お二人様になりませんか
「シャルロット、ただいま!」
すっかり春めいた穏やかな日に俺は帰り着いた。
林で足止めされる事も無く、家が見えた途端に大声で帰ってきた挨拶をする。
「お、おかえりなさい。」
恥ずかしそうに呟く彼女。
相変わらず少年のような服装と、化粧っけのない顔だ。
だが、今まで出会ったどんなキレイな女よりも神々しい位に美しく見えた。
彼女の足元に騎士のように片足を立てて跪く。
「アレス?」
「シャルロット、愛してます。
俺と結婚して欲しい。」
「え、帰っていきなり?!」
「俺が思いつく限りの事を書いておいた。
受け取ってくれ。」
俺の貯金金額から、生い立ちや家族の事、これからの仕事の事などを書いた紙を渡す。
「あれ?冒険者ギルドの職員?」
「ああ。就職した。
ここに一緒に住んで通っても良いだろうか?」
「ここに住むの?」
「もう、君を独りにはしたくないんだ。
お一人様よりも、お二人様になりませんか?
どうか、俺とお二人様になって欲しい。」
下から見上げて懇願する。
「ああ、もう!
それ、ずるいから!!
下から見上げるなんて、拒める気がしないじゃない。
仕方ないから、なってあげるわ。
わ、私とアレスはお二人様よ!」
真っ赤な顔で怒ったように言う彼女。
本当に、なんて可愛い人だろうか。
「シャルロット、愛してる。」
ギュッと抱き締め、耳に囁いた。
孤独なお一人様よりも、共に歩むお二人様。
俺たちはここから始まる。
二人で、幸せになろう。
「姉さん、しばらく一緒に住んでくれ。」
王都で子育てを終えた姉に頼み込む俺。
冒険者の夫が成長した息子を連れて仕事に出かけるので、家を空けても大丈夫なのだ、多分。
「任せておきなさい。」
そして、シャルロットと俺の住む家に姉がやってきた。
「もう間もなくかしらね。」
「お姉さん、よろしくお願いします。」
姉に頭を下げているシャルロットの腹部は、はち切れる程に膨らんでいる。
そう、もうすぐ子供が産まれるのだ。
姉は近所の家のお産を何回も経験しているので、とても頼りになる。
お産するまで町に住む事も考えたのだが、シャルロットが承知しなかったので、急きょ姉に頼ったのだ。
「この家にはお祖母さんの魔道具と守りがあるから、他でお産するよりも安全なのよ。」
そう言って笑うが、俺が居ない時間に何かあったらと思うと不安だらけだったのだ。
「水もお湯も使い放題だなんて、なんて贅沢な家なの!」
姉はウキウキと見てまわっている。
「私は大丈夫だから、お仕事行ってらっしゃい。」
抱き締めて口づけをおくる彼女。
「行ってくるよ。
明日から数日は休暇とったから、体を大事にしてくれ。」
姉にくれぐれも頼んで仕事に行く。
早く帰りたいと思いながらも仕事を片付け、夕刻に家に帰り着いた。
「おかえりなさい、お父さん。」
「ただいま、、、?」
姉が言うお父さん、の呼び掛けに違和感を覚えた。
「おかえりなさい。」
家の中には、ベッドに横になる妻のシャルロット。
そして、その横には小さな、小さな赤子がいた。
「元気な男の子よ。
あなたに似た銀色の髪ね。」
ニコニコと話す彼女。
「シャルロット!
よく、頑張った、ありがとう。」
涙が溢れてくる。
今日、俺たちに家族が増えました。
お二人様、プラスワン
幸せは増殖していく。
メデタシ




