第95話 いざ偵察でござる(?)
「おい、魔人の情報は?」
「中立だから魔人族結構いるねぇ。」
「炎の魔人だ馬鹿!!」
「すいやせん...情報ゼロっス。」
妙な話をする冒険者の男達。
実はこの男達、プラドに雇われたスパイ。
どうやら炎の魔人の情報を調べるためにリーツ派遣されたようである。
金で雇われた身であるようだが、調査はしょっぱなで難航しているようだ。
「リーダー、そもそも炎の魔人ってなんだ?」
「さぁ?」
「「ズコーッ!!」」
「太陽っぽい色の髪でルビー色の瞳、白めの肌だと言っていた。」
どうやら情報量が少ないようだ。
「...それ道中で見た竜人族や聖人族、果てにはエルフと特徴重なるの何人かいましたよね割と。中立領域ってバリエーションやばいし。」
「言わないで。orz」
流石は異世界というべきか、人々の髪や肌に目の色などのバリエーションが割と豊富。
多少統一感あるとはいえ、炎の魔人として伝えられたこの情報程度じゃ発見は困難である、
報酬金は後払い式な上に仕事が杜撰だと払わないと言われている。
やりがいのない依頼を受けて後悔もいい所である。カワイソ。
「雑な扱い困りますよね、俺達仮にも[風切隠密一家]なのに。」
「その言葉は出すな!シーッ!!」
「むぐ...すいやせん...。」
「いいか?絶望的難易度とはいえ仕事として受けた以上やるだけやってみるぞ!」
「「おう!」」
タッタッタッタ...
(まずい、誰か来たようだ。)
(町で迷った冒険者に装うぞ!)
ーーーーー
「リーダー、こりゃ迷っちまったな。」
「ああ、初めて来る町相手に変に進むんじゃなかっtうわ!?」
つい誰かとぶつかってしまった。
「あわわ...その、すみません!!」
「ああ、大丈夫ですよ...あら?」
目の前にいるのは雉虎っぽい柄の髪の猫人族(?)。俺達は知っている、今世の神獣候補のキジコだ!
下手な行動は死を意味するー!!
「冒険者か何かですか?ここ細い路地ですけど何かあったのですか?」
(うぐっ)
「すみません、この町に初めて来た身でして...。」
「ああ、迷っちゃったのか。たまにあるんですよ。」
「お恥ずかしいい限りですが、ギルドはどちらでしょうか?」
「よければ案内しますよ。どうぞこちらへ。」
「なんと、ありがとうございます!」
...バレてるかどうかは知らないが今はついて行くとしよう。行き先が警兵だったら終わりだけどな。
俺達は案内されるがままに動いた。
「...賑わいあっていい町っス。」
「リーダー、あの茶屋後で寄ろうよ!」
「先にギルドだ、茶は後で...
「おおキジコさん、新しい茶葉が入ったぞ!それに合わせて新しい団子作ったから寄っていかねぇか?」
「なんと!?」
「「「え?」」」
「そこの冒険者さんも寄って行くといい!売れる味かどうかわからねぇから試食だけどな、あっははは!」
結局茶屋に寄りました。
出てきたのはピンク色の団子で餡が乗せられている。
匂いからしておそらくロベリを材料に混ぜてあるらしい。...美味そう。
(※ロベリ:この世界のイチゴ。)
「さ、こちらもどうぞ。」
さらに出てきたのは深い緑のお茶。
「...いただきます..はむ。」
ロベリの酸っぱさと餡の甘さが一口目から口に広がる。モチモチと柔らかい団子を噛むたびにその味わいが何度も...。
しかし味がちょっと濃いな、茶を飲んでみるか...これは!?
深い苦味と旨味が団子の味と張り合ってるというか...マッチ!!
甘さ、酸味、苦味、旨味!!
これほどの至福がいきなり味わえるとは!?
「「幸せ〜。」」
「これ抜群、いけるぞ爺さん!」
「はっはっは!そうと決まればたった今より品書きに追加だ!!」
リーツの茶屋[緑丸]
ロベリ団子と深蒸し茶のセット、新メニュー決定。
ふぅ、時間と茶菓子食っちまった。
とりあえずギルド...じゃない、炎の魔人の情報集めねぇと。
正直ゼロもいいところだ、せめて近くに...ん?
「...いな..、いや、これでも....」
「あれ、クロマ。どうしたの?」
「あ、師匠!」
(あれって!?)
(間違いない、バルバの魔女だ!)
(神獣候補の下に入ったっての本当だったのか!)
「実は薬草の新芽を狙いに来る虫が発生しておりまして、防虫魔法はかけておりますが...突破できる魔力を持ったのが近頃現れまして、何か雑貨で防虫剤がないか探しておりますの。」
(それってもしや...。)
「もしかしてその虫、紫の斑点のある黒い虫じゃないのか?」
「え!?なにその虫!?」
「そいつです!面倒で嫌なんですよ!!」
その虫の名前はメディグラス・イーター、薬草の新芽を好物とする害虫だ。
薬草は大抵一定まで成長すると虫や鳥が嫌がる臭いを発するのだが、それがまだない新芽は栄養も豊富で狙いに来る奴の格好の的。
大農園規模となるとまさに地獄を極めかねない。
俺達の故郷もかなり面倒で毎年苦労したもんだ。ここは手を貸してやろう。
「そいつらは...これとこれ、そしてこの薬草の絞り汁を染み込ませた木材や石を置くと長らく近づいてこない。長く吸えば虫にとっては死を招くくらいのな。大抵もって3日だ。」
「なんとそうでしたか!!試してみます、ありがとうございます!!」
すっごい深々頭を下げてくる魔女クロマ。
おかしい、魔女クロマといえば気に障ることをすれば凄まじい魔術で攻撃してくるって噂があるほどのあの魔女が、頭を下げて丁寧にお礼を言うだと!?
「そうだ師匠!ギルドの近くにある武具屋が師匠を呼んでましたよ!」
「わかった!...ごめんね、案内してる最中なのに色々あって...。」
「いえ、大丈夫ですよ..はは。」
(薬草かぁ、害虫退治はいつも面倒でしたね。)
(混合薬草汁剤も交換大変でしたっス。)
俺達は再び(表向きに)ギルドへ歩み出す。
道中歩いてわかったが、本当に平和な町だ。
帰ったら村のみんなにも教えてやろう。
「おーいキジコさん!いい所に!」
「あ、捕まった。あそこギルドでs...
「そこのお兄さん達もきてちょうだい!」
「「「「ふぁ!?」」」」
「どうかしらこの服?クルジュちゃんのアイデアを借りて作ってみたの!!」
「な...この服は!」
「リーダー、似合ってるっス!」(純粋な目)
「うんうん。」
「こ...この服は!?」
キジコとリーダーの男が着ているのはジャケット羽織るタイプの白シャツファッション。
「キジコさんが倒しまくった魔物から取れる素材がこっちでも買い取れてね、その素材から作れたの!」
「マジか...。」
「これ魔物の素材で出来ているのか!?」
「「すげぇ!!」」
「そしてこれが...!」
「じゃじゃん!!」
また何か着せられたリーダー。
その装備はアンダーは魔物素材の服でありながら機能性もデザインもよく、外側の金属プレートも軽く丈夫。
簡単に言えばすげぇいい装備。
「黒を中心としてプレート付きなのに機動力抜群!!今回は特別に魔石も取り付け暑さ寒さと言った気温変化に耐性があるからいつきても着やすい群れない冷えすぎない!」
「...魔石?」
「魔石ってのはね、取り付けた装備にちょっとした効果をもたらすものなの。いわばミニ魔法具。」
(...そう言えば、タビさんがルザーナのサンダル材料集めてた際、貴重な素材とかなんとか言ってた気がする。その際サンダルにBB弾のような石飾ってあげたけど...あれが魔石なのか!?)
「そうだ!!あんた達2人にもこれ!」
「おお...これは!」
「すごいっス!」
2人にもこっちよりは金属が少ないが似た防具を着させてもらえている。
高いだろうな。
「これいくらなの?」
「よくぞ聞きました!!これは本来一着10Gそっち8Gかかるの。」
「高っ。」
「その所なんと今回タダ!!」
「「「「なんで!?!?」」」」
「いや実はね、それ試作ってのもあるんだけど...キジコさんのお陰でうちもこんな良い物作れるようになったと言うか、この辺りの貿易の流れが止まりづらくなったから私も思い切って働けるんだ。だからそれくらいサービスさせてくれ!」
「...だとしたら私の分は?」
「こちら!!」
赤を中心とし、誰が見ても軽やかに動ける出あろうと感じる着物。
いや、露出面積は脚部以外はない。
だがなんというか、これを来た女性冒険者は絶対強いって感じだ。
「これくれるの...!?」
「クルジュちゃんとの自信作!受け取って!!」
「...ありがとう!!」
(俺達は前の服は空間収納に入れた。)
...良い人が本当に多いな、この町は。
俺達もさっき来ていた服よりも遥かに良い装備を着ている、正直なんというか...
「さぁ、ギルドにようやくついたよ。」
「...すまない!!」
「へ?」
「「リーダー..?」」
「プラドの名前は聞いた事あるな!?」
「...!?...君達、プラドを知っているのか!?」
「申し訳ない!俺達は金で雇われ炎の魔人について調べるよう偵察にきたんだ!!」
「なぁ!?」
「リーダー!?」
「なに言ってるんスか!?」
「優しいんだみんな!!この町は明るいんだ!!ちょっと動くだけで何かが起こり感謝の声が現れ、さらには...こんな良い防具までもらってしまったんだ...。そんな町を今更敵に回せるか!!」
「リーダー...。」
「ぐす...。」
「え...え...!?ちょっ、そういう話は...とりあえず館で...。」
(ええええええええ!?この人らスパイだったの!?いやマジでわからなかった、というかそんな重要な話ここで言うなーーーーー!!)
彼ら3人の称号:隠れる者
・変装した際、相手にバレづらい。