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猫に転生しても私は多趣味!  作者: 亜土しゅうや
帝国之崩壊編
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第56話 虚無ソマリテ/目覚める

 ああ...なんだろ..。

 何も感じない。いや、あの不快な男を見るとイラつく。


 でもなんだろ、ケイが..やられたって言うのに、なぜか無だ。許せないのに。


 みんな私を見て動揺している。

 何かあったのか...手を見る限り何も変化がない...ん?


 あれ、これ人の手かな。

 誰かの切られた手?いや違う...動かせる、意志のままに。


 ...ああ、私か。


 なんでか知らないけど...人になった..いや、戻ったのかな、私。


 こういうのってさ、感動的なシーンやカッコいい場面でなるものかと思っていたんだけどさ、何も感じないんだ。


 頭の中が何かで純粋に満たされている。


 ミックスジュースでいう水が空白...可能性、原液が思考、その原液にはさまざまな味...つまり人間の多種多様な考え..そう、思考がある。


 けど今の私は味が一つだけ、それも原液のみ。


 ただ...純粋なんだ。何かで。


 一歩歩く。

 腕から気持ち悪いウネウネを出している不快男が腰を抜かす。何している...ああ、再生か。


 もう一歩歩く。恐怖に染まったかのような顔になっている。多分。


 横を見るとゼオ達が私を見て驚愕している。

 ルザーナや邪精霊、みんな怪我をしているな、回復させておこう。


 あれ、小治療ミニヒール効果が上がっている。それどころか治療ヒールを超えているのじゃないかな。


 まぁどうでもいいや。


 にしても目もパッチリ開かない、何も感じないんからか、なんかつまらない気がして反目よりちょっと上にしか上がらない。


 「.....!....!!」


 あれ、何かを言っているな...日本語じゃないようだけど...ああそうか、念話切れちゃってるのかも。


 「ごめん、何か言った?」

 「なんだその姿はと言っているんだ!!?こんなちっぽけな魔物が人化なんて...あり得ない...あり得るはずがないいい!!」


 ああ、お前もそこを聞いてくるかぁ。


 私に聞かれてもなぁ...よくわからない。


 「わからない。」

 「あ..ああ...!!」


 なんでこんな怯えているんだ?ただちょっと喋っただけだって言うのに。


 「あああああ!!」

 「(ヒラッ...)」

 「!?」

 

 なんか飛んで来たから払い除けた。ゴミを投げ捨てるなよ...。


 今度は剣を振ってきた。

 なので折って捨てた。

 

 「...嘘だ...嘘だ...!!」

 「...とりあえず、殴るね。」


 腕再生したみたいだし殴っても良いやと思ったので殴った。猫ぱーんち。


 「あ...が...!?」


 あれ、骨が何本か折れた。まいいや、再生するし。

 えいっ、そりゃ、おら。


 「..!...!?..!!」


 不快男が当たるたびに周りの壁がすぐ崩れる。爆発で脆くなっていたのかな?そんな強く殴ってるつもりはないんだけど。


 ん?見た目がさっきより化け物になった?


 ああ、再生が追いついていないのか。可哀想に、多分。


 にしても醜い顔だなぁ。そんな姿になってまでも私を襲ってくる。


 鬱陶しいな...猫きっく。


 おおう、ぐちゃって音が鳴った。きっしょ。


 「....!!...!」

 

 ...もう終わりで良いかな。でも苦しめてやらなきゃいけない気がする...同時でいいや。


 あー...どんな技にしよう。


 そうだ。


 魔力で一つの大きなシャボン玉のように型取り不快男を包む。


 そして縮める。


 「な...なんだよ...!?なんだよこれ!?」

 「とどめ。」

 

 光球は縮んでいき、不快男を端から焼き消し、圧縮させながら縮んでゆく。


 「嫌だ...死にたくない...助けて..助けてくださああああい!!」

 「絶対に許さない。」

 「なんでもしますからああああ!!」

 「しなくてもいい、それじゃあ死ね。」


 私は手をギュッとして光球を潰し爆発させた。


 ....あれ、涙が溢れている。


 ....!!!


 ....ああそうだった。なんで何も感じなかったのか。


 悲しいからなんだ。


 この世界に来て得たかけがえのない仲間、大切な友達を失ったから。


 ずっと悲しさで染まっていたんだ。


 なぁケイ、また会えるって言ったよな?

 なら私はそれを信じて生きるよ。あんたがいなきゃ約束の海水浴、行ける気がしねぇわ。


 だから、私からも言うよ。


 またね。



ーーーーーーーーーー


 「...ここはどこだ?真っ暗だけど一体...。」


 どこかの暗闇で目覚めたロティアート。

 

 すると火のついた蝋燭の道が現れる。


 よくわからないが進んでみることにした。


 「確か...あの化け猫に殺された気がしたが...手や足の感覚はある。少しフワフワした気分だが。

 死んでいなかったのかな?化け物の肉体になったことで何か変化したのだろうかな。」


 そのままロティアートは進んでいった。


 すると大きな木製の門があった。門は開き、行かなくてはいけない気がした。


 「一体どこだここは...?」

 

 「あの世です。」

 「!!」


 そこには赤い服、長身長髪の女性がいた。


 「私は閻魔、罪を裁く者。」

 「な...!?」

 「魂は本来、輪廻の流れへ返されるもの。しかし貴方のような邪悪な魂は流れにあってはならない存在と判断しました。」

 「ふ..ふざけるな!!僕は自分の趣味を続けていただけじゃないか!!邪魔をした奴らが悪だ!!僕は何も悪くない!!」


 「...本当に醜い魂です。考えるまでもありません、


 我は裁く者、我は輪廻を知る者、我は魂を知る者、


 我は輪廻を守りし者、邪悪な存在を消す者。


 今こそ与える時...!」


 「なん..で...!!


 肉体消えてなおその一生を悔い改めろ!!

 滅術・ロストジャッジメント!!

 

 ロティアートに声が出ないほどの痛撃が走る。

 

 すると後に大きな門が現れる。


 「貴方は二度と外へは出しません。この門の先は大地獄と呼ばれ、一度入った邪悪な魂は二度と出ることはありません。魂が消えるその時までその苦痛、味わっておきなさい。」


 「..!!嫌だ...嫌だあああああああああああああ!!」


 今まで多くの生命を冒涜し、多くの人を傷つけた男の最後は実に呆気なく、哀れであった。  

 この世からロティアートは...消えた。


 「...お仕事完了。キジコさん、どうか強く生きてください...。その願いはきっと叶います。」


ーーーーーーーーーー

 

 ....



 ...


 ....!


 はっ...!?


 そこはどこかの部屋、私はベッドの上に寝ていた。

 

 そして体は...おお、人間だ!?尻尾もある、動かせる!?

 耳は...あれ人間と同じ耳があるのに頭にも猫耳のような何かが...あ、これ髪型か。

 スキル肉体理解を持ってるためか違和感なく動ける。元が人間だったからもあるだろうけど。

 

 えーと鏡..あった..わぉ!?前世と同じ顔..!

 正確に言えば中学1〜2年の頃の顔だなこれ。あの頃は謙部してたテニス楽しかったな。

 

 目はちゃんとぱっちり開ける、目の色は綺麗なゴールド、まつ毛は前世同様長い。いやー改めて見ると...綺麗だなぁ...私。


 そういやここはどこだ...?窓あるし外を見てみるか...あ?


 そこはどこかの街、日本とどこか似たような木造建築、ケモ耳尻尾その他獣の特徴がある人々、いや他の種族も見えるけど..、


 ガチャッ


 「...!起きましたか、キジコ様。」

 「へ?」

 「急で戸惑っていらっしゃるでしょう、私は猫人族のタビと申します。」

 「は..はぁ、キジコです。」

 「お目覚めを待っていました、色々聞きたいことがあるでしょうからこちらへ。」

 「あ、はい!」


 タビと名乗る猫男についてゆく。

 廊下を見るとどこか日本と似た建築に見えて落ち着く。


 少し歩くと広間に出た。

 

 「今、上の方が参りますのですみませんがその間私が質問に答えましょう。」

 「ああ、えーと、ここはどこでしょうか...?」

 「はい、ここは中立最大国家エデル。その領域内の街の一つ、リーツです。」


 うん、全くわかりません♪


 「わからないです。」(キッパリ)

 「レギスの森より北の方に位置します。」

 「なるほど..次に私はどうしてここに?」

 「それは...

 

 「あの戦いの後、お前を守る為にこの国へ運んだ。」

 「覚醒した以上君はあのままでは危険でしたのでね。」


 「へ?」

 「おや、もうご到着されましたか。キジコ様、この方はこの町の領主様です。」

 「ん?どっちが?」


 「俺だ。」

 「いいえ私です。」

 「どっちでもですよもう。」

 

 ?..?..??

 

 「ああ、俺は朱斗あけと。」

 「私は蒼鈴そうりん。」


 そう名乗る見た目が似た茶髪猫男が2人現れた。


 私、一体どうなるのーーー!?

次回から一旦、前々から予定していたディメンと冥ちゃんの現代調査の番外編に入ります。

キジコの謎を探るため奮闘しますので本編は一度お待ちくださいorz!

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