戦場の羅刹
「おお!帰ったか?」
師匠が、出迎えてくれた。
横にはキリカとシルフィーが……。
俺達の顔を見るや、駆け寄って来た。
俺は、手を振り、大きく頷く。
「ジャショウ。そ奴は?」
「俺達の家族だ!」
「う~む……」
「あの、あの……」
キリカは、しどろもどろになる。
俺は、キリカを指さし、
「俺達のギルマスだ!」
「ほう……。このお嬢ちゃんが……」
へベムが、目を細める。
「取り合えず、中に入りなさい!」
シルフィーに促され、一同、ギルドへ……。
「戦場の羅刹か……」
「師匠知ってるの?」
目を細め、ベヘムを見る師匠を見る。
しかし、戦場の羅刹って……。
中二キタ~~~~!
何それ?カッコイイ!!
俺なんて、強欲勇者よ!?
強欲!
俺が、憧れの眼差しで見ていると、
「拳聖ギルム殿のお弟子さんでしたか……。通りで……」
「派手にやりおったか?」
「ええ、完膚無きまでに……。最早、歯向かう者はいますまい」
「そうか!わははは……」
師匠が、膝を叩いて笑う。
やれって言ったのは、あんたでしょうが。
俺も、苦笑する……。
周りでは、商店街の人達が、俺の大立ち回りを魚に、飲み始めている。
「で、師匠……。ベヘムさんって……」
「うむ……。戦場の羅刹。その異名通り、自らの大きさ程あるアックスを、手足の様に振るい、戦場を荒らした豪傑じゃ!」
「最早、昔の事です……」
ベヘムが、照れ臭そうに笑う。
「しかものう。戦場での乱取りを嫌い、度々、ギルドの命を無視し、民を助けておった」
やはり、俺の目に、狂いは無かった!
この人は高潔……。
俺の知る騎士達と同じ……。
「しかし、前の戦で、たった四人で、敵の暴から村を守り、傷ついたと聞いたが……」
師匠の言葉に、ベヘムは静かに笑う。
その目……。その左足……。
俺だけじゃ無い。シャル達も、悲しそうな目で見る。
「情けない話じゃ……。ギルドの命を無視し、勇んで戦ったが、この通り……。しかしのう。村の人達を守れた!悔いはない!」
「あ、あの……」
「ギルドマスターか……。すまぬのう。折角、ジャショウ殿が拾ってくれたと言うのに、何の役にも立てん!悔いが有るとすれば、その事か……」
寂しそうに笑うベヘム……。
共に来た三人も、泣いている……。
「あのっ!武器が持て無くったって、街の皆の助けが出来ると思います!」
キリカの真剣な目……。
ベヘムの目には、どう映っているのだろうか……?
ベヘムは目を見開き、キリカを見詰める。
そして、豪快に笑う。
「この様な老いぼれを、使ってくれるのか?」
「は、はい!約束を、守ってくれるのであれば……」
「そうか、そうか!ジャショウ殿も、その様な事を言っておったな!して、それは?」
キリカは、大きく深呼吸をして、
「一つ、依頼者、街の人を大切にする!二つ、命を大切にする事!三つ、ギルドの仲間を、家族と思う事!あ、あの、あの……」
精一杯、声を張り上げ、キリカが叫ぶ。
周りのみんなが、キリカを見て、歓声を上げる。
ベヘムは、目を見開き、
「ク、ハハハ……!何と難題で、高潔な誓いか!お前達!」
「はい!ベヘムさん!」
ベヘムな掛け声に、後ろに控えていた三人が、前に出る。
「この誓い、守れるか?」
「ベヘムさんと一緒なら……!」
「ならば、ギルドマスター!」
「あ、あの、キリカで良いです!」
「うむ!キリカ……。この様なおんぼろであるが、お主達の家族にしてもらえるか?」
「は、はい!」
歓声が上がる!
皆が、ベヘム達を称え、乾杯の音頭が上がる。
ベヘム達は、辺りを見渡し、
「なんと、暖かなギルドじゃ!」
「はい!ベヘムさん!」
「家族か……。良い響きだ……」
「儂らも再出発じゃ!」
やっぱ、良い人達だ!
この人達なら、街の人達とも、うまくやっていける!
俺は頷き、シャルとサクヤを見る。
二人も大きく頷く。
そして、
「ちょっと待った!」
乾杯しようとするベヘムを止める。
「俺達は、あんた達の先輩だ!」
満面の笑みの俺達を、ベヘムは、不思議そうに見る。
「そうじゃな?」
「だから、俺達は、後輩のあんた達の、新しい門出の祝いを与える!」
何を言っているのか分からず、ベヘム達は、首を傾げる。
そんなベヘムを取り囲み、
「シャル姉とサクヤは、左足な!」
「ジャショウは、右目なんよ♪」
「ついでに、調子の悪い処はみんな、治しちゃいましょう♪」
俺の錬気が……。
シャル達の癒しの魔法が、ベヘムを包む。
ギルドが、暖かな光に、包まれる……。
ゆっくり、丁寧に……。
やがて、光が収まり、
「ベヘム!ゆっくり目を開けて!」
「ゆっくり立つんよ!」
ベヘムの両眼が開かれる……。
ベヘムの目からは、大粒の涙が……。
「ベ、ベヘムさん……」
連れの三人も……。
「儂の目が……。足が!」
歓声が上がる。
「よっ!小女神!」
「強欲勇者~。今度は、ベヘム達の人生をかっさらうのか~?」
周りから、俺達を称える、ヤジが飛ぶ。
称えてるのに、ヤジって……。
そんな事より……。
「俺は、勇者じゃねえ~!」
「小女神じゃ無いんよ!」
「そうです!私達は冒険者です!」
俺達の抗議は、おっさん達の歓声に、かき消される。
ベヘム達は、それを楽しげに眺め、
「強欲勇者に小女神……。誠、噂に違わぬ強欲っぷり!この戦場の羅刹。見事に、人生を奪われてしもうた!」
「ベヘムさん……。我々もです!」
男達の、豪快な笑い声が、ギルドを包む。
祝杯の歓声。
今日も、最高の報酬だ!




