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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第五章 反抗作戦
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男の園

 王都から遠く離れた場所で、反抗作戦部隊は野営地を築いていた。


 山岳部や平野地に住む魔族を駆逐し、ここまで進軍したが森林部に到達してからは思うように進まない。


 作戦部隊は森の木材を利用して砦を築こうとしていた。


「部隊長殿、お呼びでしょうか?」


 一人の兵士が部隊長のテントを訪れる。


「砦の建造作業はどうか?」


「……現在は予定の約三割程度となっております」


「遅い! もっと急がせろ!」


「伐採作業中は防衛魔法で魔族の接近を防いでいるのですが、防衛魔法を使えるものが少ないもので。これ以上のペースでは魔法団員がもちません」


「……今一度、魔族狩りをするか」


「負傷兵が増えた今、あまり得策ではないかと」


 部隊長は腕を組んで考え込んでいた。


「失礼します!」


 部隊長のテントにもう一人若い兵士がやって来た。


「部隊長殿、東方警備隊本部のベティーナ・ルナルディ殿が面会を求めています」


「おぉ! やっと増援が到着したか! 直ぐに通せ」


「はっ!」


 若い兵士は駆け足でテントを後にする。


「東方警備隊とは確か海を越えた先の部隊だったかと」


「あぁ、だが彼女は武芸に秀でたものがある。本部の者でも太刀打ち出来る者は居ないだろう。そうか、わざわざ呼び寄せてくれたのか!」


 部隊長は喜びを隠しきれず立ち上がると、ベティーナ達がテントの中へと入ってきた。


「失礼します。大反抗作戦が行われていると聞いて、東方警備隊本部ベティーナ・ルナルディ。馳せ参じました」


「ようこそ、特別反抗作戦本部へ。私が部隊長のロバート・パーマーです。ベティーナ殿、よくぞ来てくれました! ……ところでそのお二方は一体?」


「こちらは旅人の一矢殿と、王宮魔法団へ入団希望のクレア殿です」


「ほう! 魔法団への入団希望者ですか! ……失礼だが防衛魔法は使えますか?」


 身を乗り出す勢いのロバートに三人は戸惑いを見せる。


「あ、いや……突然で申し訳ない。現在、防衛魔法を使えるものが少なくてな。クレア殿は如何か?」


「わたしはすいません。『受け』魔法はちょっと……『攻め』魔法専門なんッス」


「う、受け?」


 クレアの返答にロバートは聞き返す。慌てて一矢が説明する。


「気にしないで下さい。ここに来て、変なスイッチ入っちゃったみたいで」


「そ、そうですか」


 ロバートはチラリとクレアを見る。


「はあぁぁっ、男の園……絶対あの人は『攻め』だ。『ぶ、部隊長駄目です!』『貴様、良いのか? 俺にそんな態度をとって……』……うふふ腐」


 ロバートは本能的に目をそらした。


「……と、ところで御二方はもしや義勇兵志願かな?」


「はい。道中、魔族の海賊に襲われた時も御助力頂きました。特に船長の魔族はほとんど御二方で倒されました」


「実戦経験者とは心強い! それで王都からの増援はどれくらいか?」


 ベティーナ達は顔を見合わせる。


「……申し訳ありません。我々は港町で本作戦の事を聞いて参りました。王都から来たわけではないのです」


「……そ、そうでしたか」


 ロバートはたった三人の増援に落胆を隠せない。


「あまり戦況は宜しくないのですか?」


 そんなロバートの様子にベティーナは尋ねる。


「我々の目的はこの地に魔族討伐のために橋頭堡を築く事なのだが、それが遅々として進まない」


 ロバートは溜め息をつく。


「現地で木材を調達しているのだが魔族の抵抗が激しく、予定が遅れているのだ」


「それじゃあ今は、木を切り倒してるんですか?」


 一矢は声を上げる。


 その様子に部隊長は戸惑う。


「まさしくそうなのだが…… 。もしや伐採経験者でいらっしゃいますか?」


「まぁ、経験者と言えば経験者ですね。なっ?」


 一矢はクレアの方を見る。


 一矢の言わんとしている事に気付いたクレアも大きく頷く。


「はい! 有りッス! そりゃあ沢山薙ぎ倒してやったッス!」


「薙ぎ倒した?」


「成る程! ……部隊長殿、それは私から説明致します」


 ベティーナはロキズ・エイプの一件を説明した。


「うむ……にわかには信じ難い話だが。確かにそれなら時間短縮出来そうだ。早速試してみよう。この後の予定はどうなっている?」


 ロバートは隣に控える兵士に尋ねた。


「はっ、食事休憩をはさんだ後、伐採作業を再開する予定です」


「ならば再開時には御二人にも参加頂こう。着いた早々で申し訳ないがそれでも宜しいか?」


「大丈夫です。……ただ、すいません。実は俺達も食事がまだで」


 一矢は照れ笑いを浮かべながら言う。


「了解した。おい! 誰か居るか! 彼等の分も食事の用意を」


「ヤッターッ!」


 喜ぶクレアに一矢は釘を指す。


「良いか、程々にだぞ? 程々に」


「分かってるッスよ~。わたしだって大人になったんスからね」


「本当かよ……」


 一矢は不安を感じながら新たに兵士に案内され、部隊長のテントを出ていく。


 一矢達がテントを出ていくと兵は部隊長に尋ねた。


「部隊長殿、彼等の話は本当でしょうか。あんな少女がそれ程強力な魔法を使えると言うのも、素手で木を倒すと言うのも、にわかには信じがたいですが」


「だから私も言っただろう。『信じがたい』と。だがベティーナ殿が共に旅をし、それを見たと言うならそれで良い。真に可能であれば作業は進む、出来ぬなら斧を持たせれば良いだけの事」


「部隊長殿がそう仰られるならば……」


「但し、過度の期待は不要だぞ」


「心得ております」


 兵は部隊長に敬礼するとテントを出ていった。

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