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なぜ、私に関係あるのかしら?  作者: シエル


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Ep.65 初夜






私とヴィクトリアは、宴もたけなわとなる頃に夜会を退席した。



そう……ついに、これから『初夜』を迎えるのだ。




途中まで彼女をエスコートし、準備の為に一度別れる。




「では、ヴィクトリア。また後でな」



「……はい」




彼女はこれからの時間を想像したのか、恥ずかしそうに頬を紅潮させ、俯きがちに自室へと戻って行った。



そんな初々しい姿に、私は自然と笑みがこぼれた。



湯を浴び、夜着に着替えたところで、侍従が黄金色の液体に満たされているデキャンタとグラスを運んで来た。




「それは?」



「最近、貴族たちの間で流行しております『蜂蜜酒(ミード)』でございます。宰相補佐様より、殿下へ献上するようにと」




そういえば、アーサーから初夜の前に服用する媚薬の代わりに、身体に負担が少ないこの酒を用意すると報告を受けていた。



王家が代々使用している媚薬は身体に影響が少ないものではあるが、それでも媚薬には変わりなく、効果が切れるまで獣のように行為が続く。



女性側も破瓜の痛みを軽減させる目的で媚薬が与えられるそうだが、処女の身には負担が大きく、歴代の妃たちは翌朝の『事後確認』の際、意識を失っていることも珍しくないようだ。



だがこの蜂蜜酒は、男性機能を損なわず気分だけを高揚させるという。


これならばヴィクトリアを過度に傷つけずに済むだろう。




既に毒味が済んでおり、侍従が蜂蜜酒を少量注いだグラスを私に差し出し、私はそれを一気に流し込んだ。


まろやかな口当たりで、すんなりと喉を伝っていく。



すぐに効果が感じられるものではないと聞いており、私はそのまま、夫婦の寝室へと向かった。



婚姻が成立するまで開くことを禁じられていた夫婦の寝室へと繋がる重厚な扉。


そのノブを感慨深く回し、足を踏み入れた。



寝室内は雰囲気を作る為か、薄暗く、微かに花のような香りが漂っている。



部屋の奥へ視線を向ければ、二人で横になっても余る程広い天蓋付きのベッドの端に、ヴィクトリアがぽつんと座っていた。



緊張のせいか、いつもよりも背筋を硬く伸ばし、膝の上の両手を固く握り締めている。


そのいじらしい彼女の様子に、私は愛しさを抑えきれず口角を上げた。




「待たせたか?」



「い、いいえ。私もたった今、参りましたの」




緊張をほぐすように、いつも通りに声をかけながら、彼女の隣に腰を下ろした。


ベッドが僅かに軋み、彼女の肩がびくりと揺れる。




レイヴンクレストの王族の閨教育は、『座学』と『実地』がある。



書物で学んだ後、高級娼婦か貴族の未亡人を相手に実地し、相手の身体を傷付けないよう、慈しむ術をきちんと学んだ。



蜂蜜酒の効果が現れてきたのか、次第に体が火照ってきたのを感じる。



それはヴィクトリアも同じらしく、薄明かりの中でも頬の紅潮しているのが見て取れた。


漏れ聞こえる悩ましい吐息に、私の欲望は一気に跳ね上がり、息苦しいほど、心臓の音がうるさいほどに激しく脈打っている。




私は彼女の膝裏に腕を通し、抗う隙も与えず、抱きかかえてベッドへ押し倒した。



驚きに目を見開いている彼女に嗜虐心が煽られたが、怖がらせないように必死に逸る気持ちを抑え、額、瞼、頬へと、宥めるような口付けを落としていく。



体を起こし、ヴィクトリアの潤んだ瞳を確認し、少し開かれたその唇に自らの唇を重ねようとした⸺⸺。




……そこからは、白昼夢の中にいたかのように、記憶が朧気だ。




優しくバスローブと夜着を脱がせ、白磁のような肌に幾つも私の印を刻み、丁寧に彼女を溶かしながら中を解して、身体を繋げた⸺⸺。



繋がった瞬間、言葉に出来ないほどの幸福感と愛おしさが溢れた。



彼女の甘美な声に煽られるまま、強烈な快感と共に、彼女の深奥へと子種を注ぎ込んだ。




やっと『自分のものになった』という、これ以上ない充足感のせいか一度では到底足りず、私は何度も彼女を求め続けた。





窓から差し込む陽光で目を覚ますと、腕の中にはベージュブロンド色の髪を輝かせたヴィクトリアが眠っていた。



胸いっぱいに広がる幸福感と愛おしさに任せて、囲い込むように腕に力を込めて抱き締めると、彼女は身動ぎし、黄玉のような瞳がゆっくりと開かれた。




「おはよう、ヴィクトリア」



「おはようございますわ……」




少し掠れた声で応える彼女は、恥ずかしそうにシーツで顔を隠してしまった。


その可愛らしい姿に、私は思わず笑ってしまう。




「喉は渇いていないか?」




小声で「はい」という返事に、私はシーツから顔を出した彼女の背を支えながら、果実水を注いだグラスを口元に運んだ。



かなり喉が渇いていたのか、ごくごくと飲み干す様子を見届け、私は改めて彼女の体調を問いかけた。




「体は……大丈夫か?」



「はい……少し体が重怠いですが、痛みなどはありませんわ」




一度では済ませなかったことを密かに反省していたが、思ったより平気そうな様子に安堵した。



穏やかに微笑むその表情に再び興奮を覚えたが、ぐっと堪え、使用人を呼ぶベルを鳴らし、『事後確認』の医女を呼ぶように伝えた。


しばらくすると医女が現れ、部屋の明るさに恥ずかしがるヴィクトリアの希望通りに、カーテンで遮られた天蓋の中で検められている。



シーツに残る『破瓜の証』と、膣内に『子種』が注がれていることが確認され、初夜が無事に完遂されたことが、公的に証明された。




痛みがないとはいえ、体に負担がかかったことには違いなく、「今日は一日、お休みください」と指示されてしまった。



医女が退室した後、ヴィクトリアが侍女たちに支えられながら湯殿へ向かう姿を見届け、自らも自室で湯を浴びた。



再び夫婦の寝室へ戻ると、清潔なシーツに取り替えられたベッドで、彼女がたくさんのクッションに身を預けて微笑んでいた。



やはり、起き上がっているのは辛いのだろう。



私はベッドの傍らに置かれた一人がけのソファに座り、運ばれて来た軽食を彼女の口へと運んだ。




「ヴィクトリア、食べられるか?」



「はい。とてもお腹が空いておりますの」




彼女ははにかみながら、雛鳥のように小さな口を開けて、小ぶりのサンドイッチを少しずつ咀嚼する。


その給餌の合間に、私も自らの口の中へ用意された軽食を放り込んだ。




何気ない、けれど至福のひととき⸺⸺。



執務は昨日の内にすべて片付けてある。



今日一日、私はこの愛らしい『妃』の傍にいられるのだ。



甲斐甲斐しく彼女の世話を焼き、夜になると彼女を自分の腕の中に閉じ込めて眠った。





こんな日々が、これから永遠に続いていく⸺⸺。



疑うことのないそんな幸せを噛み締めながら、私は彼女を抱き寄せて目を閉じた。





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― 新着の感想 ―
それほんとうに子種なのかしら… そして抱いた相手誰なんだろうねぇ… いや〜毎回楽しみですねぇ〜〜(棒読み)
お花畑な王太子はヴィクトリアに子種を注いだと思っているが、実際は誰に子種を注いだんだろう?
入れ替わりかな?
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