表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
魔王降臨
157/1865

戦場の羅刹

「おお!帰ったか?」

 師匠が、出迎えてくれた。

 横にはキリカとシルフィーが……。

 俺達の顔を見るや、駆け寄って来た。

 俺は、手を振り、大きく頷く。

「ジャショウ。そ奴は?」

「俺達の家族だ!」

「う~む……」

「あの、あの……」

 キリカは、しどろもどろになる。

 俺は、キリカを指さし、

「俺達のギルマスだ!」

「ほう……。このお嬢ちゃんが……」

 へベムが、目を細める。

「取り合えず、中に入りなさい!」

 シルフィーに促され、一同、ギルドへ……。



「戦場の羅刹か……」

「師匠知ってるの?」

 目を細め、ベヘムを見る師匠を見る。

 しかし、戦場の羅刹って……。

 中二キタ~~~~!

 何それ?カッコイイ!!

 俺なんて、強欲勇者よ!?

 強欲!

 俺が、憧れの眼差しで見ていると、

「拳聖ギルム殿のお弟子さんでしたか……。通りで……」

「派手にやりおったか?」

「ええ、完膚無きまでに……。最早、歯向かう者はいますまい」

「そうか!わははは……」

 師匠が、膝を叩いて笑う。

 やれって言ったのは、あんたでしょうが。

 俺も、苦笑する……。

 周りでは、商店街の人達が、俺の大立ち回りを魚に、飲み始めている。

「で、師匠……。ベヘムさんって……」

「うむ……。戦場の羅刹。その異名通り、自らの大きさ程あるアックスを、手足の様に振るい、戦場を荒らした豪傑じゃ!」

「最早、昔の事です……」

 ベヘムが、照れ臭そうに笑う。

「しかものう。戦場での乱取りを嫌い、度々、ギルドの命を無視し、民を助けておった」

 やはり、俺の目に、狂いは無かった!

 この人は高潔……。

 俺の知る騎士達と同じ……。

「しかし、前の戦で、たった四人で、敵の暴から村を守り、傷ついたと聞いたが……」

 師匠の言葉に、ベヘムは静かに笑う。

 その目……。その左足……。

 俺だけじゃ無い。シャル達も、悲しそうな目で見る。

「情けない話じゃ……。ギルドの命を無視し、勇んで戦ったが、この通り……。しかしのう。村の人達を守れた!悔いはない!」

「あ、あの……」

「ギルドマスターか……。すまぬのう。折角、ジャショウ殿が拾ってくれたと言うのに、何の役にも立てん!悔いが有るとすれば、その事か……」

 寂しそうに笑うベヘム……。

 共に来た三人も、泣いている……。

「あのっ!武器が持て無くったって、街の皆の助けが出来ると思います!」

 キリカの真剣な目……。

 ベヘムの目には、どう映っているのだろうか……?

 ベヘムは目を見開き、キリカを見詰める。

 そして、豪快に笑う。

「この様な老いぼれを、使ってくれるのか?」

「は、はい!約束を、守ってくれるのであれば……」

「そうか、そうか!ジャショウ殿も、その様な事を言っておったな!して、それは?」

 キリカは、大きく深呼吸をして、

「一つ、依頼者、街の人を大切にする!二つ、命を大切にする事!三つ、ギルドの仲間を、家族と思う事!あ、あの、あの……」

 精一杯、声を張り上げ、キリカが叫ぶ。

 周りのみんなが、キリカを見て、歓声を上げる。

 ベヘムは、目を見開き、

「ク、ハハハ……!何と難題で、高潔な誓いか!お前達!」

「はい!ベヘムさん!」

 ベヘムな掛け声に、後ろに控えていた三人が、前に出る。

「この誓い、守れるか?」

「ベヘムさんと一緒なら……!」

「ならば、ギルドマスター!」

「あ、あの、キリカで良いです!」

「うむ!キリカ……。この様なおんぼろであるが、お主達の家族にしてもらえるか?」

「は、はい!」

 歓声が上がる!

 皆が、ベヘム達を称え、乾杯の音頭が上がる。

 ベヘム達は、辺りを見渡し、

「なんと、暖かなギルドじゃ!」

「はい!ベヘムさん!」

「家族か……。良い響きだ……」

「儂らも再出発じゃ!」

 やっぱ、良い人達だ!

 この人達なら、街の人達とも、うまくやっていける!

 俺は頷き、シャルとサクヤを見る。

 二人も大きく頷く。

 そして、

「ちょっと待った!」

 乾杯しようとするベヘムを止める。

「俺達は、あんた達の先輩だ!」

 満面の笑みの俺達を、ベヘムは、不思議そうに見る。

「そうじゃな?」

「だから、俺達は、後輩のあんた達の、新しい門出の祝いを与える!」

 何を言っているのか分からず、ベヘム達は、首を傾げる。

 そんなベヘムを取り囲み、

「シャル姉とサクヤは、左足な!」

「ジャショウは、右目なんよ♪」

「ついでに、調子の悪い処はみんな、治しちゃいましょう♪」

 俺の錬気が……。

 シャル達の癒しの魔法が、ベヘムを包む。

 ギルドが、暖かな光に、包まれる……。

 ゆっくり、丁寧に……。

 やがて、光が収まり、

「ベヘム!ゆっくり目を開けて!」

「ゆっくり立つんよ!」

 ベヘムの両眼が開かれる……。

 ベヘムの目からは、大粒の涙が……。

「ベ、ベヘムさん……」

 連れの三人も……。

「儂の目が……。足が!」

 歓声が上がる。

「よっ!小女神!」

「強欲勇者~。今度は、ベヘム達の人生をかっさらうのか~?」

 周りから、俺達を称える、ヤジが飛ぶ。

 称えてるのに、ヤジって……。

 そんな事より……。

「俺は、勇者じゃねえ~!」

「小女神じゃ無いんよ!」

「そうです!私達は冒険者です!」

 俺達の抗議は、おっさん達の歓声に、かき消される。

 ベヘム達は、それを楽しげに眺め、

「強欲勇者に小女神……。誠、噂に違わぬ強欲っぷり!この戦場の羅刹。見事に、人生を奪われてしもうた!」

「ベヘムさん……。我々もです!」

 男達の、豪快な笑い声が、ギルドを包む。

 祝杯の歓声。

 今日も、最高の報酬だ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ