狂錬金術師⑨
某年某月某日
この世界にいてはならない最強の精霊、私はだます者を抱きかかえ、後ずさる。
最強の精霊、第1発見者として、何もしなくても世界を消滅さるものと名付ける。
だます者は「私のほうが先に見つけたのに」とつぶやきながらエーテルを吐き出す。人でいう血を吐くようなものだろうか。
なんのきっかけで魔法が放たれるかわからない。何のきっかけで世界が消滅するかわからない。
最強の精霊の表情が不気味な笑顔へと変わる。今世界が消滅する。そういう予感が走る。
だます者は私の手を強く握る。私は
「この世界が消えてなくなっても、君を守るよ。精霊と妖精の世界へ連れていく約束だ。」
といった。だますつもりのないただの嘘。精霊は
「うそつき」とつぶやいた。お互い様だ。最強の精霊は何もしない。どうしようか考えている。それだけで世界を消滅させかねない。この場所が大魔境でなければ世界はそれだけで滅んでいた。
だます者の体が光り出す。こんなことは誰も知らない。詳しくなれたと思われている精霊についても
わからないだらけだ。
「それは」と私がきく。だます者は微笑みながら答える。
「あなたたちの言う生命誕生の素、精霊は生命誕生の素に最も近い生き物。私はいまから生命誕生の素になる。そして私はあなたのものになる。私は死んでもそこにいる。錬金術ならわかるでしょう。死ぬことだって術の一つ。あなたの研究室の子に生命誕生の素を入れて。精霊と妖精の世界でなくてもいい、その子の行きたいところに連れて行ってあげて。」そう言って、だます者は消えていった。手元には生命誕生の素がある。私は祈る。錬金術の世界では祈ることも術の一つ。
あの娘は伝えたいことを言って消えていった。
最強の精霊は動揺している、自分の強すぎる力におびえている、本当に何もしてないないのに強力な力を持つ精霊が死んだ。混乱した最強の精霊は叫ぶ。世界の半分が消滅する。半分?私は生きている。そして最強の精霊が叫んで消滅が半分で済むはずがない。
私の知らない何かが起きている。
「とりあえず生き物だけ保護しておきました、世界が縮んでしまったので混乱もあるでしょうが。そこはこの世界のもので何とかしてくださいね。」
そこには二人の天使がいた。
書かない方がいい後書きですが、だます者を精霊と妖精の世界に連れて行くのがふるい約束で、エリーを天使の世界に連れて行くのが新しい約束です。




