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ep1.雪解けの春
プロローグ
その年の春は、少しだけ遅れてやってきた。
道端にはまだ雪が残っていて、
溶け出した水が小さな川になって流れていた。
母さんに手を引かれて歩く僕の目の前に
優しく微笑む女性と、その女性と不安げに手を繋ぐ小さな女の子がいた。
ピンク色の頬に、少し癖のある長い髪。
その子のお母さんであろう女性の後ろに少し隠れ気味に覗く女の子。
「仲良くしてあげてね」
母さんがそう言った。
僕は女の子の顔を覗き込んで、こんにちは、と声をかけた。
けれど、女の子は何も言わなかった。
ただ、じっと僕の顔を見つめていた。
それから少し遅れて、小さく笑った。
その笑顔がなんだか嬉しくて、僕も笑った。
その日、僕たちは初めて出会った。
もっとも、僕たちはその日よりずっと前から、同じ場所で同じ時間を過ごしていたらしい。
同じ産院で生まれたことを知るのは、もう少し先の話。
そして、君の世界に僕の声が届かないことを知るのも、もう少し先の話だった。




