核‐コア‐攻略戦開始
「―――来たか」
ミント達に半ば強引に連れ出され、ある程度魔物達が一掃された【魔の森】を歩く事10分。
そこは森の木々がまるで避けているような木が一本も生えていない広場が広がっており、その広場の前で俺達を出迎える様に待っていたのは【龍の涙】のリーダーカルロス。
その他の冒険者達もすでに準備は万全だと言った面持ちで、場の緊張感がすごい。
恐らく、この広場の向こう……チラリとカルロス達の後ろに広がる広場へと目を向ければ、どう見てもゴブリンやスライムと言った雑魚魔物とは違う体長5メートルはあろうカマキリの様な魔物が数体ドンッと待ち構えていた。
アレがこの【魔の森】の核を守るボスモンスターという事なのだろう。
「……強そう…」
「あぁ……だが負ける事はないよ。人数は少ないが手練れも多く、何よりコナー殿、貴方の【アイテムボックス】で安全地帯を設けられるのが何より助かる。……ハッキリ言って、コナー殿の身の危険などを考慮しないのなら、いの一番に私達がここに連れて来ていただろう」
俺が広場の魔物を見て、弱気な言葉を漏らすと、近くで聞いていたカルロスがそう返してくれる。
多分、不安そうな俺を見て元気付けようとしてくれているのがわかり、妙に気恥ずかしく感じる。
「ハハハ。コナーなら身を守る事に関してはもう一人前さ。オレ達が魔物を発見した次の瞬間には【アイテムボックス】に隠れてしまってるからな」
「ん、いやまぁ外に居ても役に立たないからね……なんかそれだけ聞くと逃げてばっかみたいで、男のプライド的に悲しくなってくるけど」
「もうッ!そんな事で落ち込む必要はないわよぉ?男は甲斐性と気遣いがあってなんぼ。コナー君はその点百点満点だからねぇ~」
「「「ねぇー!」」」
ん?なんか言葉と中の意味が違って聞こえた気が……。
暫く作戦会議と雑談を交えた話し合い?でカルロス達やミント達のおかげで柄にもなく少し緊張していた心が落ち着いて来た所で、ついに核の攻略作戦が始まるようだ。
作戦の内容はいたってシンプル。
『ヒット&アウェイ。負傷したら安全圏へ退避』だ。
まぁもちろん、これは戦闘未経験者の俺へ説明された内容なので、実際にはパーティ毎にどの魔物を対応するかとか、陣形やコンビネーションはどうするのかと話し合いはされていたようだが、それを俺に話された所でこと戦闘に関して、全くの初心者な俺では3割も作戦を理解出来ないのだ。
なので、攻撃を加え、負傷した者は【アイテムボックス】へ戻ってくる。
それだけ理解していれば問題はないという結論だ。
「よし……全員ッ!かかれぇー!!」
「「「「うおぉぉぉぉッ!!」」」」
カルロスの掛け声と共に、広場の外側で身を隠していた冒険者達が一斉に飛び出していき、それに気が付いたカマキリの魔物……名前は確か…ソウルマンティスと言ったか?(ミントが教えてくれた)が冒険者達を迎え撃とうと動き出す。
「「「キィィィィィィィィィィ!!」」」
「筋力増強…【エンハンス】ッ!!」「そら行くわよカルロスッ!【増力の舞】!」
「―――うぉぉぉぉッッ!!【エクス・カ・リヴァ】ッッ!!」
―――斬ッ!!!
「ギィィィ……ッ」
一番手は【龍の涙】の3人。
【エンハンス】という補助魔法系のスキルを使いこなすメリラ。
【踊り子】も同じ支援型のスキルで、魅惑の踊りで味方を鼓舞するリズ。
その二人の補助を受けて、ソウルマンティスを一刀両断にするカルロス。
「すっご……エクスカリヴァ…?勝利が約束された剣とかもうあの人勇者じゃん」
この世界において【エクスカリバー】が【約束された勝利の剣】として伝わっているかは知らないが、見た目は眩い光に輝くエクスカリバーその物。
その剣で魔物を一刀両断する姿は正しく英雄と言っても過言ではないかもしれない。
「いえ、あの【エクス・カ・リヴァ】というのはカルロス様が何となくで発声しているただの技名の様な物ですよ」
「うわぁッ!?……ってリャーナさん?」
カルロスの技に称賛とも取れる感想を口から漏らしていると、未だ広場の外側で待機していた俺の横に【龍の涙】の最後のメンバーであるメイド?のリャーナが声を掛けて来た。
俺は冒険者の後ろを付いて行って、戦闘の邪魔にならない場所まで近づいてから【アイテムボックス】を展開するので、ここにいるのは予定通りなのだが、リャーナは何故ここにいるのだろう…?もしかして俺の護衛として残されて行ったのかな?
「――ってただの技名ってどういう事ですか?」
「カルロス様が持つスキルは広く知れ渡っている【身体強化】という物なのです。【エクス・カ・リヴァ】はその【身体強化】の技でもなく、派生でもない、ただのゴリ押しによる切断技なのです。まぁハッキリ言ってしまえばカッコつけているだけですね」
「身も蓋もないッ!?……え、今俺ってどんな気持ちでいればいいのコレ?」
まさかの中二病だったカルロスに共感性羞恥で胸を痛めればいいのか、それともその黒歴史的事実をさも自然に暴露したリャーナに恐怖すればいいのか頭を悩ませてしまう…。
「で、でも…カッコ付けだったとしてもあの力はすごいと思いますけど…」
「おや?もしかしてコナー様も似たようなご経験がおありでしたか?」
ぐぅう!?遥か昔の封印されし記憶がッ!!
「冗談です」
「あ、あははは……えと、リャーナさん?は行かなくていいんですか?」
古傷を抉られそうになった俺はこれ以上この話題を続ければ精神に負担が掛かると判断し、気になっていた事を質問してみる。
「私の役目は戦闘ではありませんので、コナー様の護衛役に徹しようかと思いまして」
「…それってどういう…?」
「それよりコナー様、そろそろ後続に続かなければ置いて行かれますよ」
「あ、はい!」
リャーナの役目とはなんだ?と聞こうとしたらもうすでに冒険者達は広場の中央付近まで進んでおり、俺とリャーナだけが遅れている状態だった。
ある程度掃討はしたとはいえ、まだ後ろの森にも魔物は残っているはずだし、遅れて避難者の回収が遅れたら目も当てられない。
多少リャーナの発言が気になりはしたが、それは後でもいいだろうと頭を切り替えた俺は、リャーナに守られつつ広場中央へと足を進めていくのだった。




