ギルドと言う名の家族
「配達の仕事、いっぱいなんよ♪」
「あっ!これも!」
掲示板を見上げて、早、三十分。
思いのほか、依頼は多い。
しかし、護衛任務や討伐依頼は……。
まあ、討伐に関しては、国からの依頼なので、紙面には乗っていない様だ。
妖魔は、数に規定は無く、倒しただけ報酬が払われる。
厄介なのは、山賊退治。
やみくもに、倒せばよいと言う訳ではない。
賞金の掛かったもの。
特別依頼の受けたモノが、主だ。
まあ、安易に人を殺すなと言う事か。
襲われれば、返り討ちはOK。
妖魔と違い、線引きが難しい処だ。
時には、同じ冒険者が牙を剥く事もある。
極めて、グレー……。
入城検査の時の様な、犯罪履歴の確認は、そう何度も行うモノでは無いらしい。
外での仕事の多い冒険者が、入城の度に行っていたら、膨大な労力がかかる。
大体の冒険者が、住民登録をし、登録された者は、次回から入場は、住民確認だけで終わるシステムだ。
で、このギルドにある依頼は……。
殆んどが、雑用……。
護衛は皆無。
盗賊討伐などもっての外。
ただ端の方に、賞金首の似顔絵が張られているぐらい……。
特殊依頼。大型妖魔の討伐依頼が、黄ばみがかった紙でさらされているばかりだ。
「ただいま~」
扉が開く。
キリカとギルム、両手いっぱいの荷物を抱え、帰って来た様だ。
「おかえり」
「えへへ……。収入が入ったので、奮発しちゃいました♪」
「やれやれ……。年寄りをこき使う……」
それにしても、随分な量だ……。
「こんなに買って……」
「つけも払ってもらいましたから……。全部じゃないですけど……」
「それにしても、沢山の量ね」
「家に冒険者が入ったって聞いたら、街の皆さんがお祝いって……」
「うむ。キリカは、よう、配達の仕事をしておったからのう……」
照れ臭そうに笑うキリカ。
「知っているんよ♪冒険者の信用って言うやつなんよね?」
「うむ?」
「ジャショウ言っていたんよ。小さな仕事でも一生懸命やれば、信用がもらえるって♪」
満面の笑みをたたえるサクヤを、ギルムは、好々爺の様に笑い、優しく撫でる。
「その通りじゃ!どんな仕事も一生懸命やるんじゃぞ」
「うん。今日は、配達をやるんよ♪それで、街の人達と、いっぱい仲良くなるんよ♪」
「そうか、そうか」
何と言うか、ギルドって言うか、家族だな、これは……。
しかし、今度はキリカが、オロオロとする。
「えっ!?そんな……。シャルちゃん達にそんな事……」
「配達だって、大事な仕事だぞ?」
「ですが……。ジャショウさん達だったら、森に行けば、十分稼げるじゃないですか!」
「ん~~~。じゃあ、この仕事は?」
「それなら、私が……」
「その間、ギルドは……?」
「閉めて……」
「あかんよ!キリカは、ギルドを守るんよ!」
「そうね。自分の仕事をまっとうしないと」
「ですが……」
「ん~~。稼いでもらいたいの?」
「そ、それは……」
「ギルド再興の近道かも知れないけど、今まで、キリカがやって来た事は、大切な事だと思うぞ?」
俯くキリカ。
「大丈夫!配達の仕事も、妖魔退治も、両方やって見せるさ!」
「ち、違うんです……。ただ、みんなに迷惑かけたく……」
「迷惑だななんて、思わないんよ♪」
「そうよ!キリカちゃんの様にうまくできないかもしれないけど、しっかりこなして見せるわ」
「難しく考えるなよ。俺達は仲間だ。助け合って頑張っていこうや」
見上げるキリカを、笑顔で迎える。
「それに配達の仕事と言ったって、奥が深いと思うぞ?街を知って、人を知る。ちょっと見ただけでも、街の広範囲に分布している。だから、足腰の修行にもなる!」
「よう言った!近頃の若造は、すぐ楽な方に逃げるが、それこそ、冒険者の神髄じゃ。地理を知って、人に学ぶ。何より、冒険稼業は、体が丈夫でなくちゃならん!」
ギルムは手を叩き、大きく頷く。
「して、ジャショウ。お主、錬気の重りを付けておるな?」
ギルムは、にやりと笑い、俺の腕をもむ。
やっぱ、こいつ、ただ者じゃ無い……。
重りを付けているとはいえ、不自然な動きはしていなかったはずだ……。
ぱっと見で、それに気付く奴は少ない。
気付くとしたら、錬気の流れが見える奴ぐらいだ……。
それも見れたところで、まさか、体を酷使しているとは思うまい。
「爺さん……」
「何……。儂も昔、ようやっておったからのう」
ギルムも昔やっていた?
俺、オリジナルだと思ってたんだがな……。
「溢れ出す錬気。隠しきれておらんしのう」
「!?」
「お主は、物事を、直進的に考えすぎておる。もっとうまく、立ち回る術を学べ」
直線的?
俺は、頭を捻り、その場で考え込む。
「主の課題じゃな。時に、重しはいくらじゃ?」
次から次へと……。
答えぐらい教えてくれても良いのに……。
「四肢300k、胴体に600……」
「倍にせい!主の動きは、自然すぎる!酷使してこその修行じゃ!」
こいつ……。
でもまあ、言わんとする事は分かる。
実際、俺も、思案していた処だしな……。
しかし、倍か……。
いきなり、ハードルを上げてくる。
苦笑と同時に、高揚感を覚える。
俺って、ちょっと、Mが入っている処があるしな……。
シャルとサクヤが居る手前、ブレーキをかけていたが、ギリギリに憧れる。
ゆっくり、重しを重くしてゆく。
体が、軋む……。
良いねぇ……。
心地よい、汗が滲み出て来る。
後は、錬気のコントロールか……。




