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売られた子供【ルイ】





「……なるほど。それで奴隷の子を……。大丈夫なんですか?」



「コナーは面倒事に首を突っ込むのが好きなのか?そんなキチャない子供に大銀貨5枚って……アッホだね~」



「個人的にはその優しさは嫌いじゃねぇが、商人を目指してんならもうちょっと冷静に物事を考えるべきだとは思うがなぁ」



 ……あの後、勢いに任せて奴隷少年を最低価格(犯罪奴隷じゃない普通の奴隷としての)である大銀貨5枚で買い取った俺は、そのすぐ後にやってきたアーデリアとフォルンに事の顛末を話せば、呆れた顔で文句を言われている。



「…なんか、あの村長の話を聞いてたら…こう……」



 御者のおっさんにも「商人としてもっと賢くなれ」と注意を受け、商人としては間違った事をしているのだと理解はしているが、この件について後悔や反省をする気など一切ない……のだが、上手い反論も出来ないので、俺は口をもごもごとさせてしまう。




「まぁもう買っちまったのはしょうがねぇんだ。責任をもって王都の奴隷商で奴隷登録して来てもらうんだな。幸い今はフォールエント祭の真っただ中だし、いくらか安い値段で請け負ってくれる奴隷商が居るかもしれねぇからな」



「……奴隷登録…?」



「当たり前だろ?奴隷ってのはきちんと国に報告しねぇとちゃんとした奴隷とは認められねぇ。登録をしてない状態で奴隷として売り出してみろ?一発で牢屋行きだ」



 この国では奴隷の扱いに関しての法律が数多く存在しており、犯罪奴隷以外の奴隷が無暗に人権を無視されるような事態を防ぐ為に色々と決まり事やしなければならない規則などがあるらしい。



 まず第一に、奴隷を無暗に殺させない為、国の記録として奴隷の存在を登録させる必要がある。


 この登録を行っていれば、奴隷の持ち主である主人は無暗に奴隷を殺めれない様にしたり、犯罪の抑制する効果がある。




 次に、奴隷の健康面を保つ為、病気の有無や体の障害を調べる必要もあるらしい。


 これは、この前盗賊の犯罪奴隷達を奴隷商に売った時に『簡易的な鑑定眼』のスキル持ちであるあの商人さんがやっていた事だろう。


 つまり、俺はさっきボケ村長から買い取った奴隷少年を国に登録しに行き、病院か商人さんのような『簡易鑑定眼』などのスキルを持った人に診察をしてもらう必要があるのだとか。




「…んで、本来なら奴隷の病気や怪我を見てもらうだけでも金はしっかりと掛かるが、万が一病気持ちだったら治療費は基本奴隷の所有者持ち……つまり、あんたが金を払って治療をしなきゃ奴隷としては売り出せぇんだよ。そうなったらただの買取損の大失敗って事よ」



「……まぁその場合は……自分の甘さが招いた勉強料として受け止めますよ」



 元々、奴隷の売買で儲ける為に少年を買った訳じゃないし、はっきり言って大銀貨5枚(5万円)は今の懐事情的にあまり痛手ではないのでそこまで悲観するような事でもない。



 寧ろ、奴隷に関しての知識を身をもって勉強できただけで気持ち的にはプラス収支だ。



「ポジティブですわね……私としてはお金をもっと大事にしなさいと叱りたい所ですけれど」



「コナーってば金持ち~……ハッ!?…養ってもらうには良いカモだったり…?」



「フォルン?養わないし、まず本人の目の前で『カモ』呼ばわりは止めてくれる…?」



 なんかもう失礼を通り越して清々しいな……。




「……まぁ坊主が問題ないならいいんだがよ……お前もこの坊主に感謝しとけよ?」



「―――ぅぇ…!?」



 いきなり御者のおっさんが俺達が話している場所からほんの少し離れた地面に座り込むボサボサ髪の少年……つまりは俺が買い取った奴隷少年へと声を掛けると、奴隷少年はまさか自分に声が掛かるとは思っていなかったのか、予想以上に驚いて目をかっぴらく。



 奴隷少年は先程、村長から買い取ってからは何故か俺達……と言うよりも俺から距離を取りたがる。



 恐らく話した事も無い赤の他人なのだし、警戒するのは不思議ではないのだが……妙に俺を見る目に若干の決意?の様な感情が含まれている気がするのはなぜだろう…?




「あ……ぇと……よ、よろしく…?ご主人?」



「あ、あぁ……というか、まだ自己紹介もまだだったね。俺はコナー。一応駆け出しの商人みたいな物かな。君の名前は?」



「…コナー……えと、オレはルイ」



 奴隷少年改め、ルイに出来るだけ警戒させない様に笑顔を向けながら、話を続ける。



「ルイ、短い間かもしれないけど、きちんと最後まで責任をもって王都に連れてくから安心してね?」



「……?……ご主人がオレのご主人になる訳じゃねぇの?」



「えと、俺はただの商人だから、ルイのご主人様ではないかな?」



 一応ルイの所有権を【エココ村】から買い取った事にはなるので、今現在のルイの所有権は俺の物なのである意味【主人】でも間違いでは無いのかもしれないが、そこを言う必要もないだろう。



「……よくわかんねぇけど…わかった」



「アハハ……まぁあまり気にしなくていいよ。それよりも、ルイはこのままこの村を出発しても大丈夫なの?忘れ物とかない?」



「うん……持ち物とかはずっと前に大人達が奪って行ったし、大事なもんとかは常に肌身離さず持ってるから大丈夫……つっても俺の持ち物なんてこのボロイ服ととーちゃんの形見のペンダントぐらいだしな」



 ……なんだろう…さっき支払った大銀貨5枚がものすごく勿体ない気分になってきた。ルイの私物を盗んでおいて金まで取ろうだなんて……はぁ…。



 いや、ルイの売買に関しては『いくら安くても引き取ってくれる方がいい』と言っていたし、値段を提示したのは俺なので、金銭に文句をつけるのは間違いか…。




 ひとまず、ルイの所持品は殆ど無く、唯一大事そうにしている形見のペンダントさえあれば特に問題は無いそうなので、早速村を出発……と行きたい所なのだが。




「…しかし、遅いなゲルト達は」



「……知人との話し合いが長引いてるのかしら?」



「Zzz……Zzz……」




 実は、未だゲルト達3人が中央広場に戻ってきておらず、出発が出来ないのだ。



 『久々に会って話したい奴ら』に会いに行ったらしいゲルト達は確かに1時間後にまた会おうと言って別れた。だが、すでに約束の1時間は過ぎているし、何ならルイの事を話合った時間を含めればすでに1時間半は過ぎている。



 御者のおっさん曰く、ゲルト達は約束の時間は守るタイプらしいので、もしかすれば何か厄介ごとに巻き込まれたのでは?と捜索に向かおうと相談し始めた頃、やっとゲルト達3人が帰ってきた。




「す、すまない!少しばかり話し込んでしまって……時間に遅れてしまった」



「かぁー…マジすんません」「……申し訳ない…」



 ゲルト、リードディヒ、ポートの3人は恐らく全速力で走ってきたのだろう。額に大粒の汗を浮かばせ、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら謝罪の声を上げる。



「おうおう。一体どうしたってんだ?お前らが時間に遅れるなんて」



「い、いや……ちょっとばかし旧友との話が盛り上がってな…特に気にしないで…………」



「…?どうしたリードディヒ…?」



 時間に遅れた事に申し訳無さそうにしつつも、『あははー』とお茶らけて話していたリードディヒがこちら……俺?の事を見て言葉が止まった。



 なんだ?……ってリードディヒだけじゃなく、ゲルトもポートも俺の方を見て驚いているような…?



「……あ、いや……何でもない何でもない!気にしないでくれよ!……と言うか遅刻してきた俺達が言うのも変だが、早く村を出発しねぇと日が暮れちまうぞ?」



「あ、あぁそうだなリード……俺達は遅れた罰として荷物持ちでもするから早く出発しよう。帰りの護衛は気合を入れさせてもらうよ」



「おぉー…なら私は寝てていい?」



「駄目に決まってるでしょこのおバカ……でも確かに急いだほうがいいのも確かね、樹海の夜は危険すぎるわ」




 ゲルト達の反応は気にかかりはしたが、皆の言う通り時間が惜しいのも確か。



 俺達は急かされる様に馬車に乗り込み、【エココ村】を出発する為に動き出すのだった。



















「…………」












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