第19話 育成③
「では、風魔法について話を進めますね」
受講者はまだ続くのかと気を落とす。
「風魔法の正しい理解がないと基礎は真似られても応用はできませんので」
それを聞いてはちゃんと聞くしかない。
なぜなら、エアカッターは全員使えるのだから。
しかし、目の前で使われるエアカッターは完全な別物である。
魔力を感じ、エアカッターである事を感じられるだけに、疑問が尽きない。
違う魔法でした、と言ってくれた方が納得できるのだ。
それ程に別物のエアカッターを学ぶためには、風魔法とは何かから知る必要があると言われて頷くしかまいのであった。
「風魔法は空気を操る魔法です。
ですので、この空気をどのように扱うのかという魔法でもあります。
空気というのは、色んな状態があります。
例えば、水魔法だと分かりやすいですが、水と言っても温かい水もあれば冷たい水もあります。温度も温かくしたり冷たくしたりすることは可能です。
フライを使うとき、空気の層を作りましたね。冬場や夏場は単純に自分の周りに空気の層を作り出して温度変化させるだけで快適に過ごせます。
……」
こうして3時間ほどいかに風魔法が便利かを聞かされることとなった。
要約すると、エアカッターは空気を圧縮してあげれば良いということだ。
「先生、ありがとうございます。今まで、風魔法について何にも知らなかったということが良く分かりました」
「ほんとに、こんな沢山の使い方があるだなんて気づきませんでしたわ」
「先生のように真冬に半袖で出歩いて変人だと思われないよう、気をつけます」
ディスってるだろ。。先生のようにって言えばなんでも許されると、、私はとても心が広いので気にしませんがね。
「では、そろそろ実践に入りましょう。
土魔法のクリエイトロックで圧縮の感覚を掴んでください。
ロック、ロック
今2つのレンガを作りました、
一つ目は通常のものになります。二つ目は超圧縮したものです。
触ると分かりますが、硬さが全然違います。
風魔法は見えにくいので圧縮出来ているか分かりにくいですが、土魔法は一眼でわかりますので、まずは圧縮が使えるようになってください。」
「はい、今日はここまでにしましょう。
また明日もやりますから、今日と同じ時間に来てください」
外から見ていると、風魔法を習いにきたはずが、長い話を聞かされ、次に延々とレンガを作らされているようにしか見えない異様な光景だった。
しかし、単純作業にしか見えないレンガ作りの先が見えているので、気合い十分で、誰一人止めようとしなかった。
次の日、昨日と変わらない数の受講者が来ていた。剣士の彼を除いて。
どうやら帰ってからも練習をしていた人も多く、既に圧縮させたレンガを安定して作り出せていた。
特にルナは上達も早く、既に圧縮させたエアカッターを使えるようにになっていた。
「みんなおはよう。既に圧縮を覚えている人も多いので、エアカッターを圧縮する方法を教えます。まだ、圧縮が苦手な人は説明の後、レンガ作りに励んでください。
話を戻します。エアカッターのコツですが、フライで空気の層を感じましたね。
空気の層をレンガだと思って圧縮させて、それを飛ばします。
簡単に言うとそれだけです。後は熟練度や圧縮率などによって変わります。
では、細かな点は練習の様子を見ながらアドバイスしていきますので、確実練習を始めてください」
それから各自練習を始めた。
「ローグ先生、見てください。鉄板切れました!」
「ルナさん、おめでとうございます」
「今まで風魔法を使えることは使えても、工夫しようとしたことはありませんでした。
今回圧縮させるだけでしたが、それでこんなにも工夫の余地が残されていた事に気づくことができました」
「そうですね、風魔法の魅力はまだまだ語り尽くせませんが、エアカッター1つ取ってもまだまだ工夫できますから、頑張ってください」
それからルナさんは、複数同時に圧縮させたエアカッターを出せるように練習に戻っていった。
どうやら他の人も順調に進んでいるようだ。土魔法が苦手でロックは下手でも、風魔法への応用がスムーズにいける人もいたりと、個性によって進度はバラバラだった。
「では、今日の講習はここまでにしたいと思います。
中級上級魔法にしても、圧縮させる幅や数が変化しますが、基本はこの応用になります。
逆に密度を下げると空気が周りから入ってきますので、膨張させるのも一つ面白いですよ。
後は風魔法の熟練度を上げて自在に使えるようになればエアカッターについては完璧でしょう。一度工夫し始めると楽しくって止まりませんよ。
短いですが、皆さんの吸収が速かったので講習はここまでにしたいと思います。
ありがとうございました」
「「「ありがとうございました。」」」
「今回方法は門外不出とかではありませんから、皆さんどんどん他の人に教えていってくださいね。では解散」
ということで、講習を終わりにしたのだが、第二回以降を頼まれていることを思い出したので、それはセリーナに任せる事にした。
「セリーナ、重要なお願いが」
「はい、なんでしょうか」
「これは風魔法を使えるセリーナにしか頼めない大事な事なんだよ。
是非第二回以降の講師として風魔法の魅力を伝えてくれないだろうか」
「もちろんです。お任せください」
セリーナが快く引き受けてくれたので、私はしばらく家で自堕落な生活を送る事にした。




