後編
…物語りは少女が産まれる前から始まっていた。
七つの大罪と呼ばれる悪魔は様々な世界に飛ばされ
その世界で魔王となるもの契約するものがいた。
この世界の魔王…”サタン”もその一人。
「…サタンってクソ重いよね☆」
亡国の男爵令嬢を思わせるピンクの髪を
たなびかせながらボヤく魅惑的な雰囲気の美人
「…あ”?」
「お~怖い怖いっ。さすが”憤怒のサタン”だな~。」
「煩いぞ、女装癖。」
「誰のせいだよぉそれと女装じゃないぃ
俺が魔力使って女になっただけだろ~!」
男爵令嬢アスリア・ミリタリー…
その正体は、”色欲の悪魔 アスモデウス”
七つの大罪の一人で淫魔の始祖で
彼自身、インキュバスである。
「仕方ないだろう。
使えるのがお前くらいだったんだから。」
その悪魔を顎で使うのが
この世界の魔王”憤怒の悪魔 サタン”
「しかし、七つの大罪が”3人”も揃うなんてな~」
「ああ。もしヴィーが違う世界にいたら
この世界を滅ぼしていたからな。
そこだけは神は正しい判断をしたな。」
ラースは平然とした表情で世界の有無を語る。
それにアスモデウスは渋い表情を隠すように
別の話題をふる。
「でもさぁ~レヴィアタンは可愛いけど
あの嫉妬深さは異常だよねぇ重いっ重いっ☆
俺は淫魔だからかなぁ軽い女の子のが好きぃ~」
「お前のことはどうでもいいがヴィーは重くないぞ?
”嫉妬”させるまでもなく愛せばいいだけだろ?」
「…いや、あのレヴィアタンに
重くないとか言えんのお前くらいだぞ~
インキュバスの俺でさえレヴィアタンはヤバイと思うもん☆」
レヴィアタン…今の名前はレヴィア・ヴィー・ランズ。
公爵令嬢で今は神父ラース…もとい魔王サタンの妃。
彼女の生前は女勇者だった。
…だがその前は…七つの大罪の悪魔の一人だった。
「そもそもあの伝説の内容ってなんか違うよねぇ~」
”聖女が魔王を倒し封印した。”
女勇者が魔王を倒したことにより
聖女として崇められ彼女の死後、
彼女の家は爵位を受けた…それがランズ公爵家。
彼女の愛称、”ヴィー”を残す唯一の者。
その愛称を付けたのも目の前にいる魔王だった。
聖女と呼ばれる女勇者は貧しい家の出だった。
生きるためには危険な道を進むしかなかった。
彼女は生まれながらに”嫉妬心”が強く、
それは彼女の特性でもあった。
彼女は嫉妬心により多くの人間を殺めた。
自分より可愛い人間や
自分より恵まれてる人間に嫉妬して殺した。
そんな彼女が好いた人は殺された。
だけどそれは彼女が殺した訳ではない。
人間如きが彼女に好かれた憤怒により殺された。
”作られた孤独”
それに気づかず彼女は
魔王に狂おしいほど愛され生涯を終えた。
「ヴィーが死んでから数百年…
やっとヴィーを悪魔の身体に戻す程の魔力がついた。」
「でも消耗激しいよぉ~?
”嫉妬の悪魔 レヴィアタン”の復活なんてさぁ
スライムくらいの体力しか残んないよ~いいのぉ魔王様ぁ?」
「また、置いてかれて拗ねて眠るよりいい。」
聖女と呼ばれた女勇者…
嫉妬により多くの人間を殺めた罪人”エンヴィー”
彼女が欲しい故に憤怒の悪魔は、
彼女の好いた者を殺し彼女の唯一を手にいれた。
しかし、当時の彼女は人間。
人間と悪魔の時間は差がありすぎた。
だから次に見つけた時は彼女を悪魔に…
「嫉妬に憤怒…ほんとにお似合いだねぇ~」
▼聖女エンヴィー(罪人エンヴィー)
女勇者。嫉妬故に多くの人間を殺した罪人。
己の嫉妬深さをも受け入れた魔王を愛し添い遂げた。
生前はレヴィアタンという嫉妬の悪魔だった。
▼レヴィアタン
七つの大罪、嫉妬の悪魔。
憤怒の悪魔サタン(ラース)の恋人。
嫉妬深くラースに他の女が近づくだけで
その女性を殺める…それも残酷な手法で…。
憤怒の悪魔サタンをラースと呼び、
彼女もまたラースにはヴィーと呼ばれていた。