第9話 実力
ガイルとの一件で、ローグの実力が広まることになる。
「聞いたか?ガイルがガキにやられたらしいぜ」
「俺も聞いたぞ、それも風魔法使いらしい。重心崩されて一発だったみたいだ。」
「ああ、あれな。初めてくらうと対処しづらいよな。
まぁ分かっていれば、ただの風だけど。」
「ガイル油断したよな。」
「風魔法って見ないから厄介だけど、ま、それだけだから、次やり合ったらガイルが勝つだろ。」
「やっぱそう思うか。」
「でも、エアカッターとかどこからくるかわかんねぇし、不意打ちされたら怖いぞ。」
「一発食らっても致命傷にはならねえし、そのあとこちらから攻めて、魔法を撃たさなければいいだけだろ」
「結局は威力不足、風魔法の限界だなよなぁ。無詠唱だし、そこそこできる新人と期待したんだがなぁ。」
「火魔法か水魔法は使えないのか?」
「土魔法ができるらしいぞ、壁作ったり畑耕したり、、」
「おい、壁はまだいいけど、畑作るスキルとか、冒険者にいらねえだろ」
「魔力量も結構あるのに、風と土だと完全に裏方だな。」
実力は広まった。風魔法使いで微妙な評価と一緒に。
しばらく土魔法でタンク役としてパーティーに誘われりもしたが、後方希望という情報が流れてからは全く勧誘もなくなった。
あーあ、風魔法使いとしての勧誘は皆無。強いのに。パーティーはしばらくお預けかな。
ほんと、誰がタンクなんて怖い仕事するかよ。
痛いのと絶対嫌なのだもん。
ローグは1人グレた。
「ゆりあさーん。今日も一段と可愛いですね。
ネイル変えたんですか、コバルトブルーに星がちりばめられて、僕はあなたの星になりたい」
「はいはい、それで今日はなんの依頼を受けるんですか?
もしかしてまたエリアの実を取ってきてくれるとか。あれ幾つ食べても飽きないんですよね。」
目を光らせて聞いてくる。
パーティーも組めないので毎日のようにエリアの実を取って渡しているからだ。
いいように使われているのは分かっているが、ゆりあさんの笑顔代と思えば安いものである。
ちなみに、他の冒険者に聞いたのだが、その冒険者もゆりあさんにかなりエリアの実を貢いだけれど、ご飯を一緒にすることは叶わなかったらしい。
だから無理筋は分かりながらも他にやることもないので、そんな毎日を送っていた。
受付嬢と仲良くしておくと、良い依頼書を回してくれたりする。
依頼内容によっては、依頼主に合わせて冒険者を選ぶこともあるので、心象を良くのも立派な仕事である。
エリアの実という賄賂を渡し続けるのだ。
「それで今日も北の森へ?」
「もちろんです、ゆりあさん。あなたのためなら、どんな場所にでも取りに行きましょう。」
「ありがとう、流石ローグさんね。ゆりあ嬉しい!!」
実際は、ボアの討伐がメインで、ボア肉を売って毎日のように刺身を食べている。
だから正直、エリアの実を取ってくるだけでゆりあさんと仲良くできるこの状況はかなりおいしい。
「あ、最近北の森にハイオークが出るらしいので気をつけてくださいね。」
「ハイオークの買取ってありましたか?」
「ハイオークはランクDの冒険者パーティーで倒す魔物ですから、Eランクのローグさんが倒そうなんて絶対にダメですからね!」
「すいません、ちょっと気になっただけですから。」
他冒険者たち
「いやいや、ガイル圧倒してるんだから、ローグなら大丈夫だろう。」
「倒せなくても、逃げるのだけは得意だからな、風魔法は。」
「ゆりあさんだけだよね気づいてないの。」
「そんなゆりあさんも可愛いぜ。」
「くそ、実力隠して甘やかされやがって。」
冒険者の怨嗟が聞こえてくるが無視する。
ゆりあさんには心配されたがハイオークは気になる。
ちょっと探してみようかな。
ハイオークはD〜Cの魔物だ。
個体によってランク差はあるが、cランクと考えて行動したほうが良く、ソロではちょっと危険度が高い。
そろそろパーティーを組みたいなぁ。
でも風魔法使いとしてどこも入れてくれないんだよ。酷くない?
「土魔法でタンクしてくれるなら。」
「光魔法使えるの?ヒーラーお願い。」
「風魔法で戦える?見えにくいから連携も大変だしいいかな。」
とまぁこんな感じである。お兄さん泣いちゃう。