第13話勇者達を視察しました。(王女様side)
今回の視点は主人公視点ではありません。
王女様が視察に来た理由と異世界の勇者召喚後の王国側の動きを書いた話です。次回は明日の12時過ぎに第14話掲載予定です。
ブクマ、感想、評価出来ればよろしくお願いします。
私、ガラフ王国第1王女フィーネは王国の財政に苦心していました。
ガラフ王国は世界中に知られている程の大国で歴史も深い国です。しかし近年の王族や貴族の権力争いや豪勢な生活が祟り、国はすっかり衰えているのです。
「はあ〜」
思わずため息が漏れる。
何とかせねばそう何度思った事でしょう。
「しかし、今年はなんとかなりそうですわ。勇者を召喚した事で魔王の脅威にさらされている国から支援金が送られて来ていますし」
私は机の上に広がる報告書を見る。
その報告書には今月の収入と支出が事細かに記載されていました。
魔王の危機にさらされている国はどこも必死なのですわ。だからガラフ王国に恩を売って、一刻も早く助けて貰おうと縋り付いてくるわけなのです。
――全く、王国の駒だと言うのに色目を使って⋯⋯鬱陶しいったらありませんわ。
「これだけ支援金が勇者召喚後入って来るとは、いやはやこの先は安泰ですな」
そう笑い声を上げるのは大臣のダリンです。
このてっぺんハゲは優しそうな顔で笑い私達王族の味方のように見えますが、目には野心の光が灯っているから油断出来ません。
大臣も王国財務には詳しいので予算などはいつも私達王族と大臣など王城に勤める役人数名、最上級貴族数名で決めています。
「そうですね。それと、勇者達がどのくらい使えそうなのかを見ておきたいですね。明日訓練を視察して来ようと思います」
「ええ、それはいい考えですな。勇者達がいつ頃使えそうになるのかを支援者達に明確に提示していたほうが救済がより現実的に感じられ、支援金がより増えるでしょう」
大臣がアゴに手をあてながら言う。その通りです。
「私も是非王女殿下と御一緒に勇者達の訓練を見てみたいものですな」
「私も可能でしたら是非」
貴族達の中からそのような声が上がった。
そう言った貴族達の目には嫌な感じの光が灯っているように見えた。
「貴方達は自分達の責務でお忙しいでしょう。私1人で大丈夫ですわ。お気遣い感謝します」
――フンッ! 勇者達が使えそうならツバをつけておくつもりですか。そうはさせませんわ。
「大丈夫です、王女殿下。我々にもお手伝いをさせてください」
「それとも殿下? 何かやましい事でもあるのですかな」
本当に面倒くさい。こちらが断り辛いような返し方をするあたり、口の上手さでは敵いませんわ。
お父様にヘルプの視線を送る。
お父様はそれを見て少し深呼吸をした後、私に同行したいと言った貴族達を見た。
「そんなに大勢で押しかけるわけにもいかんだろう。フィーネ、頼んだぞ」
「はい、お父様」
「分かりました、陛下」
「王女殿下、頼みましたぞ」
ギリギリと2人の歯ぎしりする音が聞こえて来ました。
――流石お父様ですわ。
「私からも、頼みましたぞ」
そう言って大臣が親指を立てたのでした。
***
その翌朝⋯⋯。
予定通り勇者達の訓練の視察をするため訓練所を訪れていました。
クックック⋯⋯。
――王国⋯⋯いや、私の手駒として使えそうな者達を見つけ、奴隷のようにコキ使ってやりますわ。お前ら勇者は私の繁栄の礎になるのです。
「グラン騎士団長、今日はよろしくお願い致しますわ」
「ハッ、王女殿下」
騎士団長のグランは金や権力に特に執着はなく、私達王族に忠誠を尽くしてくれています。その上馬鹿ではなく、頭もまわる。
私が王族以外で最も頼りにしている1人です。
「よし、いつも通り訓練を始めるぞ!」
グラン騎士団長が声を張り上げ、訓練が始まりました。
開始から約2時間後。
こちらを警戒するように見ている気配を感じました。
「――っ!?」
こちらが顔を向けると何食わぬ顔で訓練に戻って行きました。
少し気になります。
「グラン騎士団長」
「はっ、王女殿下、何用で御座いますか」
「あの男の名前は何ですか?」
さっきの男を指差してグランに聞きます。
「ほう、あの者ですか。王女殿下もお目が高い。名前は大迫博之。召喚された勇者の中では有望株です」
「そうですか」
「ええ! 他の勇者達も元いた世界では戦闘経験が無いのにも関わらず10日でここまで強くなるとは驚きです」
グランは嬉しそうに私に報告して来ます。
あの男は他の勇者達と違って明らかにこちらを警戒してます。逃さないように注意せねばならないようですね。
「是非とも私の従者に欲しいですわ」
小声ではあるが、心中が思わず声に出てしまいました。私は有望株は可能な限り自分の手元に置いておきたいのです。
これは貴族や他の王族に引き抜かれる事のないようにするためです。
だが、私を警戒しているのはあの男だけではないように思います。
時より感じるピリピリとした視線。
この場に流れる微妙な刺すような空気が物語っています。
私は英才教育を幼い頃から受けており、日々権力争いの激しい王族です。まずこの感覚は間違いないでしょう。
「この調子で頑張ってください。グラン騎士団長」
「お任せください」
そう言って、グラン騎士団長が頭を下げたのでした。
――異世界から来た勇者達は思ったより骨のある連中のようです。
その後、私はより引き締めた気持ちで視察を続けたのでした。
今回の視点は主人公視点ではありません。
王女様が視察に来た理由と異世界の勇者召喚後の王国側の動きを書いた話です。次回は明日の12時過ぎに第14話掲載予定です。
ブクマ、感想、評価出来ればよろしくお願いします。




