8.貴族こわい
夜に上手く眠れていなかったことがバレてから、夜に寝る時に添い寝役がついてしまった。
ゔゔぅ、前世は成人した大人だったから羞恥心がすごい。
でもスコンと寝れるようになってしまったので断れない。
「すごい子供扱いされる……」
「子供なのですから当たり前では?」
エディの言葉に唇を尖らせた。
そりゃあ身体はピチピチの8歳ですがね。
「少なくともマルクスはもうちょい俺のこと大人扱いしてた」
「マルクスは坊っちゃんを大人扱いしすぎて無理をさせていたと反省しているので仕方ないですな」
その返しにグゥと唸る。そう対応してもらえるようにしていたのは自分なので。
「……別に、無理してたわけじゃない」
「坊っちゃんは兄上様くらいにしかわかりやすく甘えていませんでしたから、この機会にもう少し甘え方を覚えるとよろしい」
兄様にそんな甘えてるか?
ちょっと内容が思い当たらなくて首を傾げる。
「無自覚だったんですね」
「無自覚だからこそでしょうな」
今回の遠征に参加してる騎士の1人のコスティが笑う。おう、なんだ爽やかマッチョ野郎がよ。
「いそいそと狩りに行って、その結果捕れた物を一目散に兄上様に持っていくの可愛いなーって領地の皆思ってたんですけどね」
「小さい頃から兄上様に自分の手に入れた物を見せに行っておられましたから。たまには領主様にも見せに行ってあげてください。少し気にしておられる」
ちょっと待って、違う。
俺が兄様のところに採ってきた物とかを持っていくのは、部屋からマトモに出られない兄様にも色々な物を見て貰いたいと言う俺の弟的な真心であってだね。
けっして犬とかがやる『捕れたの見て見てーいっぱい褒めてー』なアレでは無い。いや、確かに兄様いっつもいっぱい褒めてくれるんだけどさ。
その後は生態確認とかの難しい話が始まるんだぞ。
「坊っちゃんの初恋は兄上様と思ってるヤツもいますよ」
「それは本気で違う」
狩猟民族だからって俺の善意を曲解しないでいただけます?
村のプロポーズが捕ってきた獲物を相手に渡すことなのは知ってるけど、俺のは違います。
「兄上様は奥様に似ていらっしゃいますからな」
「奥様は村の若い男を軒並み恋に落として領主様に負けて失恋させるのがお決まりでしたもんね」
母上様は父様が掻っ攫うまで王都でも美女と有名だったらしい。父様は一目惚れからの周りを蹴散らし物語のような大恋愛だったそうな。
話を振るといつでも嬉しそうに父様との恋愛話をしてくれるので聞くとちょっと楽しい。
最近はもうすぐ3歳の元気に暴れ回っている可愛い双子の世話にグッタリしているけど。
ちなみに家を継ぐのはこの双子のどっちかになる予定である。
兄様は頭は良いけど体力面が不安視されているし、俺は父様と母上様の子供じゃないからね。養子なので家は継がない。
双子を妊娠している時に訳アリな子供を引き取って可愛がってくれているんだから母上様も父様もめっちゃ良い人なんだよ。
その恩を少しでも返すためにも今回の遠征を成功させないとな。
父様たちの恋愛話からコスティがまだ結婚していないことに関しての話にぐんぐん逸れていっているが、話を戻すと俺に被害が来るのでコスティにはそのまま今の恋人がいない状態への説教を食らっていてもらおう。
「せめて今回の遠征の間に攫ってくるなり縁を結ぶなりしようと考えて行動してみなさい」
待って?
今聞き捨てならないこと聞いたぞ?
「攫ってくるって良いの?」
「まあ、わりとあります」
「実際は親に事前に了承得たりがほとんどですよ」
他領から嫁ぐ場合はたまにある手法……マジかよ。
逆に領主に許可取ろうとすると嫌がらせや喧嘩やら初夜権やらと色々起こるので、親に手切れ金という名の結納金を渡して領主にバレないようにこっそり攫う、もとい夜逃げするらしい。同意を得た上での誘拐。
なんか話聞く度に貴族社会怖いってなるんだが?
「坊っちゃんもメアリのような者に攫われないように気をつけてくださいね」
「男女問わず警戒対象にしてください」
戦場だと普通にガチの誘拐があるとか聞きたくなかった。
やっぱり兄様は来なくてよかった。ほんとによかった。
「騎士の3人と私の4人でなるべく警戒する予定ですがね」
……騎士なのに含まれないのはメアリ。
アイツは戦場でやらかしがバレて元の家からクビになるところを父様が偶然拾ったというか押し付けられたらしい。
おい、誘拐犯側なのかよ。
攫った少年が子爵家の嫡男だったのでめちゃくちゃ大問題になったとか。
そりゃそうだろ死刑も普通にあり得るレベルだぞ。
メアリが生きてる理由が元伯爵令嬢だからで、実家から詫びを含めた預り金を毎年貰ってるとか全く聞きたくなかった。
伯爵令嬢に夢見れなくなったじゃないか。ふざけるな。
木、日の週2投稿に切り替える予定なので今週は不安定になるかもです。




