今更、略奪品のチェック!
「こほん……。話が脱線してしまったが、今日はどうしようか?」
「そ、そうね。どうしましょうか?」
俺とシャルは、若干、さっきの余韻で、赤面しつつも、話を切り替える。
恥ずかしくはあったが、何だかシャルとの距離が縮んだ様な気がする。
いや。縮んだ!
はたから見たら、初々しいカップルの様に見えただろう。
だが、当の本人達からすると、至極まじめな事だ。
これからやって行く上で、互いの心の距離は、縮めておいた方が良い。
まあ、シャルの敬語口調は、元からの様だし、気にする処では無いが……。
「ジャショウ?」
シャルが、不安そうに俺の顔を覗き込む。
「あ、ああ」
いかん、いかん。
また、自分の世界に入り込んでいた。
「で、サクヤやシャル姉は、狩りがしたいんだよね?」
『もちろんなんよ♪』
「そうね。命を奪う行為は、気が引けるけど、冒険者として、妖魔を倒すのは、必要な事だから……」
「で、本音は?」
「魔法が試したいわ♪」
良い、返事で……。
ん~~~~。
笑顔を入れて、百点満点!
士気も上々。
能力的にも、申し分ない。
まあ、手始めに、ゴブリンを狩るか……。
「よし。じゃあ、ゴブリン狩りで」
『それが、良いんよ♪』
「ええ♪」
満場一致と言った処か。
二人が、俺の肩に乗る。
早く行こうと急かす様に、頬を叩く。
「の、前に……」
まあ、サッサと行っても良いんだが……。
「荷物整理をします」
俺は、おもむろに、腰につるした袋に手をやった。
さすがに、このまま行くのもかっこが付かない。
いい加減、荷物整理が必要だ。
とは言っても、ゴブリンからせ占めた金の整理なんだが……。
『ジャショウ。まだやっていなかったん?』
「う、うむ……。面倒くさくって……」
俺は、五十六個の麻袋を、一つ一つ、腰から外し、ため息をつく。
中に入っている硬貨の数は、手探りで見ても、数枚だけ……。
これを一々、一つづつ確認するのって、面倒くさくね?
『アタイ達も手伝うから、ぱっぱとやるんよ』
「そうね。私達も手伝うから、早く終わらせましょう」
俺の肩から飛び降り、袋に手をかける二人。
何と心強い。
あ~。あれだ。
夏休みの宿題、最後までとっておいて、始業式前日に、姉達に助けられる図……。
夏休みって何?
ま、まあ良い……。
それだけ二人が、心強いと言う事だ。
さっさと終わらそう……。
俺も二人に感謝しつつ、袋に手を伸ばすのだった。
「これで全部か……」
五十六個の袋に入っていたのは、百六十三個の硬貨。
その打ち分けは……。
金貨 三十六枚
銀貨 四十三枚
小銀貨 五十一枚
銅貨 三十三枚
以上、四十一万八千五百三十エル……。
シャル曰く、一月以上、生活する事が出るそうだ……。
「サクヤちゃん達、一体どれだけのゴブリンを狩ったんですか?」
「ん~~。五十八体?」
「五十八体って……。どれだけこの森を彷徨っていたんですか?!」
目を丸くし、興奮気味に捲し立てるシャル。
サクヤは、首を傾げ、シャルを見る。
「何日って……。四日目?」
「~~~~~」
『シャル姉、落ち着くんよ。ジャショウと一緒に戦ったのは、二回だけなんよ』
「二回って……」
「集落潰した」
俺は、さらっとそう答え、硬貨ごとに分けた山を、袋ごとに詰めていく。
そんなに驚く事なのだろうか?
正直、今のシャルなら、単独で壊滅できるはずだ。
サクヤも、自らの力量を知ってからも、慢心すること無く、着実に力を付けている。
まあ、四日目なんだが……。
「集落を落とすって……。中堅冒険者が、六人がかりでやるような事ですよ!?」
「ん~~~。メイジ系のゴブリンおらんかったし……。まあ居ても、問題無いが……」
『シャル姉も、出来るんよ♪』
「そんな!私、魔法が使えて間もないですし」
「ん~~~。俺達、魔力量半端ないし……。シャル姉だって、その魔力量なら、ごり押しで行けると思うぞ?」
まあ、確かに、ゴブリン個体は強く無いが、集団で来られたら、初心者冒険者にとって脅威かもな……。
肉弾戦のアタッカーは、一体多数の戦闘は、不慣れだろうし、ナビ子の言う様に、一般の人間の魔力量が、MP300と言った処だから、魔法を撃てて、十数発。難しいのかもしれない……。
それに対して、サクヤとシャルは、1000を、遥かに超えてるんだが……。
パワープレイも、余裕でしょう?
「まあ、初陣だし、自分を過小評価するのは分かるけど、冷静に判断しなけりゃならんよ?」
「で、ですが……」
「ついでに言うと、今回の戦い、サクヤとシャル姉だけでやってもらうつもりだぞ?」
『任せるんよ♪まとめて、倒してやるんよ』
「サクヤ。慢心はダメだぞ?」
『うん♪その代わり、前みたいに、名乗りはやらないんよ?』
サクヤ……。
俺の黒歴史を、穿り返さないでくれ……。
「正面から行ったんですか!?」
「ま、まあ……」
『やあやあ我こそはって、ジャショウ言ったんよ♪』
お願い……。
モウヤメテクダサイ。
「わ、私は……。出来るのでしょうか?」
俯くシャル。
まあ初陣で、緊張するのは分かるが……。
「出来るかじゃなくて、どうしたら出来るかって、考えなくちゃな」
俺は。シャルを優しく撫で、ウインクをして見せる。
我ながら、きざっぽい……。
ま、まあ、及び腰になられても困るし……。
「大丈夫。危なくなったら、助けるよ。それとも、弟の事が信じられない?」
俺は、お道化て見せ、サクヤは、シャルの手を取って勇気づける。
そんな俺達に、シャルは笑って頷いた。




