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突然TSしたアラフォーおじさんがダンジョン探索する話  作者: 武藤かんぬき
第1章

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第1章  エピローグ

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。

「はい、じゃあ右手あげてー」


 美桜さんに言われるがまま、私は右手を上げた。二の腕の裏あたりに、泡だらけになった美桜さんの手が伸びて、コシコシと丁寧に擦ってくれる。


 私がダンジョン攻略に行った日は、かなり高い確率で美桜さんがお風呂に入りにやってくる。全身くまなく洗ってくれるので楽ではあるのだが、女子高生と一緒にお風呂に入っている事実に中身がおじさんの私としてはちょっとだけ罪悪感をおぼえる。


 多分これは大きな怪我がないかとか、美桜さんなりのチェックをしてるんだろうね。今回の探索でもスライムの粘液が服に付着したものの、高価な装備のおかげで特に怪我もヤケドも負っていない。


 心配してもらえるのは素直にありがたいので、基本的に美桜さんに身を任せてやりたいようにしてもらっている。今日はボス戦だったということもあって、いつもより念入りに見られている気がする。それがいつもよりもたくさん心配を掛けた証明のように思えて、嬉しいやら申し訳ないやら複雑な気持ちだった。


 全身ピカピカに磨いてもらって、お礼に美桜さんの背中を流したあとでふたりで湯船に入る。日によって向かい合わせだったり美桜さんと同じ方向を向いて背中を預けたりと体勢は様々なのだが、今日は後者の気分だったようだ。お腹のあたりに美桜さんの両腕が回されていて、まるでシートベルトみたいにやんわりと抱きしめられる。


「それで、どこまで話を聞いたんだっけ?」


「最終的に私が身体強化を使って、剣で核を突いたところでしたね」


 バスルームで話しているからか、声に少しエコーがかかっているように響いている。練習不足のぶっつけ本番で身体強化を使ったことは、当然ながら美桜さんにも叱られてた。

 けれどもあの場で使わなかったら、多分やられていたのは私たちだっただろう。

 状況は間違いなくジリ貧だったからね。私の方はまだ切り札とも言うべき魔法があったけれど、効果があるかどうかはわからなかったし。


「ファイアスライムの核は体の深いところにあるから、確かにショートソードとトールちゃんのリーチだと届かないよね。ごめん、先に気づくべきだった」


「いえいえ、本来ならヒントなく攻略しなきゃいけないんですから」


 動画などで情報を集められるだけ有利なのだから、こういうことぐらいは自分で気がつかないと。第2階層のボスに挑むときは、もっといろいろなパターンや可能性についても考えてから挑むべきだろう。


「ちなみに美桜さんが私の立場だったら、どんな準備をしていきます?」


「基本的にはトールちゃんと同じように回復ポーションとか炎を消すための水魔法だけど、リーチが足りないことに気づいていたなら槍を持っていくかな?」


 やっぱり槍かぁ。確かに間合いも大きく取れるし、どちらかというと後衛で魔法使いタイプの私が直接的に攻撃に参加できるというメリットもあるんだよね。

 ただちゃんと槍を使いこなすには突き出しや突き戻し、相手の攻撃を受け流すいなし方なんかをしっかりと練習する必要がありそうだ。剣の場合は未経験でも直感でなんとか見様見真似できることを考えると、難易度が格段に違う気がする。


「トールちゃんの剣を前衛の……氷空くんだっけ? 彼に渡して、トールちゃんは槍で戦うっていう戦法もアリだと思うよ」


「正直なところ、私の場合はせっかくのドロップ品を使わないのはもったいないなと思ったから使っているだけで、特に剣にこだわりはないから渡してもいいんですけど……」


「……けど?」


 言い淀んだ私の言葉を、頭の上で繰り返す美桜さん。その声に背中を押されるように、私は言葉を続けた。


「私のわがままなのですが、子供に刃物を持たせることにどうしても抵抗があるというのがひとつ。もうひとつはせっかく和明さんが探索者試験合格のお祝いとして、縮小化の加工に出してくれたのに。それを別の人に渡すのは不義理じゃないかなぁと思って」


 私の探索者試験の合格祝いにと、和明さんがお金を出してくれたことが考えると、すごく罪悪感をおぼえる。


「うちのパパは合理的に考える人だから、トールちゃんに渡した時点で好きに扱ってもなんとも思わないんじゃないかな。渡したあとでもいいから報告はしてあげてほしいけど、槍の方がトールちゃんの身が安全になりそうだから逆に喜ぶかも」


 娘である美桜さんにそんな風に言われると、説得力が段違いだ。もちろん氷空くんに剣を譲ったとしたら、ちゃんと和明さんには自分の口で経緯や理由などを説明させてもらうつもりだ。


「あと刃物云々は今さらじゃないかな? だって初級とはいえ水魔法を使えるウォーターガンを、氷空くんの幼なじみの子たちに使わせたんでしょ。大事なのは危ない道具を使わせるかどうかじゃなくて、使う人間の理性とか良識を育てることだと思うよ」


 自然な雰囲気でそう言った美桜さんは、女子高生だけど精神的にはもうそこらの大人より成熟していると思う。両親である和明さんと小百合さんが、こうあるべきという大人としての背中を見せているからなんだろうね。素直に尊敬する。


 話していると段々と頭がぼんやりしてきたので、本格的に逆上せる前に風呂から上がることにした。バスタオルで体を拭きながら、美桜さんに『さっきの話、ちゃんと考えます』と告げて相談に乗ってもらったお礼を言う。


 今度の探索からは第2階層に足を踏み入れるのだから、戦力アップのためにも3人とも相談しながらしっかりと準備しないとだね。


今話の更新をもって、毎日更新は終了となります。お付き合いくださってありがとうございました。

今後の予定としては女性シンガーの改稿をしつつ、合間にこちらの作品も更新していければと考えております。

もしよかったら今後ともトールたちの探索に付き合っていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。^_^ 面白かったです。やはりTSはいいですね。リリンが生み出した文化の極みと言っても過言ではないでしょう。 他作品と一緒に更新お待ちしております。
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