鉄の杯……。
「さあ、冒険者さん♪どこの、冒険者だい?」
俺は、リーダー格の男の頭を踏み潰し、無邪気に笑う。
男は、泡を吹き、必死にもがく……。
「て、鉄の杯……」
「ふうん……」
「た、助けてくれ!」
「君のギルドは、他所のギルドにちょっかいを出すのかい?」
「そ、それは……」
「それは?」
「ギルマスが、ここなら良いと……」
「ふ~ん……。舐められたモノだな!!」
男の横腹を蹴り上げる。
気が付けば、他の冒険者も、商店街の皆に殴られ、原形を留めていない……。
「ジャショウよ……」
「師匠……。止めても無駄ですよ?」
「何故、止める必要がある?修行がてら、潰してこい!」
師匠に背中を押され、にやりと笑う。
男達の首に縄をかけ、後ろ手に親指を締める。
こうすると、人間は逃れられない。
勿論縄は、錬気だ……。
「少しでも動いたり、俺をイラつかせると、首が落ちるよ?」
俺の笑顔とは裏腹に、男達の顔は、恐怖で歪む。
まあ、顔はボコボコで、表情が分からないんだけど……。
商店街に人達が、俺達の後をついて来る。
その手には、各々、武器を持って……。
鉄の杯……。
町の中央を陣取ったギルドは、家のギルドの三倍ぐらいの大きさだろうか……?
このギルドは、傭兵家業が主らしい。
中の人間の力量は……。
中々、強そうだが……。
百人ぐらいか……。
随分居るねぇ……。力量は、ホブゴブリンクラスと言った処か……。
扉を叩き開ける。
静寂……。
一同の目が、俺に集中する。
俺はにっこり笑い、
「粗大ごみの日、間違えるなよ?」
ボコした冒険者を、蹴り飛ばす。
殺気が、立ち上る!
しかし……。
俺の気が、一気に爆発する!
全員を捕らえた。
鉄の杯の冒険者が、一同に、地面に突っ伏す。
俺の気に当てられ、立つ事も儘ならないのだ。
動けるものは……?
奥のテーブルに、四人……。
何事も無い様に、杯を傾けている。
いや……。
その首筋には、汗が流れ落ちている……。
大したこと無いな……。
これじゃあ、オーガ相手にしている方が、修行になる……。
ゆっくりと、受付に行く……。
受付嬢が、蒼白な顔で、過呼吸を起こしている……。
受付嬢に向けた錬気を解いてやる。
肩で息をしながら、涙目で、俺の様子を窺っている。
俺は、にっこり笑い、
「ギルマスは?」
「は、はい……?」
「ギルマス……」
俺の笑顔が一変し、憤怒に変わる。
受付嬢は、腰を抜かしながら、ギルマスを呼びに行った……。
数分もしない内に、強面の男が、アックス片手に、勇んで飛び出て来た。
俺は、笑顔を崩さない。
「家に喧嘩売るとはいい度胸だ!」
笑顔を崩さない!
「餓鬼かぁ?帰って、ママのおっぱ……」
片手で、ギルマスを捻じ伏せる。
「あっがっ……」
錬気をぶつける。
さっきとは、比べ物に成らない量の……。
ギルマスの瞳孔が開く……。
「何故、家に喧嘩を売った?」
「な、なにを……?」
俺は親指で、さっきの冒険者を指さす。
ギルマスは、それを確認し、
「い、依頼で……」
「依頼で?」
俺の腕に、力が入る。
「あっ!?がっ……」
「殺ると言う事は、殺られる覚悟が、有るんだよね?」
「か、金なら……」
「いらねえよ!そんなモノ!」
力任せに、腕をへし折る。
俺は、ギルマスの絶叫を聞き、ニヤニヤ笑いながら、もう片方に腕を取る。
「ゆ、ゆるじでぐで……」
涙とよだれで、ぐちゃぐちゃの顔……。
良いねえ~。
感じさせてくれるよ……。
俺は、うっとりと、ギルマスを見る。
「その辺で、良かろう?」
ギルドの奥から、声が上がる。
先ほどから、平静を装っていた冒険者だ。
立派な体躯と、髭を生やしたドワーフ。
足を怪我しているのか?
左足を庇いながら、俺へと近づいて来る。
右目は、潰れている……。
「おお!ベヘム!こ、こいつらを!」
「儂では、どうにもならん!それは、ギルドマスターが、一番理解しておるじゃろう?」
「で、何?」
俺は、ベヘムと呼ばれるドワーフを睨む。
「そう、怖い顔をするな……。儂は、この通りポンコツでのう。しかも、ギルドの言う事も聞かない!ギルドマスターからは、クビと言われているんじゃ……」
こいつ……。
良い目をしている……。
このギルドに、似つかわしくない。
俺は、にやりと笑う。
「で、俺を、どうやって止める?」
「儂の首を預けよう」
「あんたの?」
「何の役にも立たん。戦場で死ぬことも許されなんだ、老いぼれの首じゃがのう」
「価値は、俺が決める!」
俺は、ベヘムの目を見る。
最高の、掘り出し物だ!
「後ろの三人は?」
「私達は、ベヘムさんと生死を共にする者」
「そう……」
俺は、ギルドを見回す。
どいつもこいつも、怯え、戦意を喪失している……。
糞だ……。
「決めた!この四人を貰う!」
「そ、そのポンコツを!?あ、あとから……」
俺は、ギルマスの腕を締め上げる。
「言葉には気を付けろよ?こいつらは、今から俺の家族だ!本当に、殺すぞ?」
「ぎゃああああああ……」
悲鳴を上げるギルマス。
それとは対照的に、目を見開き、驚く、ベヘム……。
「儂らが、家族?」
「そうだ!家のギルドの流儀だ。精細は、戻ったら、家のギルマスに聞け!」
俺は、ぞんざいにギルマスを投げ捨て、ベヘムの肩を支える。
「そうだ!ギルマスさんよう……。次、俺の周りの者に手を出して見ろ?そん時は、地獄を見るぞ?」
俺の気が、再び、ギルドを包む。
無早、誰も口を開かない。
俺は、振り向きもせず、ベヘムを庇いながら、鉄の杯を後にした……。




