祖母殿の守り
「シャルロット。
やっぱり君ひとりでは置いていけないよ。
危険過ぎる。
一緒に王都まで行ってはくれないか?
それか、知り合いの家にでも泊まっていて欲しい。」
「嫌よ。
私はここから離れない。
ここほど安全な場所は無いと思うわ。」
「こんな誰も居ない土地で一人だなんて、なにが起きるか分からないんだぞ。
獣に襲われるかも知れないし、悪い奴らが押し入るかも知れない。
心配なんだ。」
「大丈夫よ。
猛獣も、悪意ある人も入ってはこれないわ。
ここにはお祖母さんの守りが効いているんだから。」
「祖母殿の守り?
魔道具か?」
「お祖母さんは魔術師だったの。
この家と林全体に守りの結界をほどこしてくれている。
私が独りで生きていく為に必要な事は、すべて調えてくれているのよ。」
自信満々に誇らしげに言い切る彼女。
「祖母殿の名前を教えてくれないか?」
ある予感を覚えながらも訊ねてみた。
「シャーリー婆さんって町の人は呼んでたわ。」
「シャーリー・ジャル・ビィンセント博士か?!」
「フルネームは知らないの。
自分の事はあまり話さなかったから。」
ビィンセント博士は稀代の英雄魔女で、国を救ってから表舞台から消えた人だった。
俺が10歳の時の流行り病の特効薬も、ビィンセント博士のお陰で発見されたとの噂もあった。
かなりの高齢の筈だが、何かあればビィンセント博士の功績なのではないかと噂にあがる人物だ。
そんな偉大な人物が調えた土地と家、、、。
そりゃ、悪意ある者は寄せ付けないかも知れない。
「そうか、ここが一番安全なのかもな。」
とにかく、一度王都に行かなくてはならない。
用事を済ませ、急いで戻ろう。
そして、求婚しよう。
「シャルロット、なるべく早く帰る。
しっかり考えて欲しい。」
そして、俺は旅立った。
後ろ髪ひかれながら。
あれ?
戻った時に俺、シャルロットの家にたどりつけるよな?
だ、大丈夫、きっと。




