嵌め殺し
10分後に次話を投稿して、大変急ですが、そこで完結(打ち切り?)にさせていただこうと思います…。
≪アイテムボックス内 ユリ視点≫
作戦が開始され、各冒険者パーティが順調に魔物達を討伐していき、ついにこの≪魔の森≫の核である化け物を討伐する事に成功した。
後は、この災害の元凶らしき魔狼……コナー君らから共有された“特殊個体”の討伐のみ……だったんだが……まさか、上位冒険者パーティの【ホワイトタイガー】や【龍の涙】が全滅してるとは…。
正しく災害…そんな化け物を目の当たりにして、冒険者ともあろう者達が全員腰が竦み、誰も動く事が出来なかった……コナー君以外は。
『俺が救出に向かいます!皆さんは【アイテムボックス】の中から救出の手伝いをお願いします!』
情けなかった。
まだ成人して間もなく、その上冒険者ではない非戦闘員の彼だけが命の危険に怯える事も無く走り出したんだ。
……本来なら皆の安全地帯である【アイテムボックス】を展開できる彼を守るのが私達の役目だというのに、それも出来ずに私は【アイテムボックス】の隅で、かすり傷の腕を押さえながら座り込んでいたんだ。
折角ユウとユイの2人とパーティーを組んだというのに……不甲斐なさすぎる。
「■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!」
「は、離してくれ2人とも!せめて……せめて一撃だけでもッ!」
「ちょ、ちょちょ!?その怪我で動かないで!?骨折れてるんだから安静にしてなきゃ!?」
「ユリ様ぁぁ!!どうか……どうか!!」
不甲斐なさから、何故か魔物の入って来れないはずの【アイテムボックス】の入り口に魔狼の首が入り込んだのを見て、『せめてこの場を守る為にも一撃をッ!』と立ち上がろうとすれば、今回パーティーを組んだユウとユイの姉妹2人に全力で止められる。
「こんなかすり傷、何の支障もない!!それよりもあの化け物がこの場に現れたという事は、コナー君に何かあったに違いないんだ!ならせめて今ぐらい動かないと冒険者としてここにいる意味が無いッ!」
「いや、がっつり骨折れてるって!?なんだったら血も結構出てるからかなり危ないよ!?」
「あ”ぁ”ユリ様♡……何て気高くも凛々しい……おふつくしい……」
「ってこのバカ!?そのユリさんを止めなきゃ本当に死んじゃうかもなんだから今ぐらい興奮しないの!!」
……意外に切羽詰まると姉のユウが冷静なツッコミ役になるんだな…。
「折れていようと今動かねば全員死ぬ!なら私達が……ん?」
「■■■■■■■■ッ!?■■■…!?■■■■■■■■ッ!!??」
“私達がやるしかない!”と二人を説得しようと思ったのだが、不意に首から上だけの魔狼の様子が可笑しい事に気が付いた。
「……な、なんだ?なにやら……苦しんでる?というか、何故何時まで経っても魔狼は中に入ってこない…?もしやこれ以上入って来れない…?」
「ユリさんの柔肌がこれ以上痛むのは私見たくな……え?魔狼?」
「はわぁ…♡」
魔狼が何やら苦しみの表情を浮かべつつ、中に入ろうと力んだり、逆に抜け出そうと首を引っ込めるが、どちらも上手く行ってない……もしかして、動けない…?
「これはどういう……もしや、これはコナー君の作戦か?」
本来魔物の侵入は出来ないとコナー君は説明していたし、この状況はコナー君があえて魔狼を招き入れなければ起きない事象のはず…。
つまり、これはコナー君の魔狼を倒す為の罠(違う)!
「なら私達がするべきは……ユウ!今は君が頼りだッ!冒険者達全員に伝えろ!今が反撃のチャンスだッ!!」
「え……そんな君だけが頼りだなんて……プロポーズ?」
……この戦いが終わったら、早くもパーティーを解散させなければならないかもしれない…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
≪コナー視点≫
早速、散々追いかけまわしてくれた魔狼の背中に攻撃を……と行きたい所だが、まずやらねばならない事がある。
それはもちろん、リャーナの治療だ。
と言っても、俺に治療の心得なんてないし、包帯やらクスリやらの道具も無い。
【アイテムボックス】の中であれば治療の心得のある人も道具もあるだろうが、【アイテムボックス】と外を繋ぐ≪ゲート≫は原則一つしか生成できない。
その唯一の≪ゲート≫は魔狼を捕らえる為に使用しているので、消す事は出来ないし、≪ゲート≫の入り口の大きさを変更するのも魔狼を解き放つ行為になってしまう為に出来ない。
万策尽きる……と、数週間前の俺だったら項垂れていただろうが、今は違う。
「【詳細設定】!そこから…≪模様替え≫!!」
そう。今はレベル10に上がった恩恵である【詳細設定】を扱う事が出来る。
その力の一つである≪模様替え≫は物や人の場所を自在に変更する事が出来る。
しかも、【アイテムボックス】内の中だけでは無く、一方通行ではあるが、中から外へと送る事が出来るのだ。
まぁ【アイテムボックス】持ちの≪自動収納≫の劣化版みたいな能力だ。
「だけど、今は【アイテムボックス】内のモノを取り出せる事こそが一番大事なんだ。包帯と傷薬……後は…ルイ!」
「――わッっとと?…あれ?外?あ、ご主人!もしかしてご主人がやったの?」
外に呼びだしたのは治療に必要そうな包帯やら薬、そして冒険者達の治療を手伝ってある程度応急処置のやり方を知っているルイ。
本来なら治療の出来る人を呼びだすべきなんだろうが、誰が治療の心得があるのか全く分からない中、適当に呼びだすのは気が引けた為、ルイを呼んだのだ。
「悪いルイ、説明は省かせてくれ、それより、この人の治療をお願いしていいか?それとルイのスキルで生み出した“酸性がめちゃくちゃ高い”水を出して欲しいんだけど」
「え?わ、わかった!何とかやってみる!!って酷い怪我……」
ルイには苦労を掛けるが、それほど時間を掛ける訳にもいかない。
一応ここら一帯は【魔の森】の核を倒した事によって魔物が殆ど居なくなっているはずだが、この世に絶対という事はない。
すぐに決着をつけるべく、この場をルイに任せ、俺はルイに生成してもらった“めちゃくちゃ酸性の高い”水を容器に入れたまま、魔狼のいる場所まで歩いて行く。
―――ガッ!!……ズガッ!ズガッ!!!
「おうおう……すごい暴れてんなぁ…」
魔狼の四肢は必死に【アイテムボックス】から抜け出そうと暴れまわり、少しでも巻き込まれれば俺の身体など吹き飛んでしまうだろう。
「うん。やっぱり、変に剣とか持ち出してこなくて正解だったな……そぉぉれッ!!!」
俺はルイが生成した酸性のめちゃく……いや、もうはっきり言おう。
手が火傷を負う程の強酸を魔狼の身体へと振りかける。
―――ビシャッ!!
「……ッ!!……!?………!!!???」
―――ドタンッドタンッ!!!
強酸の振りかけた場所からうっすらと湯気が上がり、確かなダメージを負わせていく。
これ程の強い強酸を生み出したルイには脱帽物だが、ルイが言うには『そもそも酸性とかよくわかんなかったし、レベルが上がんなかったら出来なかったからご主人のおかげだよ!』と謙遜していたが、知識を伝えた以外はルイの力なので、やはりすごいのはルイだと思う。
「………ッッッ!!!」
「おぉ…効いてる効いてる……そぉぉぉれい!!」
「――――ッ!!!!!」
直接的な攻撃ではないし、魔狼の体力を考慮すれば大分時間が掛かる作戦ではあるが、安易に近づいて怪我をするよりは断然に安全だし、何より先程まで苦しめられた身としては魔狼に出来るだけ長く苦しんでもらいたいという願望もあったりなかったり?(悪)
「そぉぉぉれもういっちょ!!」
―――ドッタンバッタンビタンッ!
まるで生きの良い魚のようだ!フハハハハハッ!(邪悪な笑み)
「よし、もう一度……お?」
「……!?!?……ッ!!!!……ッ”ッ”ッ”!!!」
首から上…【アイテムボックス】の中で何か動きがあったのか、強酸に焼ける身体に悶える動きから、何か敵意を持った動きに切り替わったように感じる。
わずかにだが、【アイテムボックス】内の冒険者達の声が魔狼の身体を通して、微かに聞こえてくるし、恐らく魔狼の嵌め殺しに気が付いた冒険者が動き出してくれたらしい。
「…これならもっと早くこいつを倒しきれる!よしッ!!」
贅沢を言うなら遠距離系の攻撃方法を持った冒険者をこっちに呼びだしたいが、怪我人も多くいるし、誰がどのスキルを持っているのかも把握出来ていない為、無暗に呼びだす事はやめておいた方がいい。
時間は掛かるが、確実に倒し切ろう。
そう決断した俺は、再び強酸の雨を魔狼の身体に振りかけるのであった。
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壮絶な戦い(嵌め殺し)が始まって約1時間。
「……や、やっと……終わった?」
目の前には、黒い毛並みがどこへ行ったのかまるで分らない程焼け爛れ、力なく地面に倒れる魔狼の身体。
つい先程まで、僅かに『ピクッ……ピクッ』と痙攣の様に動いていたのを見て、念には念を入れて仕留めに行っていたが……流石にやりすぎたな。
やり過ぎで魔狼の身体から焼けた血の匂いが漂って来て、妙に目や鼻が痛いし、何より身体の状態がモザイク必須の焼け爛れ具合に見てるだけで吐き気を催してしまう……おえ…。
「……一瞬……一瞬だけ≪ゲート≫を広げてみようか……流石に今の状態でいきなり飛び上がって動き出すとは思えないし、生きてたらもう一回≪ゲート≫を狭めればいいし……よ、よし!」
こういう時、ステータス欄で魔狼の状態を確認出来ればよかったんだが、完全に身体が入っていない所為か、ステータス欄に魔狼の名前は一切載っていないので確認しようにも確認出来ないのだ。
――――ズ……ズズズ…
実際にそんな音はしないのだが、気分的にはそんな感じの効果音がなっているイメージで≪ゲート≫の入り口を広げていく。
『――えた…?……外が見える!!』
『『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』』』』
「うおぉ…?」
≪ゲート≫を広げれば、【アイテムボックス】の中で奮闘していたであろう冒険者達が大歓声を上げながらこちらを視ている。
「と、とりあえず、魔狼は起き上がってこない……って、首が無いッ!?」
よく見れば、≪ゲート≫を広げた先には魔狼の首は無く、少し離れた場所に魔狼の顔が潰れたような肉塊があったので、冒険者達が魔狼の死を確認する為に首を刎ねたのだろうと予測出来た。
「……なんかこいつとの戦いだけ、妙に血生臭くなったな…」
俺はそんな呟きと共にため息を吐きつつ、やっと戦いが終わったかと僅かに口角を上げる。
「……って、まだ怪我人も沢山いるし、安心しきってる場合じゃなかった!!―――すいませーん!!急いで街に――」
俺はルイに任せていたリャーナを慎重に【アイテムボックス】へと運び入れ、動ける冒険者達と一緒に、急いで【ブラウの街】へ急ぐのだった。




