村へ向かいます
村へと向かう道の途中、一矢はハーピーに馬車を停めるように言った。
「何? 私を助けてくれる気になった?」
ハーピーの言葉に一矢は笑う。
「まさか。ちょっと荷物を置いてくるから待ってて」
「えっ? でもそれ、村に返すやつだよね?」
「……いや、俺の報酬だよ」
「報酬? 村の人達からOK貰ってるわけ?」
「何言ってんの。クエストクリアしたら報酬貰うのが当たり前だろ? 黙ってれば分からないよ」
「バレなきゃ良いって盗人の考えだからね! あんたが捕まろうが知ら無いけど、巻き添えはやめてよ!」
「良いじゃん。お前達が使い込んだって事にすれば」
「ちょっと待って! 何『お前達』って、『お前達』には私も入ってんだよね? 良いよって言うわけ無いでしょ?」
ハーピーはため息をついて一矢に向き直る。
「一応私も盗賊団の一人だけど、仕方なく一緒に居ただけなの。ハーピー仲間とはぐれてしまった妹を探してて、成り行きだったのよ」
ハーピーの話では越冬の為にコッチの方へ渡ってきた時に妹だけが群れからはぐれてしまったらしい。
妹を探す為に残ったものの当てもお金もなく、さまよっている所に盗賊団と出会った。
盗賊団は定期的に移動を繰り返すしそれなりのお金も入ってくる。
それで馬の世話係りと偵察係りを兼ねて一緒について行く事になったと言う。
「だからね、ココは見逃して欲しいの」
一矢は少し考えて頷いた。
「分かった。それじゃあ、村にコレを返したら一緒に探しに行こう」
「え? 探すってあたしの妹を?」
一矢が頷く。
「何であなたと一緒に? だって関係ないでしょ?」
「俺もこれから旅に出る予定だし、メインクエストっぽいし」
「メイン、なに?」
「気にしないで。それに色々やって金も稼がなきゃだろ? 一人より良いじゃん」
ハーピーは悩んだ。
『確かに一人でどうしようもなくて盗賊団に入ったけど。……こいつは人間だしな』
ハーピーは腰に巻かれたロープを見る。
『断ればコイツはあたしを村人に引き渡すかも。……それなら答えは一つか』
「分かったわ。でも妹を見付けるまでだからね」
「それじゃあ必要な軍資金は確保しないと、なっ?」
一矢は略奪品の中からいくつかの宝石を取り出す。
「ダメよ! そんなのすぐ盗品ってバレるもの。プロじゃないと売りさばくのは無理よ」
「じゃあ、食料品だけか。つまんね」
一矢は袋の中を覗いて食糧を探す。
エイミーはその姿を見ながら悩む。
『本当に良いのかな。盗賊団辞めるなら、返した方が良くない? ……アレ? 色々やるって盗賊じゃないわよね。……人の食料見てブツブツ文句言ってるけど、本当に大丈夫だよね?』
食糧が入っていたのは全部で三袋。
その中の一つを街道から少し入った森の中へ隠した。
「後はお前が魔族だってバレなきゃ良さそうだな」
一矢はふと気になった。
「そう言えば、名前は?」
「エイミーよ」
「俺は一矢。宜しく」
一矢は手を差し出す。エイミーもそれを握り返す。
『やっ、柔らかい……』
一矢は初めて握る女性の手に感動を禁じ得なかった。
「……チョット、いつまで握ってんのよ」
「もう少し……もうチョット……本当にもう離すよ……」
一矢はエイミーの手をニギニギする。
「何してんのよ!」
エイミーは無理矢理手を引き抜いた。
そんなエイミーに一矢はムッとした。
「勘違いすんなよな! これから道中を共にする仲間をより理解しようって思ってただけなんだから!」
「そう……なの? それはゴメンなさい」
「気にすんな。勘違いには馴れてるから。……ムフッ、暫く手は洗わないでおこう」
「すぐ洗って! 全然勘違いじゃないでしょ。変態確定よ!」
「そんな事より、村人にエイミーが魔族だってバレ無い様にしないと。他の街で捕まった事にする?」
「分かったわ。それで口裏合わせましょう」
「そして助けて貰った俺に惚れてどうしてもついて行くって聞かず、仕方なく一緒に来た感じで」
「……言っとくけど、早くもパーティー解散の危機だからね」




