表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下から三番目の恋愛活動  作者: 兵衛 清彦
第一章「霜月沙織と野咲和」
41/50

42

食事を終えて、後片付けも済んだ四人は、食後のお茶を飲んでいた。

和が饅頭を食べながら話しを切り出した。

「でさぁ、春明の恋人探しはどんな感じなのかな?順調かな?」

春明と汐織は、一瞬びくっと体を跳ねあがらせたが、すぐに取り繕って、汐織が答えた。

「順調よ、春明も私が渡したノートをちゃんと読んできてくれるし。クラスメイトとの交流も前より自然にできてるみたいだし」

「なにより」と汐織が続けて、

「和ちゃんと檸檬ちゃんのおかげよ」と嬉しそうに言った。

 和が照れながら答える。

「いやぁ、和なんて何にもしてないよぉ。春明くんの努力だよ」

春明は頬を赤くして、ぽりぽりと頭を掻いている。

そんな三人の様子を檸檬は、きょとんとした表情で聞いていた。

和はそんな檸檬の様子に気が付いた。

「そっか、檸檬ちゃん、春明くんの恋人探しの事知らないんだねぇ」

檸檬は興味津々といったふうに瞳を輝かせながら、こくこくと頷いた。

「…知らない、気になる」

檸檬は春明の方に身を乗り出す。

春明と汐織は顔を見合わせて頷き合った。

「実はね…」と春明が説明を始めた。

大学進学の協力の為に叔父が出した条件、つまり恋人をつくらなくてはいけないこと、春明が自分を社交的に変えたいということ、それらを春明は一通り説明した。

檸檬は、春明の話を爛々とした瞳のまま聞いていた。

春明の話が終わると檸檬は頬を上げて、

「…ちょっと失礼かもしれないけど…面白い」

和が笑いながら話に入る。

「でしょぉ、滅多にないよ、こんなシチュエーション」

汐織もくすくすと笑っている。

「皆、ひどいなぁ。僕にとっては笑いごとじゃないよ」

春明は頭を掻きながら困ったように笑った。

「…笑いごとじゃ…ないぞ」と和が檸檬の真似をした。

四人はどっと声を上げて笑った。

――恋人さがし…か。

春明はそう心の中で呟くと、笑い合っている三人の女子を眺めた。


「もうこんな時間!」

和が時計を見上げながらそう叫んだ。

ぐだぐだ世間話をしながらTVを見ていた他の三人も時計を見る。

「お風呂の準備しなくちゃ」

和はどたどたと風呂場へと駆けていく。

汐織は驚いた顔で話し始める。

「お風呂に入るの?春明もいるのに?」

汐織がぎゃあぎゃあと叫ぶ。

「こいつの後に湯船に浸かるなんて嫌だし、私たちが入った後の湯船にこいつが入るのも嫌!」

話し合いの結果、春明は一番最後にシャワーだけ浴びることになった。


しばらくして風呂場からアラームが聞こえる。湯船にお湯が満ちた。

和が汐織と檸檬の裾を引っ張って言う。

「ね、ね。三人で入ろうよ。多分、三人ならぎりぎり湯船に入れるよっ」

汐織は戸惑って和に答える。

「ごめん、今日はゆっくり一人で入りたいかな」

和はしゅんとして、項垂れた。

そんな和の様子を見て汐織は慌てて答える。

「ご、ごめんね、また今度一緒に入るからね、絶対だから」

和はぱぁっと顔を明るくして頷いた。

「絶対だよ、約束だよ」

そう言うと檸檬を、風呂場へと引っ張っていった。


 風呂場から和のはしゃぐ声が聞こえる。

 春明はそわそわして落ち着きがなく、和の芸術関係の雑誌を開いては閉じている。

 そんな春明の様子を汐織は、じっとりとした目線で見ている。

 汐織が沈黙を破った。

「…キモイ」と一言、言い捨てた。

春明が驚いた表情で振りむいて答える。

「しょうがないだろ、女子の家に泊まるなんて初めてだし…」

汐織はじっとりとした目線を春明に注ぐのをやめない。

「それじゃあ、恋人なんていつになっても出来ないわよ。堂々としていなさいよ」

「わ、わかったよ」

春明は座りなおすと、腕を組んでじっとする。

「それにしても」と汐織が話を切り出す。

「あなたも大分成長したわよね、堂島さんにも積極的に話しかけれるようになったし」

「ああ、そうだな、汐織のおかげだよ」

「と、当然よね。私がつくったノートを読んだんだから」

汐織は照れながら答えた。

「そうだな。あれを読んだら、恥ずかしいって気持ちも大分無くなってきたよ」

「あとは、あなた次第よね。もう一人でも友達もつくれるでしょうし…」

汐織は少し暗い表情になった。

「もう、私の協力もいらないかしら…」

春明が真面目な表情になってそれに答える。

「いや、そんなことない。まだ告白っていう大仕事が残っているし、二人の方が、一人でやる心強いし…」

「それに」と頭をぽりぽりと掻いて、続ける。

「俺たち、友達だろ。俺はそう思ってる」

汐織は春明の言葉を聞くと、耳まで赤くして慌てふためく。

「な、なに改まって言ってるのよ。馬鹿じゃないの」

春明はむっと表情をしかめる。

「な、なんでだよ。別に変な事言ってないだろ」

汐織はこほんと咳払いをしてから、落ち着きを取り戻す。

「ま、これからも協力してあげるわ。感謝しなさい」

汐織は揚々として春明に言った。

――まだ試したいことが沢山あるからね…。

汐織は心の中で呟いて、にやにやとしている。。

「あ、ありがとう」

春明は、くつくつと笑っている汐織を怪訝そうに見ながら答えた。

ふと風呂場の方からどたどたと足音が響いてくる。

寝巻姿の和と檸檬が、体から湯気を上げてリビングに来る。

春明は寝巻姿の二人を見上げる。

和はいかに女の子らしい、ふりふりとした寝巻だった。

檸檬は、スウェットのズボンに、上は白いTシャツだった。

湯上りの濡れた髪の毛と、シャンプーの香りが春明をどきどきとさせた。

和が体をくるりと回して、春明に見せつける。

「どうかな、春明くん?似合ってるかな」

「あぁ、とても似合ってるよ」

「あは、嬉しいなぁ」と春明に抱き着く。

春明の顔の下に和の頭がくる

シャンプーの香りが春明の鼻腔に満ちる。

湯上りの火照った体が春明にくっつく。

春明はどぎまぎとなって、手のやり場に困る。

和は春明からぱっと離れると、汐織の方へ駆けて行った。

「汐織ちゃん、次どうぞ」

「ええ、それじゃ、入らせてもらわね」

汐織はすたすたと風呂場へ向かった。


春明がシャワーを浴び終わった頃には、夜も大分深まっていた。

リビングでは女子三人が談笑していた。

三人は春木に気が付いて、一斉に振り向く。

「あ、春明くん上がったんだね」

和が見上げながら言った。

「皆で何を話してたの?」

三人はにやにやとした顔を見合わせてから、

「秘密」と声を重ねて言った。

「えぇなんでだよぉ」

と春明は苦笑いしながら言った。

和が目をこすりながら、欠伸をした。つられて汐織と檸檬も欠伸をする。

「…和ね、もう眠くなっちゃったの」

「そっかじゃあもう寝ようか」

「そうね、私も眠くなってきたわ」

檸檬も、まどろんだ瞳でこくこくと頷く。

「残念だけど春明くんは別の部屋で寝てね」

そう言って和は、春明を引っ張って別の部屋に連れていく。

引っ張らながら春明は汐織と檸檬に手を振りながら、

「汐織、堂島さん、おやすみ」

「…おやすみ」と檸檬は手を振り替えた。

汐織は軽く手を上げて答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ