ドラゴンを倒す者②
ディランが再び訪ねてくる。一人で来た。これも相手の力量を見抜く術の一つだ、魔女の家はあえて見つかりにくい場所に用意されるが同じ時間に門あいなくたどり着ける実力。幸運か確かな力量を持つ。どちらかは最低限必要だ。私は昨日と同様掃除をしているふりをする。それぐらいは演技だと気づてほしくはある。小さな違和感に目を向ける力。魔術師でなくとも必要ではないのだろうか。
「やぁ、君は昨日の、お師匠様に合わせてもらえるかな」と話しかける。優秀な若者なのだろう。自信を持っているようだ。怯える者よりは良い。「師匠、昨日お越しいただいたディラン様が来られました。」と呼びかける。2度呼びかけた時「はーい、入ってもらっておくれ」と老婆の声が聞こえる。1度で返事をしない。これもわなだ。普通の小さな家、返事に2度かかる理由はない。違和感に気づくか、違和感に気づいた場合どう出るか、相手の能力を鑑定していく。ディランは違和感をもち、理由を考えている、問題を後回しにするタイプ。勇者を狙う上では悪くもなくよくもない性格。
「こちらへどうぞ」とディランを案内する。見知ら老婆が水晶玉の向こう側に見える。部屋は暗いはずだが顔がよく見える。大熊の毛皮で覆われ光がほとんど入らない部屋、ろうそくの薄明りのみ、薬草茶を入れ私も話を依頼主の後ろに立ち話を聞く。「よくきましたね。ディラン依頼を聞かせてくれるかい」とほほ笑む、ディランはまじまじと老婆を見つめる。魔女が年を取らないという事を伝え忘れたことに思い至る。またどなられるとげんなりする。水晶を投げつけられてけがをしないようにだけしようなどと考える。
「魔術師様、最近我が村の近隣に火を吐くドラゴンがあらわれております。交渉に赴くもうまくいかず、森を焼き、家畜を襲い、人をさらい。流通が滞り。またドラゴンを恐れあふれた魔物と獣がにより2次災害として死人がでております。何とか退治する魔術を授けていただけないでしょうか。」といった。ディランは伝えなかったが3度すでに失敗している。交渉に赴いたものはその場で残酷に殺されている。危険度をせいかくにつたえない。そのことを理由に断られる、あるいは失敗して死ぬとは思わないのだろうか。ディランは報酬として袋を机におく。報酬は金貨100枚といったところか、金貨1枚は小麦1年分と交換できる。魔女に渡すために用意した金貨だろう、金貨など魔術師か大商人か国との交渉の際にしか使用しない。用意する際にぼったくられるが魔術師と交渉するには用意せざるを得ないのだ。魔女は考えるそぶりを見せる、すでに作戦は昨日の時点で決められている。「それは大変でしたね、ドラゴンのうわさはわたくしに伝わっております。魔術などと、大それたものではございませんが、ドラゴンは空を飛ぶ際に強く足で地面をける必要があると聞きますわ、」魔女は話始める。酒で毒への注意を鈍らせ、毒を食らわせる。普通に用意できる毒くらいではドラゴンは体に目立つ影響がないため、気には留めない。次に眠り薬を飲ませる。これも強制的に眠らせるほどの力はないが、毒と酔いにより普段より眠りを深くさせる。そのうちに足に爆弾を仕掛ける。混乱するうちに網で感じがらめにする。そして火の息に気を付けながら大人数で殴るという作戦を授けた。特製の毒と睡眠薬。強い酒、爆弾を持たせる。元値は金貨5枚程度。作成にはいくつも穴があるが、まぁ定番の方法であろう。魔術は決まれば有効だが、決まるか決まらないかは実際に剣を取り前衛で戦うものの実力も必要なのだ、金貨は半分は成功報酬だとしてディランにかえす。ディランは「ありがとうございます。必ず倒します。そうすれはま村を捨てなくすみます。」といった。帰りぎは私は「ご無事を祈っております」と手を取り微笑みかける。ディランは顔を赤くしている。魔術師への信頼も成功率に多少は影響する。魔女は
「あんたまた、情報をつたえ忘れたね」と怒鳴りながら老婆の変装道具と水晶を投げつける。そんなものはひらりと交わす。魔女は50代程度女性、実年齢よりは多少若く見られるが、年を取らないとうわさされるほどではない。正体がばれたら失敗されたときに逃げられないため今回は老婆の姿を取った。魔女はさらに机を蹴飛ばしつかみかかってくる。「うるせーばばぁ、それくらい気づくだろうが」といいながらはなった私の頭突きが入るが、構わず殴りかかる。数十分の乱闘後、今日の話を整理する。「見込みはうすいね、今日来た子はまっすぐすぎる。魔女にたのみに来るような子は、村の命運を背負っている。大抵、信頼を受ける若者だ。そんなまっすぐな子が来るからいつも見込みは薄いのさ」
といった。魔術師は身を隠す。成功報酬より命が大事、失敗するたびに恨まれる仕事、ドラゴンが来たなら逃げればいいのだ。魔物だって獣だってそうした。生まれた場所というのはそれほど大事なものなのだろうか。旅を続ける魔術師には分からない。
風のうわさではドラゴン退治は成功したがディランは死んだと聞く。
ディランは今後村の守り神、勇者ディランとしてまつられるそうだ。




