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異世界での反撃2




こちらの世界に来て4日目。

これまでとは比べ物にならないくらい平穏な時間が流れている。


内戦が起こっていることも感じられない。


「……!」


何か話しかけられたような気がして、キクカは顔を上げた。


「………!」


どうやら廊下の向こうで誰かが言い合っているようだった。

そっとドアまで近づき、耳を澄ます。


「王都が襲われたって、……は無事なのか!?」

「治安局が……されたらしい!」

「反王党派に間違いないのか!」

「…………!」

「お嬢様がかくまっているあの女が……、シンクーも襲われたわ……」


複数人の声が話す声。

途切れ途切れではあったが、その声はキクカにも聞き取ることができた。

その中にあった、自分を原因だと類推するセリフも。


どちらかといえば、自分のせいではなくアヅマのせいそのものに他ならないのだが。


「おやめなさい」


アナテイシアの声がざわつく人々を制止した。


「アナテイシア様!ユーキ様たちは王都へ向かわれたのでしょう?ご無事ですか」

「兄と王子は無事です」



キクカは咄嗟に扉から身を離した。


アナテイシアと思われる足音が、キクカのいる部屋に近づく。


思いのほか離れられなかった為に、開いた扉とキクカの体がぶつかった。

扉を開けたアナテイシアの表情が驚きと困惑に変わる。


「キクカさん……」


「……更科くん、襲われたの?」


急に不安になった。

この世界に来て次々と襲われた恐怖がよみがえる。


「あたしも王都へ行く……!」


「いけません!王子がなんのためにあなたを……!」


「だって!」


「私はこの土地を離れられない!誰があなたを守るというのです!」


キクカはぐ、っと言葉を飲み込んだ。

今、この世界で頼れる人間はアヅマとアナテイシア、そしてユーキ。

キクカはこの世界にとって完全に異物でお荷物だ。


「あまりな事をされると、あなたを監禁でもしなくては王子に面目がたちません。そんなことさせないで下さい」


アナテイシアはキクカの言動を予測し、言う前にくぎをさす。

キクカは小さくなるしかない。


ここで子供のように駄々をこねて、たとえ抜け出したとしても王都へ行く手段もない。

説明を受けたように、水属性以外の人に出会った場合言葉も通じないのだから。



「おとなしく、ここで待っていてください」



アナテイシアはそう言い残して部屋を後にした。






心落ち着かないまま、キクカは部屋の中をうろうろしていた。

確かに、行ってもどうにもならないだろう。

でも行きたいと、心が言っている。

反省も後悔もない。

この世界で何度も危険な目にあったというのに。

いや、むしろ何度も危険な目にあったから今度も大丈夫なのではないかと妙な自信がついたか。


「失礼します」


と、扉をノックする音とアナテイシアではない女性の声が聞こえた。


扉が開くと、昼食の乗ったカートを押した女性が入ってきた。

シチューのような香りが部屋に満ちる。


「お食事をお持ちしました」


「あ、ありがとうございます」


柔らかそうなパンと、きれいに盛り付けられた温野菜、そしてシチューのようなスープがテーブルに並べられた。


「……あの、何か」


配膳したまま出ていく気配のない女性に、キクカはそっと問いかける。

目じりの少し上がった、理知的な印象を与える女性が言葉を返す。


「失礼ですが、先ほどのお嬢様とのお話を耳にしました」


「え」


「あなたは、王都へ行きたいのでしょう?私が手引きできますわ」


何を考えているのだろう。

そういってほほ笑む女性の真意がわからない。


「私の名はサラへ。私、中央に強いコネがありますの」



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