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天翔雲流  作者: NOISE
プロローグ
2/1759

帰るべき場所は何処に……?

 俺には、親が居ない……。

 されど、親父とも呼べる者が三人。

 一人は、水無月家当主、水無月勝家。

 一人は、我が師、玄海。

 一人は、水無月家宰相、原田源三郎。

 されど、お館様と我が師、玄海様は死んだ……。

 お館様は、民達を守る為、自らの首を差し出し……。

 我が師は……。

 復讐に燃える俺に代わり、その命を散らした……。

 全ては、俺の咎だ。

 ああ、源三郎様、貴方だけは……。



 全身に、激痛が走る……。

 俺は……。

 右手は動く。

 左手も……。

 両の足も動く。

 ゆっくりと目を開く。

 ここは……?

 薄暗い世界。

 夜だろうか?

 雲一つない空。

 されど、星も、月も見当たらない。

 俺は、一体、何処に居るんだ?

 源三郎様は……?

 武田の、悪鬼共は?

 俺が殺めた、無数の屍も見当たらない……。

 何処までも続く、荒野。

 俺は、死んだのか……?

 まさか、死した後も、痛みに苦しめられるとはな……。

 しかし、喉が、焼けるように痛い。

 ああ、帰らなくちゃ……。

 死した後も、望郷の念に駆られ……。

 差し詰め、俺は、悪鬼と言う奴だな。

 おぼつかない足取りで、俺は、歩き出す。

 何処へ向かえば良い?

 何も分からぬまま、俺は歩き出す。

 帰るべき場所など、とうに無いと言うのに。

 それでも、帰らなくては……。

 お館様の下に。

 俺の、帰るべき鞘に。

 痛みで、意識が遠のいていく。

パチ、パチ……。

 不意に、遥か遠方から、何かを弾く音が聞こえてくる。

 何だ……?

 この、無音の世界で……。

 この、何も無い場所で……?

 光……?

 眩い、温かな光。

 何故、今まで気が付かなかった?

 俺は、藁にでもすがる思いで、光に向かって歩き出す。

 大樹が見える。

 それに、人影?

 声の出ない喉で、必死に叫ぶ。

 帰らなくては……。

 あの、温かな、水無月の地へ……。


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