黄泉の国入り口④
エリクは血を吐く。普通の人間なら即死であろうケガ、必死で手を伸ばすが届くはずもない。妹は黄泉の国に落ちていく。
勇者タリアは語る「サラ、大丈夫?この子本当に強いね。普通に負けかけてた。」
エリクは動けない。強力な呪いを植え付けられた。命をつなぎとめるのがやっと二人をにらみつけるが体が動かない。
サラは「殺さないように気を付けてはいたけど、本当に危なかった。ちゃんと自分の剣を使えばよかったけど。それだと殺してたかもしれない。」と神妙な顔で言う。サラとタリアの関係は知らないが互いに知人同士のようだ。自分たちの時代の終わった魔法使いは、世の出来事にはなるべく干渉しない。正体を隠して人里に住むか。そういう人たちで集まって住むか。見た目年齢や時代が近く、互いに超1流の魔法使い。そういう縁もあるのだろう。
「なぜなんですか」
エリクは2人に向かって叫びその後血を吐きせき込む。伝説の二人が自分の妹を殺そうとする。二人とも自分にとっては歴史上の人物。
タリアは
「これは私の案、恨むならサラでなく私にしなさい。あなたの妹の死は世界を終わらせる呪いを生む。私では止められない。唯一世界を救う方法は、強力な呪い、大魔境内で死ぬしかない。天使長の手紙は私のフェイク。」と答える。
「タリアのせいじゃないわ、タリアはずっと反対していた。何か他に手がないかと最後まで探そうとしていた。私は大悪女サラ。」サラは泣いている。エリクはかばいあう二人を見てどうでもいいんだよと怒りをためているが、この二人は家族ではない世界を守ろうとしただけという事もわかるのだ。
天から巨大な手があらわれ、タリアをつかむ。天使の手名をかたった罰を与えるのだ。今まで泳がせたのはエリーを黄泉の国の中で殺す事には賛成しているからだろう。タリアは
「カティア様。覚悟はできています。錬金術師エリク、妹を助けられるのはあなただけ、私はあなたの邪魔をしたけれど、あなたは助けに行きなさい。私もサラもあなたの呪いを解かない、私たちは敵なのだから。それでも行きなさい。」と叫んだ、サラはタリアをつかむが巨大な手が止まる事はない。
エリクは血を吐きながら進む。さらにつけられた強力な呪い、解けるのを待っている暇はない。何もできなくとも何もせずにはいられない。




