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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
再会と邂逅
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迷子探し

「しくった。」

 森の中は静まりかえっている。

 早晩の寒気に晒されて甘味の増した果実を摘んでいるうちに、いつしか森の奥へ迷い込んでいたらしい。

 それでも日のあるうちは摘んだ木の実を齧りながら悠々と散策する余裕もあった。

 だが。

「っ!」

 とっぷり日も暮れてしまうと。

 最初は仲間を呼んで見つけて貰おうとあげていた声も枯れ、ただただビクビクと風が枝を揺らす音にも怯える始末。

 寒い、怖い、ひもじい。

 それを上回る疲労と眠気。

 なるべく大きな樹の根元に座り込み、いつしかウトウトと微睡む。


 上空を通り抜けた時にはそんなに深い森のようには見えなかったのだが。

 日が昇り目覚めるとまた、歩き出す。

 不安になって竜型で吼えてみたり、子ども姿なら抜けられそうな入り組んだ枝の中を這い進んだり、半ば朦朧としながらも彷徨い続け。

 その後はもう動く気力も無くなり剣型に変ずるとぱたりと地に倒れた。



「この森は、何かおかしい。」

 日が昇ると早々に森の中を捜索したが、一向にハルは見つからない。

 上空に舞い上がり俯瞰してきたシロは戻ってくるなり言った。

 北の街道から南の海岸線まで伸びる森といえば森なのではあるが、そう緑深くない。

 東西の海岸沿いにはそれぞれ小さな集落があり、主には海での漁を生業にしているようだが森で狩りをしている様子もある。

 小径でもあれば南北は二刻程で、東西も半日程度で抜けられる程の大きさでしかないのだ。

 もちろん、道なき所を分け入って探すのだからそれなりに大変なのだが、探されているハルの乏しすぎる運動能力を考えると直ぐに見つかっても良さそうなものである。

 だが。

 まるで神隠しにでもあったかのように姿は掻き消えたままだった。

「ハル喰われたね!」

「ぱくり!」

 シロの苛々を揶揄するようにユアとコウが絡みつく。

「もう、ほおって置こ。二、三百年もすれば、人間が森を伐りつくす。さすれば出てくるじゃろ。」

 退屈してきたハッタもつれなく言うので余りの仲間甲斐の無さにシロが怒り始めるのではないさとヒースははらはら見守る。

 シロは怒る代わりに絶句した。

 幻獣の寿命は長い。

 二、三百年の別れは彼らにとってほんのひと時の事に過ぎないのだろうか。

 なんとなくハルは自分が最期を迎える時まで側に居るような気がしていたが、多趣味で友達も多い彼が離れて行ってもそれはそれでいいと思っていた。

 それでも。

 こんな別れはないだろうと思う。

 どう見ても、これは事故だ。

 何があったかわからないが、戻って来ないのはハルの本意では無いと思う。

 来ないのではなく、来れないのだ。

「待って下さい。本当に、何かおかしいのです。」

「まともに探す気もないのに、付き合いきれぬわ。」

 またもシロは絶句する。

 ヒースはおろおろとシロとハッタの間に立つ。

「ハッタさん、何て事を言うんだ。シロさんの顔をちゃんと見てやってくれ。憔悴しきっているじゃないか。」

「ならば何故もっと奥まで探そうとせぬのじゃ?あんなに怪しい館まであるというのに。」

「やか、た?」

 シロとヒースはまじまじとハッタを見た。

「その事ですが、ハッタ様。」

 ムイが小首を傾げながら割り込んだ。

「私も不思議に思っていたのですが。もしや、人間には見えていない、いえ、別の物が見えていたのではないでしょうか?」

「幻覚?」

 シロは慌てて魔力に注意を向ける。

 ハルが森の入り口とした赤い実の木の辺りにうっすら魔力溜まりがあるのに気づく。

「シロさん、待って!」

 ヒースの声を背に、シロは森へ再び分け入る。

 赤い実、茶色い実、紫の実。

 まるで果実が目印のような魔力溜まりを辿って行く。

 次第に進む速度は速くなり、邪魔な枝葉は剣で払いながら駆け抜ける。

 どんどん奥まで進んで行くと小川が流れていた。

 一跨ぎで対岸に渡れるようなせせらぎだ。

 向こう側は藪が迫り、更に奥まで森が続いている。

「っはあ、はあ。」

 肩で息をして額の汗を拭う。

「何処にも、館なんて、」

 漸く追いついてきたハッタを睨む。

「先に進まぬのか?」

「あんな藪を抜けられる訳がないでしょう。」

「藪?はて。」

 ハッタが足を踏み出す。

 小川を踏みつける代わりに姿が掻き消えた。

「ハッタさん?!え、シロさん?!手が!」

 ハッタに向けて伸ばした手の先も消えていた。

「幻影、だったのか…。」

 幻獣の棲の入り口にあった岩壁と同じで、小川もその先の藪もおそらくは幻。

 シロはハッタに続いて足を踏み込む。


 先には通り抜けてきた森と変わらぬ風景が広がっていた。

 ヒースの戸惑う呼び声を背に、ハッタの後を追う。

「何故最初に教えて下さらなかったのですか!」

「お主、ハルと痴話喧嘩をしたのではないのか?」

「痴話?なんでそうなるんですか!」

「お主はヒーちゃんと遊んでおるし、ハルは独りぶつぶつ下を向いたままどっかへ行ってしまうし。」

「別に喧嘩したわけじゃありませんよ。僕達が冬の海で泳ぐのに彼は呆れて別行動しただけで。」

「走り回って探す割には同じところをぐるぐると。充分探したからもう諦めろと言わせたかったのじゃろ?」

「さっきの小川に幻影がかけてありました。この先には進めないと思っていたんです。」

「なんじゃ。そう言ってくれれば教えたのにの。」

 にまあ、とハッタが笑う。

 この人は。と、ハルは思う。

「貴方は本当に貧乏神様でしたか。」

「なんと。失礼な奴じゃ!ぷんぷん。」

 腰に手を添えて頬をぷくりと膨らませる

「あ。ルルリン怒っちゃうぞ?のポーズ。」

 なんだか今回も人生終わったら神様から頑張ったね認定されそうな気がしてきたシロだった。

ビールはやめられても朝コーヒーが我慢出来ません。

胃薬をコーヒーで流し込むお馬鹿さん、てへっ。

先週休んだツケも回収中で今週の更新はぼちぼちになります。

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