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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
商都シロキオン
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明日から本気出す

「シロン様、目ぇ覚めたにゃ?」

 心配そうな声。

 シロンはぼんやりしたまま、近いモナの頭を撫でる。

 ぺったりした髪。

 角。

 時々歯ぎしり。

「うぇ?あと五分…。」

 お約束の寝言。

「これは、看病のつもりなのかな?」

 遠慮なく布団を分捕って添い寝する幻獣一匹。

「違いますにゃ。ウーがコーカのおっぱい触ったにゃ。」

「うん?」

「で、半ゴロされたにゃ。」

「あー。」

「ハルのとこで寝てるのにゃ。」

「それで、」

「ハルが布団欲しくて夜這いにきたにゃ。」

「なるほど。ウィラードさん、生きてます?」

「ヌコにぃが看病してるのにゃ。まだ死んでないにゃ。」

「後で見舞います。」

「なる早の方がいいですにゃ。多分もうすぐ死ぬにゃ。」

 慌てて跳び起き、ウィラードを見舞う。


 大いびき。

 顔面に真っ赤な手形。

「あ、シロン様!起きて大丈夫にゃんですか?」

「それよりウィラードさんは?モナから死にそうな大怪我って聞いたんだけど?」

「え?怪我はしてにゃいですよ。ほっとくと、コーカさんに殺されそうですが。」

 幻獣除けの番犬ならぬ番ヌコである。

 一晩中いびきを聞かされて憔悴したヌコと反対に、久しぶりに熟睡のウィラードは頭上の会話にも全く目を覚まさない。

 実に幸せそうに安眠している。

 一応、ヒールをかけてからヌコに任せて屋敷に戻る。

 さて、どの顔でハルに会おう。


 戻るとハルは起きていた。

 殊勝なんだか厚かましいのか、床ではなくふかふかの布団の上で平に土下座体勢である。

「なんで、…そんな事をされたら。」

 ごめんで済むとは思わないけど、とにかく謝ろう。許して貰えずとも、とにかく謝るしかない。

 そう覚悟して戻ったのに。

「いっそスライムになればよかった。」

「え、」

「お前、士郎の時に酔っ払うといつもそう言って泣いてたんだよ。そうしたら、魔王になるかもって怖れずに済んだのにって。」

 覚えていない。

 スライムになりたいと、くだを巻いていたのは春人に冷やかされて聞いていた。

 でも、その続きは初めて聞かされた。

「いつもって、」

「お前酒に弱かったから、割といつも。まあ、そんな話は俺にだけだろうけど。」

 で。

 と、姿勢を正しハルは続ける。

「そんだけ、トラウマになっていたのを知っていたのにごめんっておい!」

 ぼろぼろ泣きだしたシロンに抱きつかれ、布団に倒れこむ。

「ヤダなにこのビーでエルな感じ。ぼくたちお友達でいませう?」

「あ!ハル、ずるいのにゃ。」

 えいっとモナもシロンに抱きつく。

「うほ。シロ、どけ。せっかくのモナちゃんの感触が!てか、モナさん重いっすー。中身でちゃう。」

「ぬう。重くないにゃ。」

 一通り戯れてから、二人はシロンが泣きじゃくるのを暖かく見守る。

 やがて、嗚咽も細くすすり泣きになり。

「君はまだ、…友達でいてくれるのかい?」

 恐る恐る、シロンは訊く。

「あー、そんな可愛く言われたらお兄さん友達で済まないなあ、うふん。」

「…ハル。」

「冗談です。自分だってルルリンちゃんの話で誤魔化したやん。ずるいよ。」

「ごめん。」

「では改めて。妬んで逆恨みしてばっくれてすんませんした。」

 改めて土下座。

「こちらこそ、キレて滅殺しかけてごめんなさい。」

 深々シロンも頭を下げる。

「これからも友達で、」

「あれ?待って。友達でも滅殺?うーむ、この際もう一歩関係を深めておいた方が…。」

「あ、左手の魔獣が暴れそう。」

 ぽかり、とハルを小突く。

「中二かよ、」

「うん。そろそろね。」

「仲直り出来ましたかにゃ?シロン様お熱は?ウーさんは生きてましたにゃ?」

 モナが割って入る。

 いつのまにかハルを前にしても怯えなくなっている。

 それだけ、慣れたのか。

 それとも怯えなくて済むほどにモナが強くなったのか。

「そうそう、ウーさん。コーカさんに手を出したみたいで、夜中に叩き出されてうちに転がり込んで来てさ。大変だったんだよ。早くコーカさんの家を建ててやってくれないかな。」

「ああ、そんな事を言っていたような…もう一晩くらい我慢出来なかったのかなあの人は。」

「いやあ、流石に三日も四日も据え膳は気の毒だわ。」

「え、」

 ぐう、と腹が鳴った。

「三日寝てた?」

「おう。」



 エリム砦で街道を作ってから何日経った?



「壁を作らなきゃ。」

「DTフィールド?」

「何それ?」

 シロンに澄んだ眼差しで聞かれてもう一度土下座しておく。

 ハルの土下座は随分お安い。

 下らない事を言ったのだと解し、とりあえず左手の魔獣を振るっておく。

「あちらの、」

 と、ニコニコ街道の方を指して。

「話がどこまで進んでいるかは分からないけど。」

「うん。」

「街道とそれを作った魔導師が居るという情報はもう拡散していると思う。街道側は蓮さんが睨んでいるからそちらから手を出して来ることは無い筈だけどね。もう、帝国側にもバレている可能性が大きいよ。」

 と、本国の方向を指す。

「商都構築の前に接収されたらまた一からやり直しだよ。だから、」

 壁を作らなきゃ、と続ける。

「あー。進撃の方の壁か。」

「うん。とりあえず囲いだけでも頑強にしておかないと。」

「でもさ、この領地に接しているのって、お前の身内の領地じゃないの?攻め入るのにそこを通らせるかね?」

 聞かれてシロンは困ったように笑う。

「通らせるというか、多分攻め入って来るのは身内だと思う。」

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