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34.夜の出来事と、朝の出来事

 広場のお祭り騒ぎは夜が更けても終わることがない。

 披露宴にソリティオ様の他にフォルミオン様とカロロス様、そしてゼノスさんの同期の仲の良かった騎士様たちも招待に応じて集まってくださった、皆さん機嫌良さそうに杯を重ねている。


 小気味よいリズムの音楽が奏でられ、村人たちは陽気にステップを踏んで踊りつづける。

 踊り方が分からないと怖がる私に、村祭りの踊りに決まりなんてないよ! とゼノスさんが手を引いてくれた。踊り出したら、びっくり、私は音楽に合わせて跳ぶのがとっても上手だった。


「ゼノスはまだ俺のプレゼント見てないだろう、ココと一緒に来いよ」

 ナッソスさんが、ものすごい得意げな顔で誘って来た時、私は動揺してぴょんと高く跳ねてしまった。


「そうだった、何をもらえるのかずっと楽しみにしていたんだ。行こうココ」

 恥ずかしくて行き渋っていると、ゼノスさんにひょいっと抱き上げられてしまった。

 お姫様のように抱っこされて運ばれていく。今度は大人たちが「勇者様がんばれよー」と応援の声を送るので、彼は不思議そうな顔をしていた。


「はい! こちらがゼノスの夢を俺がぶち込んで完成させた、初夜部屋です!!」

 

 ナッソスさん宅の離れにある物置小屋だった場所は、天蓋付のベットがででんと中央に置かれた、不思議な空間になっていた。あちこちに丁寧なこだわりを感じる可愛い小部屋だった。


 ゼノスさんは、私を腕に抱えたままぼーっと固まっている。ナッソスさんが制作時の苦労などをベラベラ喋ったあとで、満足そうにゼノスさんの肩をポンと叩くと部屋を出て行ってしまった。


 私は釣りあげられた魚のように、もうどうすることもできず。カチンコチンに固まったまま彼の腕に抱かれていた。

 ゼノスさんがゆっくり動いて、ベッドの上に座った。腕の中の私を藍色の瞳が見ている。部屋の中に1つだけある灯りが映って揺れている。


「ココ……その……俺は急ぐつもりはなくて……俺たちは気持ちを通わせてから日が浅いと言うか……だから、ココがいいよと思えるまで待つから…………宴会に戻ろうか……」

 ささやくように言って彼は優しく微笑んだ。


「あのね……ゼノスさんに謝らないといけないのです……私は子供みたいな体で……きっと、ゼノスさんはそんな気持ちにならないと思うんです。私は少年みたいって言われるの……ごめんなさい」


「はっ???」


 ゼノスさんの目があまりに驚いているので、私も一緒にびっくりした。

 膝に乗せられたまま、荒々しく引き寄せられて強く抱きしめられた。


「ココは自分のことを何にも分かってない。君の体がどれほど魅力的なのか。俺がどれだけ心の中で狂っているのか……欲しくてたまらないのか……全然分かってない」

 どさりと体の重みをかけられて、ベッドに押し倒された。

 ゼノスさんの熱と、なんだか甘さの混ざったくらくらする香りに包まれる。

 恥ずかしいのか、嬉しいのか、それとも怖いのか、自分の気持ちが分からなくて、鼓動だけが早くなっていく。


「ココが嫌なことはしないよ。でも1つだけずっとしたくて我慢してることがある。してもいい?」

 何をするんだろう?

 胸が苦しい、どうしていいか分からない。でも、ゼノスさんが大好きなの。

 私はコクリと頷いた。


 ゼノスさんの唇が角に触れた。ゆっくりと唇で確かめるようになぞった後、私の角は暖かいものに包まれた。

 ゼノスさんが私の角を口に入れた……


「ふっ、ふわっ、あっ、ダメ……ダメなのダメダメ」

 自分でも聞いたことのないような、あえぐ声がでてしまい、彼の胸を強く押し返した。


 すぐに体を離したゼノスさんが、私を抱えたまま瞳を覗き込んでくる。

「ココは角にキスされると……感じるの?」


 少し息を荒くして、苦し気な声が聞いてきたけれど、私の答えなんか待ってくれなかった。ゼノスさんはすぐに角へのキスを再開した。私がダメと言っても、胸を押しても止まらない。やっと終わったと思うと、今度はもう1つの角にキスが始まる。2本の角を交互に食べるようなキスが繰り返されて、溶けてしまいそうに体が熱くて痺れてしまう。その後は全身からくたりと力が抜けて、何も言葉に出すことができなくなった。


 とても優しかったけれど、結局ゼノスさんは一晩中、私をナッソスさんのプレゼントから出してはくれなかった。


                 ◇◇◇   ◇◇◇


 目が覚めると体がとても重かった。もぞもぞ動くと、スベスベと心地よい物にぎゅっと抱きしめられる。なんだろう? と瞼を開けると、目の前に逞しい胸があった。


 ゼノスさんに素肌で抱きしめられている。自分も何も身に付けていない恥ずかしさに「はわわ」と慌てそうになって、ある重大な事に気付いた。光ってない……


 天蓋付のカーテンが降ろされているせいで、細い朝の光が差し込んでいるのにベッドの中は薄暗い。

 昨夜彼に抱かれているとき、暗闇にぼんやりと光っていた胸の星の形が……見えない!

 私はカーテンを開き、陽の光の中で彼の胸を食い入るように確かめた。


「ゼノスさん! 起きてください。勇者の証が消えています!!」 

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