第28話 side貴族 ルイ・オーネスト
部屋にノック音が響く。
「ロバートでございます」
「入れ」
「失礼します。ご報告にあがりました」
執事のロバートが定期報告にきたのだろう。時間通りやってきていつも通りの現状の説明をして帰っていく。私情を持ち込まないところを高く評価している。
「順調に隣国アメジストからの難民を使って炭鉱夫を働かせております。純利益は昨年の倍以上になるでしょう」
「勝手に戦争をしてくれているおかげで、我々が儲かるのだからありがたい話だな」
「ご指示の通り、働けなくなったものから解雇し、スラムに追いやっております。しかし衛兵がそちらの対応に追われ、人員が足りないので予算の追加を申し込んでおります。」
「ほっておけ。どうせ勝手に死んでいくのに相手をするのがいけないんだ」
「そのことですが、現在スラムを束ねる人間が出てきており、ほっておくと脅威になる恐れがあるとのことです」
「それをどうにかするのが衛兵の仕事じゃないのか?」
「は。その通りです。そのように伝えておきます。
もう一つ、お知らせがあります。
炭鉱夫の一家をD級の冒険者パーティーが引き抜いたようです」
「使える炭鉱夫だったのか?」
「いえ、10歳の子どもで、可哀想だと思ったのでしょう」
「ふむ、ならいつ死んでもおかしくないだろう。念のため殺せ」
「かしこまりました。報告は以上になります」
ふむ、冒険者が子どもをねぇ。物好きもいるもんだ。
ロバート執事は指示された通り少年の一家を皆殺しにするためにスラム街にやってきていた。
「マスター、xyzを一つ」
「りょうかい」
「仕事を頼みたい」
「なんだ?」
「いや、たいしたことではない。炭鉱夫の家族が勝手に仕事を抜け出してね。
規律はしっかりしなければならない。そこで社会のルールを教えてあげろとのことだ」
「それで?」
「どうやら今「風」という冒険者と一緒に過ごしているらしい。D級だ。
そいつらはどっちでもいいが、元炭鉱夫は全員始末してくれ」
「ふむ、冒険者がついているのであれば、、」
ロバートは金貨の入った袋を机の上においた。
「野暮だったようだな。任せておけ」
ロバートはxyzを飲んでさっと姿を消した。
xyzは最後を表すお酒で、ロバートは殺しの依頼をするときに好んで飲んだ。
今回もいつものように主の命令に従う。ここ最近は仕事に明け暮れ、終わると酒を飲んで仕事の疲れを忘れるようにしていた。
また、昔は正義感もあったが今となっては感覚はマヒしてきて、弱肉強食のこの社会では殺されるほうが悪いと思うようになっていた。そして、自分が主に従うのも、仕方がないことなのだと正当化する。
今回の家族も死ぬのが早いか遅いかの違いしかなく、要らぬ希望をもってしまったのが運の尽きというもの。帰って酒を飲んで忘れよう。過ぎたことだ。
バーのマスター
Dランクの冒険者などいてもいなくても変わらないのに、それだけでこんなにも金をくれるとは。貴族も馬鹿だならその執事も馬鹿だな。暇そうにしているやつに声をかけて仕事をさせるか。後は報告を聞くだけ。
しかし、難民のせいでスラムの人口が増えすぎて統制が難しくなってきた。そのせいで、われわれとは別のグループまで出てくる始末。衛兵が働いて始末しているようだが、末端だけでうまくいっていない。
大人しく俺たちのグループの傘下に入ればいいものを。意地を張っても自分の首を絞めるだけだということに気づいていないらしい。
中には魔法を使えるものをいるらしく、ちょっとした戦争になりそうだな。
仕方ないが、たまには俺も働くとしよう。元Aランク冒険者のマスターは鈍った身体に気づかないまま、下品な笑みを浮かべた。




