第22話 イクイ
翌日荷物(マジックバック複数)を持って乗合馬車に乗ってイクイダンジョンのある街、イクイに向かった。
乗合馬車は大変快適であった。全員で10人程の座席があり、それぞれにクッションが置いてある。最近は勇者のおかげで豊かになり庶民向けの馬車でもサービスが行き届いている。
物は豊かになり、心も豊かになれば良いのだが、人が集まれば問題が起こるらしい。
一つ挟んで向こうの冒険者に睨まれている。
全く身に覚えがないが、なめられないようとりあえずガンを飛ばしておく。
目を逸らす相手にローグの気分はよくなる。
まさに冒険者といった行動だ。漢らしい。
いい気持ちになっている私にセリーナから一言。
「ローグさん、やめてください。そんなガン飛ばしてたら恥ずかしいです」
「。。。。はい」
セリーナの前では、ガン飛ばすのはやめよう。
乗合馬車は、幾つかの村を過ぎ、隣町のイクイに到着した。
朝早くに出たがもう昼過ぎ、日帰り出来なくはないが、一泊したい距離感である。
3人の契約料の支払いの時には戻らなければならないが、そこまで遠くないので安心した。
この世界に銀行の預金システムはあるのだが、遠くへの振込機能はない。これもしばらくしたら改善されるだろうが、今は支店の中での移動しかできないのが現状だ。
つまりお金がいっぱい口座にあればわざわざ手渡ししなくても大丈夫なのだが、金欠の私は都度入金の必要がある。
金さえあれば大抵のことは解決する。
よし、金を稼ごう。
さて、この世界も昔に比べて豊かになりはしたがまだ発展途上なところも多い。戸籍が出来たり税の支払いが麦から貨幣になったりと色々改革はされているが、地球から来た身としては不十分に感じる。
どこの世界も税の徴収から改善されるようだ。
馬車で聞いた情報によると、ダンジョンについて次のことがわかった。
イクイのダンジョンは全部で30 階層あるらしく、10階層毎にボスがいて、11階層、21階層がセーフティーエリアとなっているらしい。また、一度クリアすると入り口からセーフティーエリアをワープすることができるようだ。ワープは一度クリアしないと使えないらしい。仕組みは不明。
地球とは違うんだなと、ふと思う。地球ならお金さえ払えれば誰でも最初から使えそうだもん。
ダンジョンに行くのも時間の問題。
ここはリーダーの私が気合を入れてやろう。
「さぁやろうども、ギルドに向かってしゅっぱーつ!!!」
「はっ、レディに向かって失礼よ」
「訂正しろ。お兄さんだ」
「野郎は嫌なのです」
こうして元気にギルドに向かって出発したのだった。
イクイの冒険者ギルドはダンジョン用の掲示板があるところ以外作りは基本一緒だった。
ダンジョンで賑わっているので建物は大きかった。
ダンジョン掲示板を見ていると、ゴーレムのドロップ品である銅や鉄、銀、金が主な依頼品であった。見ていて気づいたのだが、属性の石などもあるようだ。
属性石は11階以降のようで、風の結晶もある。これは風魔法使いとして絶対手に入れたい。コレクションしよう。とりあえず100個は欲しいな。
ここのダンジョンの特性からか、常設依頼扱いになっていた。
聞き込みをしていたセリーナが帰ってきた。
「宿はダンジョンの近くが人気みたい。今は質の悪いところか少し高めのところしか空いてないんじゃないかって」
「高いってどれくらいするの?」
値段によっては安いところで我慢しなくてはならない。
「一部屋1日1万ぐらいするみたいよ。マンスリーでも。ウィークリーになると1万5千」
「一月30万なら東京よりも高いぞ。」
「東京?」
「いや、なんでもない。安い方はどうなんだ?」
「そっちはほんと雑魚寝のようなところね。一応雨風は凌げるけど、テントの方がマシよ」
「ならダンジョンでテント張った方がいいな。よし、今日は高いがホテルに泊まって、明日からはダンジョン生活をするぞ」
「ダンジョン生活、、わくわく。料理は任せるのです」
「ミレット、なんで嬉しそうなのさ」
「テント暮らし、訓練を思い出すな」
「嫌よ、そんなの」
「しかし一月30万は流石にきついからなぁ」
「セーフティーエリア以外は嫌よ。絶対。
1日で行けるとは限らないんだし、ホテルは2日とってね」
「ミレット、宿着いたら食料の買い出しに行こう」
「やった〜なのです」
「あ、ローグ〜」
セリーナの小言はスルーして、この後のプランを考える。
ホテルはセリーナに任せたので、後ろをついて行きながら街並みを見ていく。
街は活気に溢れ、あちこちから鍛冶を打つ音が聞こえてくる。服装はラフな人が多く金持ちよりも行商人や鍛冶屋、冒険者が多そうだ。洋服も高級店よりも庶民向けのお店が多い印象を受ける。
ちらっと見えた市場はすごく広かった。食料だけでなく武器なども売られている。ダンジョンに近づくにつれて屋台が増えてきて、良い匂いを漂わせている。ダンジョン帰りの冒険者が食べ歩きをしているのを見かけるので、冒険者向けの店なのだろう。そのためか肉屋が多い気がする。
「なぁちょっと食べていかないか?」
「ダメ。毎日ホテル暮らししてもいいなら許すけど?」
セリーナの顔が怖い。
「それとこれは別じゃないかな?」
「ポケットマネーで買うならどうぞ」
イクイに来るまでの村々で買い食いをした結果、もうお金がないのだ。それを分かっていて言ってきるのだから憎らしい奴め。
「ないんでしょ。なんでそう次から次へと買って全部お腹に消えていくのかしら。そのお腹はマジックバックでできているかしらね。ローグ、ミレット」
「ごめんなさいなのです」
「すまん。折角の遠出だからつい」
「つい、ね。ふぅん。まぁ今回は許してあげるけど、テント暮らしはあり得ないから。それだけは言っておくわ」
「ミレット、こうなったら、テント暮らしを最高のものにしようぜ」
「はいなのです。セリーナ姉さんを満足させるのです」
「テントはそれなりに快適だが、ないのは、美味しいご飯とお風呂だな」
「ご飯はお任せあれなのです」
「するとお風呂か。これはちょっと厳しいか、いや行けのか。。」
ローグは一人思考の溝に沈んでいく。
湯船にお湯を溜めるのはセリーナが自分でなんとかできるからいいが、問題はシャワーだよな。これは魔道具を買わないといけないから高いんだよね。しかしいくらぐらいするんだろうか。テントではプライバシーが担保出来ないからお風呂用のテントも買うか。セキュリティは風魔法で解決できるし、テントにシャワー、浴槽これぐらい揃えばいいか。いや待てよ、料理はミレットがすると言っていたが、それもキッチンを用意しないといけないんじゃないか。やばいな、金が全然足りないじゃないか。これではセリーナの言う通りホテル暮らしの方が安いか。いやいや、一部屋4人で一緒というわけにもいかんだろう。すると月に60万となると絶対に無理だな。60万以内に収まれば元が取れるのか。勝算ありと見た。
どうやら既にチェックインを済ませて部屋に着いたようだ。なぬ、部屋が一つじゃないか。セリーナを見る。
「仕方ないでしょ。2部屋取る余裕なんてないんだから」
「俺から言ったのだが聞かないんだ」
「ミレットは一部屋でも気にならないよ」
「普通は気にするもんだよ」
「どうせテントでは同じところで寝るんだし、冒険者してたらよくあることよね。そこは理解してるつもりよ」
「そういうもんなのか」
「ええ、そうよ。やっぱり貴族の坊ちゃんね。冒険者はそんあ贅沢許されないもんよ」
「ミレット、兄弟みんな一緒の布団だったよ」
「軍は男女別だったな」
「軍と冒険者を一緒にしないで。規模が違うんだから」
「分かった」
おい、イグナっち、何あっさり引いちゃってるのよ。それとも僕がずれてるのか。いやずれてるのか。冒険者になるって思ったよりハードかもしれない。
「ローグ、一応確認しておくけど、必要な時はテントで夜営でもいいわ。ただ、金がなくて野営するのが嫌なのよ。私は」
「分かった。稼ぐよ」
確かに、金がないからという理由はなんともひもじいものがあえう。それは勘弁したいということだろう。その気持ちはよくわかる。
しかーーーーし、テントの生活レベルは計画通り最高級にするよ。




