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天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
88/1838

繋ぐ信用……。

 オーガ三十一体。素材となる角は、三十一本きっかり、換金され、大金貨三十一枚で、手渡される。

 白金貨でも良かったんだが、大きな買い物をしない限り、使い勝手が悪い。

 何より、十二そこらのガキが、そんな大金をチラつかせているのは、治安上、余りよろしくない。

 大金貨を持っているだけでも、人目を引いてしまう処なのだが……。

 まあ、今の俺達なら、大抵の奴なら返り討ちにするのだが……。

 喧嘩をしに来た訳では無い。

 しばらくは、配達系の仕事をこなし、街に馴染む事が重要だ。

 いらん騒動は、御免願いたい。

 まあ、ギルドに入って、開口一番、馬鹿どもを、ぼこしたんだがな……。

 今となっては、良い思い出だ。

 昨日の事だって?

 過去は過去!

 俺は、明日を夢見る少年さ!

 さて、今日はと言うと……。

 昨日、入場の際貰った書類一式。

 入場料=税金の納税証明書

 犯罪履歴の書かれた書類を持って、お役所通い。

 犯罪履歴の確認の際、種族確認が自動で行われたのだが、神人の卵である俺は、肝を冷やしたっけ……。

 不安に駆られながら書類を見ると、種族の欄は、ハイヒューマンと記載されており、胸を撫で下ろしたのは良い思い出だ。

 けどその後マルスに、ハイヒューマンとは、あまり居ない種族だと聞き、余り大ぴらに言わない方が良いと釘を刺され、苦笑した。

 まあ、どうでもいいけど……。

 ほとんど、マルスが手を回していてくれて、役所では騒動も無く、無事、住民登録は済ます事が出来た。

 マルスさん、マジ感謝。

 マルスの言う通り、役所で、マルスの名前を出しただけで、個室に通され、丁寧に対応してもらえた。

 マルスって、何者!?

 サクヤの方の書類は、シャルが手伝って書き、サクヤは、自分も字が書けるようになりたいと口を尖らせ、言ってたっけ……。

 役所の人は、優しく微笑みながら、一月後には学校に行けるから、一生懸命、勉強してくださいと、なだめてくれた。

 何で一月後かって?

 書類の申請から受理されるまで、一月掛かるらしい。

 それまで、仮の住民票。と言っても、これも、手首に紋様が記されるんだが、仮は線一本。晴れて住民となると、線が二本、浮かび上がる様になる。

 体に、刺青を入れる様で、抵抗があるが、魔術的なモノらしいので、住民で無くなると、無くなってしまうらしい。

 何にしても、晴れて、スターリーの住民に成れた。

 俺は晴れやかな気持ちで、空を見上げる。

「今日も、晴天。事も無し」

「ジャショウ、これからどうするん?」

「ん?キリカがお世話になっている、商店の方の依頼をこなす」

「そうね。私も案内するって言ったけど、この街の事、本当はあまり知らないし……」

「シャル姉はこの街に来て、どれくらい経つん?」

「そうねえ。十日ぐらいかしら」

「じゃあ、一緒に探検するんよ♪」

 シャルとサクヤは、楽しそうに笑い、俺の手を引く。

「けど、その前に……」

 俺は、急かす二人をなだめ、その場で立ち止まる。

 さっきから、良い匂いがする。

 辺りは露店が立ち並び、物珍しい物が売っている。

「何か、食べないか?」

 俺は、小腹の空いた腹を摩り、露店を見回す。

 それにつられて二人も、辺りを見回した。

「あっちなん!」

 サクヤが、繋いだ手を引っ張る。

「サクヤちゃん、何か見つけたの?」

「良い匂いがするん!」

 急かすサクヤに促され、歩き出す。

 確かに、良い匂いがする!

「へい、らっしゃい!」

 ガタイの良い、おっちゃんだ。

 満面の笑みで、笑いかけてくる。

「ビックボアなん!」

「お!お嬢ちゃん、ビックボア知っているのかい?」

「ジャショウが、倒して食べたんよ!」

「ほう。その兄ちゃんは、強いんだな!」

「うん!強いんよ♪ね。ジャショウ!」

「ははは……」

 俺は、頭を掻き、軽く会釈する。

「兄ちゃんが、ジャショウかい?また、随分小さななりで……」

「ジャショウは、強いんよ!」

 信じてもらえなかったと思い、サクヤが頬を膨らませる。

「がははは!別に疑っちゃいないよ、お嬢ちゃん!こう見えて、俺も元冒険者だ!お前たちの力量も分かる!」

 暑苦しい人だが、悪い人じゃ無さそうだ。

 力量が分かるってのも、あながち嘘では無い。

 俺達が近づいて来た時、この人、俺に錬気を絡めて来た……。

 まあ、打ち消してやったが……。

「おっちゃんは、誰かれ構わず、錬気を絡めるのが趣味なのかい?」

 俺は、意地悪く笑う。

「がはは!それにも気づいたか!何、お前さんの錬気、余りに異質だったからな!すまん、すまん!」

 錬気が、抑えられる様になっても、質まで隠せないか……。

 俺は、苦笑交じりに、ため息をつく。

「な~に、坊主!何事も経験だ。ここいらの屋台の奴はみんな、元冒険者だ。坊主が来て、目を光らせているぞ?」

 みんな……?

 さっきから、視線を感じていたのは、そう言う事か……。

 俺は、辺りを見回す。

 それに気付いた屋台の人々は、気さくに笑いかけてくる。

 恐れては、いない?

「嬢ちゃん達は、冒険者か?」

「そうなんよ♪」

「そうかそうか!お前達は、大成するぞ!俺が保障する!」

 おっさんは胸を叩き、豪快に笑った。

「とっても、良い匂いがするんよ♪」

「そうだろう、そうだろう。我が家自慢の、特製のタレだ!食ってくかい?」

「あ、ああ。俺は一本……」

「私も食べたいけど……」

「シャル姉は、アタイと一緒に食べるんよ♪」

「ええ、そうね♪」

「それじゃあ、二本良いかな?」

「おう!任せとけ!一番うまい処を食わせてやる!」

 串焼きが焼かれ、香ばしい匂いが立ち込める。

 黒みがかった秘伝のタレ……。

 俺、これ知ってる!

 醤油だ!

 異世界転生のススメに出てきたやつ!

 甘辛醤油って言うやつだ!

 焼いて、タレを漬けてを繰り返す。

 サクヤは、待てないと言わんばかりに、背伸びをしながら、それを見詰めている。

「ほれ!嬢ちゃん、もうすぐだ」

 二本の串焼きに、タレを染み込ませ、サクヤにやさしく手渡してくれる。

「えっと、おだいは……」

「一本三百エル、おまけして、二本で五百エルだ!」

「そんな!申し訳ないですよ!」

 シャルが、慌てて首を振る。

 そんなシャルを見て、おっさんは、豪快に笑う。

「気にすんなって!未来の英雄さん!処で、これからどうするんだい?」

「えっと、商店街の方に顔を出して、配達の依頼をこなすつもりです」

「商店街?」

「は、はい!確か、エネス商店街って……」

「お前さん達、何処の冒険者だい?」

「子羊の嘶き亭の……」

「!?キリカちゃんの処か!」

「は、はい!」

「そうか、そうか……」

「あ、あのう……」

「おだいは、いらねえ!」

 俺が、差し出そうとした小銀貨を、おっさんは、突っぱねる。

 何か、まずい事でもあったのか?

 シャルは、不安そうな顔をする。

「キリカ姉ちゃんは、良い人なんよ!」

 見かねたサクヤが、抗議する。

 俺も、家のギルドを馬鹿にするなら……。

「おうともよ!禄で無しの冒険者にキリカちゃん泣かされて……。おめえさん達は、キリカちゃんに変わって、仕事をこなすのかい?」

「ああ。ギルマスは、どっしり構えないとな」

「ジャショウ言ったんよ!街の人と仲良くなるんだ!って。だから、キリカ姉ちゃんの代わりに、配達の仕事をするんよ!」

「そうです!キリカちゃんの守った信用。私達が繋ぐんです!」

 にじり寄る俺達を前に、おっさんは、腕組みをして唸る。

 そして、

「聞いたかい?野郎ども!こいつらは、キリカちゃんを守るんだと!あのギルドを守って、俺達と仲良くなりたいんだとよ!」

 露店から、一人、また一人と、俺達の方に歩み寄る。

「嬢ちゃん。これもってけ!」

「売れ残りだが、家のポーション持っていけ」

「良いか?変な商人に捕まるな。品質を見るのは……」

 次々に、品物を手渡され、中には、仕事や、商品の見定めるコツを教えてくれる人もいる。

 俺達は、ただただ、驚くばかりで、頷き、両手いっぱいの品物に驚くばかりだ。

 おっさんは、大口で笑い、俺の背を叩く。

「これが、キリカちゃんの繋いできた信用だ!しっかり、繋いでいけよ!」

 俺達の驚きは、笑顔に変わり、みんなにお礼を言う。

 サクヤは、はしゃぎ、みんなに可愛がられ、ご満悦の様だ。

 シャルは……。

 目に涙を浮かべ、それを、露店の人達に拭ってもらっている。

 優しさ……。

 ああ、この街に来てよかった……。

 キリカの守る、ギルドに入れて良かった。

 俺達は、冒険者になれたんだ……。


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