギアやエマのように強力な魔法が使える者もいるが、二人は武官であり、指揮官でもある。


 それとは別に、やはり、専任の魔法使いはこれからの戦闘には必要になってくる。


 戦闘を望むアリスが戦いやすいように、物資、人材を用意する。


 それが自分の果たすべき役割だと、レヴェルは考えている。


「部下になった以上、仕事はしないとね」


 しばらくぶりの二人の時間に、ご機嫌な様子のティアに笑いながらレヴェルは、目的の方向に馬をゆっくり走らせた。

この小説は、サイコロを振ってストーリーを構成していますので、書いてる私もストーリーがどこへ転がっていくかわかりません。


一応、つじつまが合うように書いてはいますが、どこかで齟齬が出てくる可能性があります。


だんだんつじつまが合っているか心配になってきましたので、ここにご報告させていただきます。


ストラス君が、三回連続で完全失敗を出さなければ、もうちょっとストーリー的には楽なはずだったのですが。


こんな不規則ストーリーでよろしければ、お付き合いください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ストラス君の三回連続ファンブルとか笑うわそんなん
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