26話 最後の欠片を狙う者
「ゼファーの目的は、間違いなくエルザ殿の持つ最後の『星の欠片』です」
王宮の作戦司令室。カーラは広げられた地図を指し示しながら、断言した。
「私が鉄王国で得た情報によれば、三つの星の欠片を揃えることで、古代の破壊神ゾラスの封印を解く鍵となると言われています。ゼファーは、その力を利用して、何か恐ろしいことを成し遂げようとしている」
「ゾラス……」
エルザはその名を呟く。リアム侯の書庫で、その名にまつわる不吉な記述を読んだ記憶があった。世界の調和を乱し、無に帰す存在。ゼファーの野望は、アクエリス一国の危機に留まらない。
「ゼファーは、世界を滅ぼそうとしてるってことなのか……? 妻を救うためだって言ってたのに……なにが真実なのか」
アキトの声が、か細く震える。ゼファーの言葉と、カーラの示す事実との間で、彼の心は引き裂かれそうになっていた。
エルザは、そんなアキトの肩に力強く手を置いた。
「アキト、今は前だけを見ろ。ゼファーが何を考えていようと、私たちのやるべきことは一つだ。奴の好きにはさせない。それだけだ」
その言葉に、アキトはハッと顔を上げる。エルザの瞳には、一切の迷いがなかった。
「つまり、私は奴にとって最後の標的というわけだ。面白い」
エルザは不敵に笑ってみせたが、その内には守護者としての強い責任感が燃え上がっていた。
「ずっと守られてきた。仲間たちに、民に……。だが、今度は私が守る番だ。このペンダントも、お前たちのペンダントも、そしてこの国も。このエルザ様が、全部守り抜いてやる」
彼女は、自らがゼファーの標的であることを明確に自覚した。それは、絶望的な事実であると同時に、戦うべき理由が定まった瞬間でもあった。もう、諸侯会議で見せたような迷いや、リーダーとしての孤独に苛まれる姿はそこにはない。守るべきものが明確になったことで、彼女の魂は再び輝きを取り戻していた。
「カーラ、あんたが持つゼファーの情報を全て教えてくれ。クライブ、迎撃態勢を整えろ。奴が来るなら、真正面から迎え撃ってやるまでだ!」
エルザの号令が、司令室に響き渡る。ゼファーという絶対的な脅威を前に、彼らは恐怖するのではなく、闘志を燃やすことを選んだ。エルザの持つ最後のペンダントが、今や仲間たち全員で守るべき、希望の砦となったのだ。




